コパ・アメリカ開幕直前、この次世代スターに注目せよ!

藤坂ガルシア千鶴

苦節を経て飛躍を遂げたチリの新星

 ウルグアイと同じく、W杯・南アフリカ大会で旋風を巻き起こしたチリに目を転じよう。マルセロ・ビエルサの退任を受けて、今年2月にチリ代表監督に就任したばかりのボルギは、親善試合のために、これまで代表から遠い存在だったベテランや国内の若手をサプライズ招集して話題を呼んだが、カルロス・ムニョスもその中の一人。

 89年4月21日生まれの22歳で、サンティアゴ・ワンデレルスというチリ1部リーグの小さなクラブに所属するストライカーだ。幼少期から、小柄な身体を駆使した軽快な動きでマークをかわすすべを覚え、16歳で下部リーグの得点王に輝き、17歳でプロデビューを果たすも、その後クラブが2部リーグに降格。ストライカーとしての素質を惜しむコーチ陣から、1部の他クラブへ期限付き移籍することを勧められたが、ワンデレルスへの忠誠心からクラブに残ることを決意する。

 しかし、結果がすべての2部リーグを戦うことになったチームで、過酷なポジション争いに勝てず、1年間の期限付き契約でセミプロのクラブでプレーした後、09年にワンデレルスが1部に返り咲くと同時に古巣に復帰した。プロデビュー後に味わった苦節を経て、10年にはチームの主力となってゴールを量産。U−22代表としてトゥーロン国際大会でゴールをマークした活躍が認められ、同年、チリサッカー協会によってベストイレブンに選出されたほか、チリのスポーツ誌『エル・グラフィコ』からは最優秀新人賞に選ばれている。

今大会で新たなヒーローとなるのは誰か

 今大会で母国の代表として良いパフォーマンスを見せ、国際的な評価を高めようと野心を抱く選手たちは彼らだけではない。
 ムニョスの同胞で、『チリのイニエスタ』の異名をとるフェリペ・グティエレスは、典型的なゲームメーカーとしての素質を持った20歳。今シーズンのチリ最優秀新人賞に輝いた逸材で、所属先のウニベルシダ・カトリカではコパ・リベルタドーレス躍進(ベスト8進出)の立役者となった。

 名将ゴメス監督によってW杯予選突破を最終目標に掲げるコロンビアで注目したいのは、遅咲きのストライカー、テオフィロ・グティエレス。抜け目のない天賦の得点感覚によってアルゼンチンリーグで旋風を巻き起こした勢いに乗り、コパ・アメリカでもゴールを狙う。

 このように、欧州の主要リーグで活躍できる実力を持った兵たちがしのぎを削るコパ・アメリカ。アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイが優勝候補と言われる今大会で新たなヒーローとなるのは一体誰なのか。大会終了まで目が離せない。

<了>

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著者プロフィール

89年よりブエノスアイレス在住。サッカー専門誌、スポーツ誌等にアルゼンチンと南米の情報を執筆。著書に「マラドーナ新たなる闘い」(河出書房新社)、「ストライカーのつくり方」(講談社新書)があり、W杯イヤーの今年、新しく「彼らのルーツ」(実業之日本社/大野美夏氏との共著)、「キャプテンメッシの挑戦」(朝日新聞出版)を出版。

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