戦術眼と成熟度の高さを見せた関塚ジャパン=U−22日本 3−1 U−22クウェート
「最低限の結果」は出した日本
日本は清武(右)、大迫(中央)らのゴールでクウェートに3−1で先勝した 【Getty Images】
日本のスタメンは、GK権田修一、DFは右から酒井宏樹、鈴木大輔、濱田水輝、比嘉祐介、ダブルボランチに山本康裕と山村和也。1.5列目は右から清武弘嗣、東慶悟、山崎亮平、1トップに大迫勇也という1−4−2−3−1の布陣。ドクターからゴーサインの出ていた永井はベンチスタートで、トップ下での起用が予想された原口元気も先発から外れた。
対するクウェートは、A代表にも選出されているユセフ・ナセルを前線の1トップに置く1−4−1−4−1の布陣。予想通りキックオフから日本がボールを支配する展開で、クウェートは自陣に引いて守りを固めた。キックオフ時に前線左に2人を並べてキック&ラッシュを仕掛けてきたように、中東のチームらしい不気味さはあったのだが、開始10分ほどで「余程のことがない限り大丈夫」という印象を持った。
楽観視できたポイントは2点。まずは球際の勝負で日本が勝てていたことである。これは1日に行なったU−22オーストラリアとの国際親善試合での経験が大きい。試合前日、酒井高徳は「オーストラリア戦は試合全体を通して球際で負けたところがすごく目立った。カウンターにつながる1つの場面もそういうところから始まると思うので、そこをいかにつぶし切れるかというのが大事になる」と語っていた。この日、日本の選手たちの局面でのプレーには、オーストラリア戦の反省を生かした球際の強さと気持ちが出ていた。現代サッカーでは戦術やシステムが多様化、複雑化しているが、何よりも大切なのはやはり、球際や当たりの強さである。
もう1点は、クウェートのカウンターに怖さが全くなかったことだ。日本が警戒していた1トップのユセフ・ナセルは、体の強さを生かしてボールを収める場面もあったが、「あそこに当てられても次がなかった」と濱田が振り返った通り、サポートが皆無で完全に孤立無援状態だった。今年2月の中東遠征や直前のオーストラリア戦で、日本はコーナーキックからのカウンターで失点している。そうした場面をスカウティングした上で狙いをつけてくるかと思いきや、クウェートは日本のコーナーキック時、前線に人を残すことなく、ほぼ全員がペナルティーエリア内に戻っていた。日本の最初のコーナーキック時にこの光景を見て、少なくともコーナーからのカウンターでやられることはないと確信した。
個人戦術の未熟さを露呈したクウェート
37分には、コーナーキックからのボールを濱田が豪快に頭で押し込んで、日本が追加点を奪う。前半15分までに4本のコーナーキックを得た日本は、その中でクウェートのマークの甘さ――ペナルティーエリア内に人を置くだけで、マークの確認を怠る相手の守り方を見抜いていた。試合後、濱田に「事前にクウェートのセットプレーにおける守備、マークの甘さをスカウティングしていたのか?」と聞くと、「特に何も聞いていないし、そうしたビデオも見ていなかった」との返事が返ってきた。
しかし、「最初の1、2本のコーナーキックでマークが甘いなというのは感じた」(濱田)という。だからこそ、キッカーを務めた山本と清武のボールは、中央やファーサイドにふわっと浮かせる球種が多かったのだろう。これは、滞空時間の長いボールでも、相手のマークの甘さと鈴木、濱田の高さをもってすれば、十分競り合いに勝てる、得点できるという共通認識があった証拠だ。濱田も「(選手同士)言ってはいなかったですけど、感じていたとは思います」と語った。