クレーの王者・ナダルが1回戦で薄氷の勝利=全仏オープンテニス第3日
乾燥と新ボールの影響?
ナダルが1回戦でフルセットにもつれ込む薄氷の勝利 【Getty Images】
ノバック・ジョコビッチ(セルビア)に40連勝の勢いがあるとは言え、ナダルの人気は衰えていない。センターコートの第3試合は晴天下に満場の観客。グランドスラムならではの雰囲気が整えば何かが起こる……。人気者には危ない試合だった。
初戦の相手は、身長2メートル6センチのジョン・イスナー(米国)。パワーだけでなく、昨年のウィンブルドン1回戦でニコラ・マウ(フランス)と11時間5分を戦ったタフガイだ。第1セットはナダルがすんなり奪った。対戦成績がナダルの2勝というのはさておき、クレーコートでの実績が違う。ナダルの通算220勝18敗に対し、イズナーは15勝20敗と、勝ち星どころか負け数にも差があるが、テニスの数字はあくまでも目安。状況は大会ごとに変化する。
今年のパリは春から好天続きで農作物に水不足が言われるほど乾いている。ビッグサーバーのイスナーに有利な条件がもう一つ。今年から全仏の使用球が変わった。ナダルが控えめに言うところによれば「いいボールだけど、柔らかくてスピンがかかりつらい」。言葉に慎重なのは、自分が契約しているメーカーのボールだからだろう。ただ、マスターズ1000の使用球とはかなり違うという。負けてもともとの条件下で、イスナーが時速210キロ台のサービスを雨のように降らせた。
ナダルは悪くはなかった。5セットを通じてイズナーに与えたブレークポイントはわずかに1本。イスナーとすれば当然、タイブレーク勝負を考えただろう。その意味でも、カギは第4セットだ。ファイナルセットはタイブレークなしのロングになり、イスナーもスタンドも昨年のウインブルドンの記録を思い出すはずだからだ。第3ゲームの15−0から、ナダルが狙い済ましてリターンを2本決めると、イスナーはたまらずダブルフォルトで崩れた。ファイナルセットでも第3ゲームをブレークするという早めの勝負に出ており、長引けば相手有利と読んだチャンピオンの見きわめが光った。
アンディ・マレー(英国)、ロビン・ソデルリング (スウェーデン)、ユルゲン・メルツァー(オーストリア)、フェルナンド・ベルダスコ(スペイン)は順当勝ちしたが、第11シードでクレー巧者のニコラス・アルマグロ(スペイン)は逆転負け。
女子はキム・クライシュテルス(ベルギー)、マリア・シャラポワ(ロシア)、ナ・リ(中国)とともに、森田も全仏初勝利を飾り、アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)も新鋭のボヤナ・ヨバノフスキー(セルビア)をどうにか振り切っている。
<了>
文・武田薫(たけだ・かおる)
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