“阪急ブレーブス”復活で何かが起こる!=オリックス戦士が伝説のユニホームを着用

阪急ブレーブスのユニホームを身にまとった後藤光尊 【オリックス野球クラブ株式会社】

 2011年シーズン、バファローズが掲げたスローガンは“新・黄金時代へ”。それなら、球団の歴史の中に輝く、“最強”と呼ばれたあの時代を忠実に再現しようと、オリックス球団は考えた。
“LEGEND OF Bs〜蘇る黄金の70's”と題したイベントが催される。まさに、温故知新。過去の歴史を懐かしむだけではなく、輝かしい伝統を積み上げた先達の功績をあらためて称えることによって、次なる黄金時代への決意を新たにしようというものだ。

 この“LEGEND OF Bs”なるイベント、今季は3つのシリーズで構成され、5月は阪急ブレーブス、8月には近鉄バファローズ、それぞれの1970年代の栄光をたどり、9月には番外編として、阪神淡路大震災直後の、1995年のブルーウェーブを振り返ることになっている。イベントでは当時のユニホームが復活するだけではなく、スタジアムでの演出やグッズやフードなども当時のものが再現される。

福本、山田…“実力のパ”を印象づけた最強勇者

 5月に振り返るLEGENDは、1970年代の阪急ブレーブス。西本幸雄監督から指揮官の座を受け継いだ上田利治監督が、見事にチームを最強軍団へと導いたのだ。1975年には、近鉄とのプレーオフを制し、リーグ優勝。日本シリーズでは広島を下し、球団創設40年目で初の日本一に輝いた。続く、1976年、1977年には、昭和40年代に5度も、日本シリーズで退けられた巨人を下して、日本シリーズ3連覇を成し遂げた。まさに、絶頂期を迎えていたのだ。

 世界の盗塁王・福本豊がダイヤモンドを駆け巡り、加藤秀司、長池徳二が打点を挙げ、投げては山田久志、足立光宏の個性の違うアンダースロー投手が華麗に相手打線を翻弄(ほんろう)、そして、記録よりも記憶に残る速球王・山口高志が仁王の如く立ちはだかった。
 二、三塁のチャンスでのスクイズでは、三塁ランナーのみならず、二塁ランナーまでがホームを狙う“2ランスクイズ”を常に目指していた。強肩の遊撃手・大橋穣はその守備位置が通常よりもかなり深く、彼のポジションに合わせて、西宮球場の外野の芝が削られたというエピソードも面白い。
 そんな、個性派集団が見せた成熟した野球は、まさに当時の日本球界をリードし、“実力のパ”という言葉は、阪急ブレーブスが黄金時代を築き上げた頃、完全に定着していったのだ。

木佐貫「“珍プレー&好プレー”的な番組で見た…」

今季の開幕投手を務めた木佐貫洋 【オリックス野球クラブ株式会社】

 1970年代、プロ野球のユニホームは劇的な変化を遂げていた。ポリエステルが混じったニット素材へとかわり、発色が容易になったことで、ユニホームのカラー化が一気に進んでいった。阪急ブレーブスもこのトレンドに乗り、1973年になってカラーへ。赤を随所に配したユニホームへの変更は当時としては衝撃的であったようで、「こんなのホンマに着るんかいな!」という声がチームからも上がったと、当時の捕手・中沢伸二は振り返る。

 木佐貫洋は「中学生の頃、“珍プレー&好プレー”的な番組で見たユニホームですね」と笑う。そんな“昔のユニホーム”が今に時代にはどう映るのだろうか? 体型も着こなしも“今風”の選手が身にまとうオールドユニホーム。もちろん、当時とはテイストは違うだろう。それでも、リードオフマンでセンターの坂口智隆は、あの不世出の盗塁王の流れをくんでいるし、ベネズエラからの真面目な助っ人、バルディリスにとって、陽気なB・マルカーノは祖国の大先輩だ。そして、若き主砲のT−岡田はいったい誰の後継者と考えるのが妥当なのか――。今のプレーヤーと当時の選手を自分なりの視点で結びつけるのも、ファンにとっては楽しい作業だろう。

伝説のOBもスタジアムに登場

 イベント当日、当時の最強軍団の中核選手で名球界に名を連ねる3人が、評論家としてではなく、OBとしてスタジアムに登場する。山田久志、福本豊、加藤秀司の3氏が、当時を振り返りながらも、後輩であるオリックス・バファローズのメンバーにエールを送る。
 過ぎたあの頃を知る人にも、そうでないファンにも、きっと有意義な時間となるはずだ。よみがえる阪急ブレーブス。新しい黄金時代へ向けて歩みを進めるために、伝統の中で、黄金色に輝くあの頃に、大いなる敬意を払いながら思いをはせることも、実は大切な儀式なのかもしれない。

<text by 大前一樹>

<了>
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