小塚崇彦、芽生えた自信と変わらぬ“末っ子気質”=世界フィギュアスケート選手権に向けて

青嶋ひろの

五輪の大舞台を踏んでも変わらない“末っ子気質”

五輪の大舞台を踏み、成長した小塚だが、“末っ子気質”は相変わらず? 【撮影・森田正美】

 本人も十分自覚しているが、彼が話すことも、その考えに基づいたスケートも、五輪の舞台を踏む前とは、目覚ましく違う。あの大舞台を越えたことで、日本チームで最も成長し、最も変化したのは、やはり小塚崇彦。今シーズンの彼を見ていて、間違いなくそれが言えるだろう。並みいる一流選手であっても、今の彼ほどしっかりした考えを、これだけ豊富に語れる選手はそういない――興味深い話にひたすらうなずきながら、「タカちゃん、なんだか遠くへ行っちゃったね……」などと、すこしさびしく思ったりもした。

「勝手に遠くに行かせないでください(笑)。自信を持つのは悪いことではないけれど、図に乗ってはいけない、と思っていますし。それにまだ、やっぱり試合となるとめっちゃ緊張するんです。今日(エリック杯フリー)だって衣装のボタンとホック、上から下まで全部外したまま、氷の上に出ちゃったんです。6分を滑った後に一度汗をふくために脱いで、もう一度着た時に緊張していて、はめるのを忘れてそのまま出ていっちゃった(笑)。気付いたのは、演技前に信夫先生と話をして、いつものように先生に背中を向ける直前。あ、全部取れてる! って(笑)」

 なあんだ、やっぱりまだ「タカちゃん」じゃないか、と思う。まだまだそそっかしくて、みんながほっておけない、末っ子気質。報道陣に対しても相変わらず愛嬌(あいきょう)たっぷりで、「ねえ今日、僕の笑顔見てました? ちゃんと笑ってました? 僕はちゃんと笑顔で滑ってたつもりなんですけど、どうだったかなあ?」などと聞いてくる。試合のこともプライベートのことも、私たちに語りたいことがたくさんあって、いつもチームリーダーたちからストップがかかるまで、たっぷり話を聞かせてくれる。

「誰かの記憶に残るようなスケートを」

「崇彦、相変わらずですよ。相変わらず衣装やらIDやら、忘れ物の神様ですしね! でももう何か忘れても、私たちが面倒みてあげない、ほっておくんです(笑)。忘れたら自分が困るんだってこと、そろそろ知ってもらわないとね!」と、佐藤久美子コーチも笑う。

「私も昨シーズンから、彼がそんなに変わったとは思いません。自信はついてきたようですが、これからきっと調子に乗ってくる。本当に、おっちょこちょいですからねえ」と、信夫コーチもまだまだだ、と言う。

 成績を見れば、滑りを見れば、小塚崇彦はもう誰はばかることなく一流のスケーターだ。でもその本質の部分はいつまでも変わらず。相変わらず温室育ちで、そそっかしくて、人なつっこい愛すべきキャラクターのまま――満を持して臨む世界選手権では、そのまま遠いところへ、高いところへ行くのだろう。

「世界選手権――4年前の東京大会を、良く覚えています。僕は観客席で男子の試合を全部見ていました。その年の全日本選手権は6番で、すごく悔しい思いをして、自分が出られない試合を見ていた。その時、高橋(大輔)選手がすごくいい演技をして、織田(信成)選手もがんばって、その年はまだ2枠だった男子の出場枠を、ふたりが3枠にしてくれました。その次の年からは、僕も世界選手権に行けるようになったんです。
 あのころのことを思い出すと……今度は僕がしっかり滑って、『2011年は小塚君がいい演技をしたんだ』って、誰かの記憶に残るようなスケートをする。そんな世界選手権にするために、頑張って練習していきます!」(四大陸選手権にて)

提供:『フィギュアスケートファン MEMORIAL BOOK 2011』(コスミック出版刊)

<了>

「フィギュアスケートファン MEMORIAL BOOK 2011」 【コスミック出版】

■フィギュアスケートファン MEMORIAL BOOK 2011 4月19日発売(コスミック出版刊)

スケートにかける想い、苦悩、そして喜び……。浅田真央、村上佳菜子、高橋大輔をはじめ、現在注目を集めるトップスケーターの生の声を軸にしたストーリーやインタビュー記事を中心に構成、他では見られない多彩な写真とともに日本選手18人の今シーズンを総括。庄司理紗、大庭雅、田中刑事、中村健人ら国内若手選手もフィーチャー。さらに、グランプリシリーズや全日本選手権など、主要大会の結果も完全収録。開幕する世界選手権、シーズンオフのアイスショーなど、フィギュアスケート観戦がより楽しくなるファン必見の一冊です。

2/2ページ

著者プロフィール

静岡県浜松市出身、フリーライター。02年よりフィギュアスケートを取材。昨シーズンは『フィギュアスケート 2011─2012シーズン オフィシャルガイドブック』(朝日新聞出版)、『日本女子フィギュアスケートファンブック2012』(扶桑社)、『日本男子フィギュアスケートファンブックCutting Edge2012』(スキージャーナル)などに執筆。著書に『バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート 最強男子。』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』(角川書店)などがある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント