プラティニ、UEFA会長をもう1回

 ミッシェル・プラティニがUEFA(欧州サッカー連盟)会長に再選されたのは驚きではない。対立候補がいなかったからだ。だが、どんどん暴君化していく彼が、世界でも有数の組織において大喝采(かっさい)で再任されたのには少々違和感を覚える。

 UEFA副会長セネス・エルズィクが、対立候補がいないためにプラティニ会長が再任されたと発表すると、UEFAのメンバーは立ち上がって歓迎の意を表した。4年前、レナート・ヨハンソンの対立候補としてプラティニが現れた時、計8年もプラティニがUEFA会長を続けると思っていた人はそう多くなかったはずだ。
 しかし、プレーヤーとしてそうだったように、彼は偉大なカリスマ性を有していた。会長のイスに座るまで半信半疑だった人々も、いまではすっかり魅了されている。リヨンのジャン=ミシェル・オーラス会長もその1人だ。オーラスは、プラティニのカリスマ性が高貴なアイデアを推進するにあたって大きな力になっていると認めている。

 再選されたプラティニ会長は、当初からのアイデアを再び強調している。それは、国際試合(代表戦)の優先であり、暴力と買収(とくに賭博)の撲滅、そしてヨーロッパクラブにおけるファイナンシャル・フェアプレー(※収入を超える戦力補強や年俸の支払いをしないことを義務化する制度)の推進だ。それらのアイデアに反対するクラブ(または代表チーム)に対して、彼は「自分が現役時代にはクラブでの活動を優先するために代表戦をないがしろにするような選手など聞いたことがなかった」と一蹴(いっしゅう)する。
「ある2人の選手が、チャンピオンズリーグに勝つほうが重要だというのを聞いて、私は驚いている」
 選手の名前は挙げなかったが、プラティニは「われわれは何かをする必要がある」と言う。
 プラティニのお気に入りの政策は、小国にチャンスを与えることだ。そのために、ユーロ(欧州選手権)を拡大して16チームの大会から24チームにしようと考えている。「24チームがいい。そのためのクオリティーは十分にある」と言う。
「2008年大会の16チームには英国のチームが含まれていなかった。ベルギーもセルビアも、フィンランドもノルウェーも参加しなかった。つまり、われわれはさらに8チームを加えても大会の質が落ちる懸念はない」
 サンマリノやアンドラにも、サッカー大国と同じチャンスを与える。それがプラティニの好むやり方である。

 ファイナンシャル・フェアプレーに関しては、ビッグクラブとのタフな戦いが待っている。
「すでに、すべてのクラブに通達を出している。2014年には新しいルールが始まることを知らせてある」
「当初、この案には皆が賛成した。ならば、最後まで賛成してくれるはずだ」
「フットボールは素晴らしい。しかし、ヨーロッパでは必ずしも美しくなかった。財政面に関していえば壁に突き当たっている。私はフットボールを破たんさせたくない」

 プラティニは暴力にも断固とした態度を示している。セルビアとクロアチアは、彼らの間にある問題を今年中に解決できなければ、UEFAの大会から閉め出すと警告している。
「フーリガニズムを大変心配している。スタジアムの安全性についてもだ」
「彼らが問題を解決できないなら、大会からは閉め出される。イングランドは同じ問題で5年間閉め出された。この件については一切妥協はない」

 八百長についても厳しい態度を崩さない。プラティニは「最大の脅威」と考えている。
「すべては選手たちにかかっている。最前線にいるのは彼らであり、どんなささいなことでも報告すべきだ」
「小さな国のリーグでプレーしている選手たちの給料は安い。しかし、監督もオフィシャルも、もちろん選手も、八百長は許されない。この点に関して一切の妥協はなく、違反したものは生涯排除される」
 FIFA(国際サッカー連盟)会長選も6月1日に行われる、現職のブラッター会長の4選が濃厚だ。75歳にもかかわらず、ブラッターはあと4年間会長を続けるつもりだ。メディアの多くは、ブラッターが退く2015年にプラティニがFIFA会長を継ぐとみている。ただし、AFC会長のモハメド・ビン・ハマムが会長選に出馬するという。かつてブラッターの親友だったハマムだが、「FIFAは何も変わっていない」と言う。
「ブラッターはあと4年やりたいと言っているが、少なくともここ3、4年間、FIFAは何もしていない、何も動いていない」

 プラティニは、ブラッターとハマムの争いからは一線を引いている。そのことが、彼が政治家ではなくフットボールマンだという印象を人々に抱かせている。機械判定の導入を拒否する姿勢に違和感を感じる人もいるだろうし、ファイナンシャル・フェアプレーをフランス的な社会主義を持ち込んだものと批判する人もいる。ただし、プラティニは人々が感じるように感じる人間だということは確かだ。そして、おそらく2015年にはFIFA会長になっているだろう。

<了>
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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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