札幌山の手高三冠の立役者・長岡萌映子=バスケ

高野祐太

中2の全道選抜入りで頭角現す 上島コーチとの出会いが更なる成長に

オールジャパン3回戦では、WリーグのJXに大敗したものの、73点も奪って見せた 【写真は共同】

 それからの長岡は、すぐに札幌市内の地区別代表に選ばれ、全道大会に出場。中学1年で札幌選抜。2年では全道選抜に選ばれて、都道府県対抗の全国大会に出場するなどし、日本バスケットボール協会の世代別強化プログラムである「エンデバー」への中学3年での招集につながって行く。北海道の中学生強化に取り組む道ジュニア連盟の高橋事務局長は言う。「当時は目立つ存在ではありませんでしたし、チームもせいぜい地区優勝にからむ程度。彼女は下手をすると埋もれていてもおかしくなかった。最初の才能発掘が中学2年の全道選抜入りだったと思うんです」。

 長岡本人も、自分の能力を発揮できる環境を手に入れるごとにバスケットボールの奥深さを知って行く。「小学5年でブロック選抜に選ばれてやったら楽しくて。中学2年で全道選抜に入ったときは、全国の先生方にも見てもらえてエンデバーにもつながった。だんだん上のレベルに行くにつれて、楽しいと感じるようになりました」。

 そして、最も幸運な出来事が上島コーチの指導を直接受けられたことだった。中学3年の部活引退後、最初のエンデバー1カ月前の8月から札幌山の手高校の練習に参加したことが始まりだった。「エンデバーでカナダとかオーストラリアとかいっぱい外国に行ったけど、上島さんに教わったプレーを出せたら通用しました。それがうれしくて。上島さんの言っていることは正しいなと思いました。上島さんの指導があったから、今、ジャパンで楽しくできていると思います」。

 高校1年だった昨季は、ウインターカップの準決勝で桜花学園高校の渡嘉敷来夢(現・JXサンフラワーズ)とマッチアップし、なすすべもなく敗れ去った。人生最大の屈辱だった。上島コーチからは「やって失敗するならいい。けれども何もせずに終わるなら先に発展することはない。そんなんじゃ日の丸なんか背負えない」と強く指摘され、涙に暮れた。「その後の練習でやってもやってもしかられて、どうしていいのか分からなくなってしまって」。

代表で活躍するオールラウンダーが目標

 その経験は長岡を一段階たくましくし、今年のウインターカップでの「流れるようなバスケ、周りを生かした得点など自分たちが1つになった良い試合」を成し遂げることができた。
 長岡は、上島コーチの指導がバスケの本質、世界のバスケというものを見据えており、それが自分のプレーを形成していると認識する。「日本がどう戦わなければならないかというスタイルも分かっていて、私の将来のことを考えて言ってくれる。一番はこの身長でセンターではなく外のプレーをする大切さを教えてくれることです」。

 だから、今では外のプレーの方が好きになった。「外というか、まず中に入って相手が警戒したところで外に出るとディフェンスが甘くなる。そこで自分のプレーをして揺さぶりを掛けるのが面白いです」。
 友人たちや指導者たちの支えがあって、今、上島コーチへの全幅の信頼とともに前を向く。「どこ(のポジション)でもできるようになりたいです」と言ったので、その意味は、代表で、五輪で活躍するための自覚なのか? と問うと、長岡は「はい」と力強く答えを返して来た。
 今後、オールラウンダーとしての才能が開花したとき、日本を背負うエースになっているだろう。

<了>

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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