悲願の初V狙う三洋、強さの秘密=ラグビー

村上晃一

リーグ首位と好調な三洋を支える堀江(左)と田中。初の頂点へ駆け上がれるか!? 【Photo:長岡洋幸】

 ジャパンラグビートップリーグの混沌(こんとん)とする順位争いの中で、開幕戦から快調に白星を重ねるのが三洋電機ワイルドナイツだ。鉄壁のディフェンスを武器に日本選手権を3連覇し、もはやその実力は疑いようがないのだが、なぜかトップリーグではプレーオフトーナメントのファイナルあたりに負傷者が出たり、体調不良者が出たりと、不思議なことに優勝には縁がない。
 しかしその苦労も昨季まで、今季こそ頂点への意気込みは強い。日本代表でもレギュラーに定着するHO堀江翔太、SH田中史朗が、三洋電機ワイルドナイツの強さについて語ってくれた。

堀江「日本選手権王者だというおごりはない」

「常にチャレンジする気持ちで試合に臨む」と語った堀江 【Photo:長岡洋幸】

――トップリーグ初優勝に向けて好調に飛ばしていますね。

田中 若手の成長が大きいと思います。野口裕也、大澤雅之、北川勇次(いずれも24歳)など若手が伸びてきて、誰が試合に出てもチーム力が変わらないようになっている。それが強みだと思います。今まで通りのディフェンスもできているし、春にしっかり走り込んできたフィットネスもある。だからこそ勝ち続けていられると思っています。

堀江 昨季の日本選手権王者だというおごりもないし、常にチャレンジする気持ちで毎回試合に臨んでいます。ほかのメンバーもそうだと思いますよ。

田中 周囲は「快勝続き」と言ってくれますが、どの試合もしんどいですよ。

堀江 そう、楽勝はないです。第9節のコカ・コーラウエストレッドスパークス戦(62−0)も、前半は3−0だし、近鉄ライナーズ戦(12−9)もしんどい試合でした。

田中 焦りはないけど、余裕もない。

堀江 いっさい余裕はなし。どの試合も大変です。

――外から見ていると、ディフェンスが堅く、崩される感じがしないのですが。

堀江 もちろん、止める自信は持っています。ただ、余裕はないということです。

――個人的に、今季重点的に取り組んでいるようなことはありますか?

堀江 セットプレーの練習は去年から継続していますが、特にラインアウトのスローイングについては毎日やっています。

田中 SHからのキックとフィットネス。これは頑張っています。キックについては、防御の背後に蹴ってWTBを走らせるようなものをブラウニー(トニー・ブラウン)に付いてもらって練習しています。なかなか試合では蹴らせてもらえないですけどね。

「楽しさ」が三洋ラグビーの特徴

――日本代表で他チームの選手たちと話す機会も多いと思います。三洋の特徴だと感じることはありますか?

田中 三洋は楽しくやっているかなあ(笑)。

堀江 コンタクト練習も少ないし。ほかのチームは激しいコンタクト練習をしていますよね。聞くところでは、スパイクを履くのも嫌になるくらいの。三洋は、そういうのはまったくないです。

――その代わりになる練習はあるわけですよね。

田中 いや、ないですよ。

堀江 足りない部分は個人個人がやります。チーム全体で、試合に近い形式で激しくコンタクトすることは、あまりない。試合間隔が空くときはしますけどね。

――三洋電機との対戦後、他チームの選手の多くが、「三洋はブレークダウンに入るか、入らないかの見極めが素晴らしい」と言います。

田中 それができない選手は試合に出られないということでしょう。相馬朋和さんが口を酸っぱくして判断のことを言ってくれるし、あとは周囲の声。みんなコミュニケーションがうまい。入る必要のないブレークダウンには入らず、ディフェンスの人数を多くするのが三洋のスタイルですから。

堀江 かといって、そのためだけの練習もないんですよ。アタック&ディフェンスの練習で確認しながらやるくらい。人が足りなかったら、近い選手が反応して、それを見て、みんなが次のことを考えていく。

田中 これがうまくいくと、楽だし、楽しいんです。

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著者プロフィール

1965年、京都府生まれ。京都府立鴨沂高校、大阪体育大学卒。大学時代は、FBとして活躍。85年、同志社大学の関西大学リーグの連勝記録を71でストップさせた試合に出場。翌年、東西学生対抗の西軍FBに選出される。卒業後、ベースボールマガジン社に入社。90年から97年まで「ラグビーマガジン」編集長。現在はフリーのラグビージャーナリストとして、多くの雑誌に執筆。「JSPORTS」のあらゆるカテゴリーの解説をこなしている。編集者としても、ジャンルにこだわらずに単行本を手がける。著書に、大学時代の恩師であり、元日本代表名ウイング坂田好弘氏の伝説を追った「空飛ぶウイング」などがある。

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