松坂、岡島、田沢それぞれの2010年=Rソックス日本人選手を振り返る

カルロス山崎

松坂の今季を象徴した「惜しい」試合

ストレートへの手応えを深めるなど、自信を得てシーズンを終えた松坂 【Getty Images】

「ここでやらなきゃ、いつやるんだ」
 松坂大輔は試合後、自分の頭を小突くような口調で苦笑した。5月22日(現地時間、以下同)のフィリーズ戦で、8回2死までノーヒットノーランの快投。安打性の当たりがことごとく野手の正面をつく『予兆』も十分にあったが、結局は打ち取った当たりが左前に落ちた。1998年夏の甲子園決勝戦以来の快挙が成し遂げられなかったことは、『惜しい』の一言では片付けられないが、それはまさに、今季の松坂を象徴するような出来事だった。
 レギュラーシーズン最終日の10月3日、フェンウェイパークの記者会見場で、レッドソックスのセオ・エプスタインGMは松坂について「過去数年には見られなかったストレートの威力があった。まさにパワーピッチャーだった」と評価し、来季への期待感を示した。

 松坂にとっては、ストレートに確かな手応えを得たシーズンだった。7回3安打1失点と好投した5月11日のブルージェイズ戦の後、「こっちに来てから、一番、ストレートに自信を持って投げていた」と話し、その後の登板でも打者のバットを押し込めるストレートがよく見られた。ただ、内容と結果が伴わないことが多く、89勝しながらプレーオフ進出を逃したチーム同様、かみ合わない何かがあった。まさに、『惜しい』シーズンだったと言えよう。

 カットボール、ツーシーム、チェンジアップにも改良点が見られた。中でも、チェンジアップはこれまでの『サークル系』から『スプリット系』に乗り換え、初めて投げた9月26日のヤンキース戦では8回4安打2失点と好投。松坂は「ファレル(投手コーチに)に、こういうチェンジアップもあるよと教えてもらった。試してみたら、すぐに試合で使えそうだと思ったので、使った。指の位置でスピードを変えたり、簡単にできる。この先、ずっと使えるようなボールになればいい」と、わずか5日で新球をマスターした。

松坂「幅が広がる実感があった」

 キャンプ中に背中の張りを訴え、1カ月遅れの開幕を迎えたが、結局、25試合に先発し9勝6敗、防御率4.69、WHIP1.37。

「この4年間で、自分に力がある(自分のボールに球威がある)と、自信をもって言えるシーズンだった。結果は伴わなかったが、終わってみて感じたのは、選手としての幅を広げられるというか、広がるという実感があったこと」
 
 松坂が4年目にして得たもの、いや、時間をかけて得たものは随分と大きいに違いない。

 早いもので、松坂も来季は6年契約の5年目なる。シーズン終了直後からトレードのうわさも出ているが、地元メディアの一部記者が放出論を唱えているケースや、あるいは「もし、球団が決意するのであれば……」といった仮定の報道ばかりで、移籍は現実的ではない。それでも、レッドソックスは来季、捕手、投手コーチといった顔ぶれが変わる可能性が十分にあるため、周囲の変化によって左右されることのない、安定したパフォーマンスが求められるのは確かだろう。

「しっかりと今季の自分を分析して、来年につなげたい」と話した松坂は今、三児の父親として多忙なオフを過ごしている。

<了>

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著者プロフィール

大阪府高槻市出身。これまでにNACK5、FM802、ZIP-FM、J-WAVE、α-station、文化放送、MBSラジオなどで番組制作を担当。現在は米東海岸を拠点に、スポーツ・ラジオ・リポーター、ライターとして、レッドソックス、ヤンキースをはじめとするMLBや、NFL、NHLなどの取材活動を行っている

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