スーパースター不在と東高西低=第81回都市対抗野球大会総括

島尻譲

中堅以上の選手の活躍目立つ

ドラフト候補に名を連ねるJFE東日本の須田は1回戦で10奪三振・1失点完投勝ちの好投を見せた 【島尻譲】

 一昨年は田澤純一(新日本石油ENEOS=現・JX−ENEOS−米大リーグ・レッドソックス)、昨年は長野久義(Honda−巨人)といった注目されていたスーパースターが期待通りの結果を残して来たこともあるだろうが、そういう意味ではやや地味な印象の今大会であった。
 1回戦の新日鉄広畑(姫路市)戦で10奪三振・1失点完投の須田幸太(JFE東日本)、2試合で先発して防御率1.35の大竹飛鳥(NTT東日本)、大会2勝の榎田大樹(東京ガス=東京都)、140キロ台中盤のストレートを披露した美馬学(東京ガス)、日本新薬(京都市)戦に完封した右下手投げの牧田和久(日本通運)らドラフト候補に名を連ねる好投手がチームの勝利に大きく貢献したところは評価できるが、前記の2選手のような派手さがなかったのは事実。その代わりと言っては何だが、東芝の優勝に貢献した池辺を筆頭に、勝負強い打撃で首位打者(17打数8安打)を獲得した中野滋樹(JR九州)、好リードでチームを4強に導いた高安健至(三菱重工横浜)、大会2本塁打を放った嶋岡孝太(ヤマハ=浜松市)らの社会人野球に骨を埋める覚悟の中堅以上の活躍はあらためて社会人野球の面白さを教えてくれた。

5チームが初戦で消えた近畿勢

 32チームによる大会31試合は競り合いが多く、実に見応えのあるものであった。延長タイブレーク(延長11回から1死満塁で攻撃)も5試合あり、足を運んだファンも手に汗を握ったことであろう。
 ただ、戦前から予想されていたように東高西低の傾向は顕著で、ベスト8に残ったのはJR九州以外は東のチームで「関東大会だな」という辛らつな声もあった。近畿勢は6チーム中、5チームが初戦で姿を消した。その中で2回戦にコマを進めたのは近畿の最終枠で代表権を勝ち取った大和高田クラブ(大和高田市)で、ファンの間では「近畿の企業チームはどうしたんだ!?」と、嘆きと怒りが入り混じった声が挙がった。これはさまざまな要因があると思われるが、まず戦力的には打撃力の弱さ。東京ドームという比較的、本塁打の出やすい球場で空中戦ができない。あとはここ数年、指摘され続けていることだが、近畿の地区割りに問題があるように思える。ことしは京滋奈1枠、阪和2枠、兵庫1枠に、これに漏れたチームが近畿2枠を争うという形であったが、この細かい地区割りが競争力を低下させているのは確かだ。「都市対抗で勝つために」が「都市対抗に出るために」になっている感は正直、否めない。また、細かい地区割りの影響で補強選手も取れない。今大会、近畿勢で補強選手ありで臨んだのは阪和のNTT西日本(大阪市)と日本生命(大阪市)の2チームだけ。補強選手の活躍もカギを握る都市対抗だけに、今後も現状と変わらない地区割りならば、東高西低に拍車が掛かることは間違いない。

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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