国際大会で日本代表が必要なもの=世界大学野球選手権・総括

島尻譲

日本投手陣のレベルの高さを証明

キューバに打たれたものの、150キロ超のスピードで度肝を抜いた菅野 【島尻譲】

 今大会、日本は非常にチームワークが良かった。投手陣は藤岡貴裕(東洋大3年)と澤村の代わりにメンバー入りした加賀美希昇(法大4年)の2人を除いては昨年の日米大学野球メンバーで構成された。チームを束ねる主将・伊志嶺翔大(東海大4年)も昨年からのメンバー。また、初代表となった渡邉貴美男(国学大4年)は164センチと小柄ながらも誰よりも大きな声と闘志溢れるプレーでチームのムードメーカーとなっていた。ただ、チームワークだけで勝ち抜けるほど勝負の世界は甘くはない。それが銅メダルに終わってしまった現実でもある。
 投手陣は予選リーグ3戦目のキューバ戦で12失点、決勝リーグ(準決勝)の米国戦で4失点したが、ほかの4試合は無失点。戦前からの高評価と違わぬ内容と結果を残したと言えるし、小さな変化球全盛の時代において全般的に器用な日本の投手陣のレベルは高いことを証明した。4イニングで10三振を奪った大石達也(早大4年)、先発と中継ぎでフル回転の野村祐輔(明大3年)のポテンシャルは際立っていたし、2試合に先発を託された斎藤佑樹(早大4年)、藤岡も存分に試合をつくった。キューバ戦で2本の本塁打こそ浴びたが、菅野智之(東海大3年)の常時150キロ超のストレートとキレのある変化球は魅力的だったし、乾真大(東洋大4年)や中後悠平(近大3年)も左腕の持ち味を発揮した。

目立たなかった右のパワーヒッター

 かたや野手陣に目を移すと、左打者が元気だったことが目を引いた。全6試合で4番を任された伊藤隼太(慶大3年)が3本塁打の大活躍。鈴木大地(東洋大3年)はキューバ戦での一時逆転となる本塁打など長打やクリーンヒットを量産した。一方、やや物足りなかったのが右打者。伊志嶺こそ台湾戦での5安打をはじめ、センター中心に打ち返す打撃で大会計11安打を放ち、オールスター(ベストナイン)にも選ばれた。しかし、若松政宏(近大4年)や井上晴哉(中大3年)ら右のパワーヒッターが機能しなかった。と言うよりは使いどころを持て余していた感があった。これは選手自身のコンディションや相手投手の左右の問題もあっただろうが、守備や走塁で過度な期待を掛けられないプレースタイルの選手だけにチーム編成的に痛かったのはいなめない。
 また、これは完全にこじつけかも知れないが、緊迫した米国vs.キューバとの決勝戦を動かす本塁打を放ったのはマジー(米国)で、同点弾と延長タイブレークでサヨナラスリーランで試合を決めたのはデスパイネと、右打者の価値ある一発であった。大学球界に限らず、日本球界はここ数年、慢性的な右のパワーヒッター不足が懸念されている。育成は急務であるし、実績や経験の有無に捉われることなく国際大会のストライクゾーン(外角が広い)に先天的に強い国際大会向きの選手を見出していくスカウティングも必要かと思われる。
 本気で世界一を狙うのならば、力量のある選手を集めるだけでは限界がある。それはやっぱり、“急造”の言葉で片付けられてしまうもの。国際大会用という言い方には語弊はあるが、もっと育てることも重要視するべきだ。そういう視点もおり交ぜながら今後も『2年計画』を積み重ねて行けば、それは『2年計画』以上の実を結ぶはずだ。

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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