メジャー制覇の鍵は経験とメンタルの強さ=全英リコー女子オープンゴルフ 元賞金女王の村口史子さんが語る大会総括

スポーツナビ

最終ホールでイーグルを奪い、9位タイフィニッシュとなった上田桃子。調子を取り戻しつつある元賞金女王の今後の活躍に期待 【写真は共同】

 ゴルフの海外女子メジャー最終戦、「全英リコー女子オープン」が現地時間1日、英国・サウスポートのロイヤルバークデールGCで最終日を迎え、台湾出身の21歳・曾雅尼がトータル11アンダーで今季メジャー2勝目を挙げた。
 日本人選手では、最終日に7バーディー2ボギー67とチャージを見せた宮里藍が、トップ10入りとなる9位タイでフィニッシュ。また前日5位タイにつけていた上田桃子は、パットがなかなか決まらずボギーが先行してしまったが、最終18番でイーグルを奪い、宮里藍と同じくトータル2アンダー9位タイで終えている。そのほか、有村智恵が2オーバー21位タイ、横峯さくらが4オーバー31位タイで、英国での戦いを終えた。

 今回は、テレビ朝日系列の放送でラウンドリポーターを務めた村口史子さんに、大会総括を語ってもらった。

“自分で考える”ことで成長を見せた上田桃子

――今季のメジャー最終戦は、トータル11アンダーという成績で台湾の曾雅尼選手が優勝しました。

(大会を通して)寒かったり、雨が降ったりと天候がコロコロ変わる中で、昨日までの3日間で1ボギーしかたたかなかったことは、ちょっと信じられません。今日は比較的穏やかな天候の中で1オーバーというスコアでしたが、最終日最終組という優勝がかかった中でのプレーだったので、それもしょうがないですね。それまでの3日間をすべて68でラウンドしたことが、本当に素晴らしかったです。

――それに対し日本人選手では、上田桃子選手が最終日にスコアを落としたものの9位タイで大会を終えました。

 今日に関しては、2番でのダブルボギーのあと、3番ではティーショットをバンカーに入れてしまうピンチがありましたが、6メートルのパーパットを沈めてパーセーブ。最終日のスコアがかかるところで、少しバタバタしたところもありますが、それでも冷静な表情でプレーしていましたね。
 後半になって、惜しいパーパット、惜しいバーディーパットを外しましたが、最後は諦めないでイーグルを奪ったということで、手応えを感じたと思います。

――3週間前の全米女子オープンでは予選落ちという結果に終わりましたが、今大会では上位争いに加わるという活躍。この2大会の間でどんな変化がありましたか?

 スイングに変化が見られますね。ダウンスイングからがコンパクトになり、下半身の動きが小さくなりました。昨日のインタビューでも、内転筋を意識したスイングを心がけていると話してましたし、朝の練習場でも、バランスディスクに乗ってアプローチを打つなど、自分の体の感覚を意識した練習をしていました。

――上田選手は5月に今までのコーチから独立し、ひとり立ちを決めました。その影響はありますか?

 一人になったことで、自分で試行錯誤し、どんなスイングをすればいいか、自分がどんなスイングをしているかをよく考えるようになりました。コーチがいると甘えてしまう部分がありますが、それが無くなったことで、気持ちの変化、自分に対する責任感が強くなったようです。ラウンド中やラウンド後にどう修正するかを自分で考えるようになったことが彼女の成長だと思います。
 またトレーナーの方に聞いたら、最初はがつがつトレーニングをしていたけれど、最近は自分の身体を考え、それを意識したトレーニングをしたいと言うようになったと話していました。成績には出ていないけれども、そういう部分での変化が大きいと思います。

――右ひざのけがも気になるところですが、プレーに影響はありましたか?

 トレーナーもずっと付いていたので、けがは大丈夫そうですね。試合期間中も自転車をこいだり、地道なトレーニングをしていたので、特に大きな影響は無さそうです。
 今回、このタフな状況で4日間を戦い抜き、ベスト10に入れたことは、これからに期待ができますね。

宮里藍の強さは“絶対に諦めない”という姿勢

――ほかの日本人選手では、最終日にスコアを伸ばした宮里藍選手が上田選手と同じく9位タイに入りました。

 宮里選手の“絶対に諦めない”という姿勢が良いですね。どうしてもスコアが悪くなると、結果ばかりを考えがちなんですが、彼女は1打1打を重ねていき、スコアを意識せず、結果的に5アンダーという好スコアを出せることが、彼女のすごさですね。

――決勝ラウンドに残った有村智恵選手と横峯さくら選手についてはどうでしたか?

 有村選手についてはパッティングが決まっていなかったのが残念です。それでも、日本人選手は徐々に良くなっていると思います。一昨年のサニングデールでは日本人選手(不動裕理や宮里藍)が優勝争いをしましたが、今回はたまたま絡まなかった。(上位選手との差は)少し経験が足りなかったぐらいです。

――日本人選手の弱みは、海外のタフなコースやグリーンに慣れていないということなのでしょうか?

 それは、しょうがないです。例えば海外の選手はグリーン周りのとんでもないところからでも、すぐにパターを使おうと決断します。しかし、日本ではそういうコースがなかなかありません。ですので、そういうプレーを実際に見ながら、海外での経験を積んで成長するしかないです。有村選手は今回で2回目。まだまだみんな若いですし、これからです。

――今回は優勝争いに加われませんでしたが、国内ツアーのレベルも上がり、日本人選手のレベルも上がってきています。その中で海外メジャーを制するのに必要なことは?

 メンタルの強さは大事です。日本人選手の中では宮里選手がメンタル的に強い。ボギーを打とうが、ダブルボギーを打とうが、常に気持ちを乱さず1打1打をプレーする、その大切さをを知っています。今回優勝した曾選手も宮里選手と同じく“ビジョン54”という気持ちのトレーニングをしています。彼女はすでにメジャーで勝利している選手ですが、気持ちの持ち方でゴルフは変わってしまいます。気持ちをどうやって持っていくかは、いろいろな経験を積む中で、学んでいくしかありません。ですから日本人選手には今後、海外の強豪選手とラウンドする中で、いろいろな経験を積んでいって欲しいです。

<了>

【One For One】

村口史子/Fumiko Muraguchi

1966年8月30日生まれ。東京都出身。90年にプロ入りし、91年にはツアー初優勝を果たす。また、99年には年間3勝を飾り、見事その年の賞金女王に輝く。2004年シーズン終了後、現役を引退。その後は、テレビ解説やリポーターとして活躍。今回は、テレビ朝日系列で放送される「全英リコー女子オープンゴルフ」の現地ラウンドリポーターとして、熱戦の状況を伝える。
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