カルチョが認めた日本代表、ボバンとコスタクルタも絶賛=イタリアメディアの岡田ジャパン評

ホンマヨシカ

日本戦は地上波で放映されていない

日本とイタリアでは決勝T1回戦で当たる可能性もあったのだが…… 【ロイター】

 イタリアがスロバキアに屈辱的な敗戦を喫した4時間半後に、日本の念願だった海外でのワールドカップ決勝トーナメント進出が決定した。ミラノに住んで両国を応援する者にとっては少し複雑な心境だ。しかし、知り合いのイタリア人たちに対して、このような結果になったことで、少しは大きな顔ができることも事実である。

 といっても、まだカルチョ好きのイタリア人から日本が決勝トーナメントに勝ち進んだことに対する祝福は受けていない。これはイタリアでのテレビ放映の事情が関係しているようだ。ペイTVの契約をしていれば、日本戦を含む全試合をテレビ観戦できるのだが、今大会のグループリーグでの日本戦3試合の放映は、地上波のテレビ局では行われていなかったので、ほとんどのイタリア人が日本の試合を見ていない。
 まあ、大会前の日本の評判を思うと、こちらの地上波で放映されないことも分からないではない。イタリアがグループF、日本がグループEということで、決勝トーナメント1回戦で対戦するかもしれない可能性があったとはいえ、そこまで気にする物好きは少なかったということなのだろう。

オランダ戦解説のクレスポ「日本は攻める勇気を持たなかった」

 では、その前評判が低かった日本のグループリーグでの3試合を、ペイTVの解説者たちや各スポーツ紙がどのように評価していたかに触れてみたい。
 まず、カメルーン戦での解説者はステファノ・ナバ(現役時代はサイドバックとしてパルマやミランに所属)。
 本来はトップ下の本田圭佑を1トップに起用し、数的優位の中盤が実践する素早いプレッシングでカメルーンの攻撃の芽を摘み取った岡田武史監督のさい配と、決勝ゴールを決めただけでなく、持ち前のキープ力で貴重な時間を稼いでいた本田のパフォーマンスをナバは絶賛。しかしそれ以上に、ボールを受けるために中盤まで下がらざるを得なかったエトーの期待外れのプレーと、選手に効果的な指示を与えられなかったカメルーンのルグエン監督の無策を批判していた。
 翌日のスポーツ新聞による日本対カメルーン戦に対する評価も同じ論調だった。アルゼンチンのマラドーナ監督同様に、岡田監督も本大会に入ってこれほど高評価を受けるとは……サッカーは分からないものである。

 続く第2戦のオランダ戦の解説者は、現役選手の元アルゼンチン代表FWのエルナン・クレスポだった。すでに解説者としての実績があるナバと違い、クレスポはオランダのサッカーとオランダ人選手のことは知っていても、日本のサッカー、日本人選手に対する知識はあまりないため、オランダ側の視点からのコメントが多かった。
 オランダが苦戦した理由については、「サイドにボールが渡ったと思ったら、日本人選手に詰め寄られるため、サイドからの効果的な攻撃が仕掛けられない」と分析。日本に対しては「引き分け狙いは分かるが、せっかく良いテクニックを持っているのに、引きすぎているのは残念」と苦言を呈し、試合後には「日本は攻める勇気を持たなかった」と消極的な戦い方を批判した。
 翌日の各スポーツ紙も、日本がオランダ相手に善戦したこと以上に、これまでのオランダと違い、結果重視の現実的なオランダについての内容が多かった。

コスタクルタ好評価、ボバンは松井と大久保に注目

ボバンは本田だけでなく、松井(写真)や大久保も高く評価した 【Photo:Action Images/アフロ】

 そしてグループリーグ最終戦、決勝トーナメント進出を懸けたデンマーク戦での解説者は再びナバが担当した。さすがに最後ということで、試合前に何かコメントしているのではと思い、試合開始1時間前からテレビをつけていたのだが、予想通り話題を独占していたのは、スロバキア戦でのイタリアの屈辱的な敗戦についてだった。

 カメルーン戦での日本の戦いぶりを絶賛していたナバは、このデンマーク戦でも全員が一丸となって献身的にプレーする日本の戦いを「スピードと耐久力を兼ね備えた非常にバランスの取れたチームだ」と褒めそやした。前半に本田と遠藤保仁のFKが決まって日本が2−0とリードすると、聞いているこちらが「それって褒め殺し?」と思うほど、褒め言葉に拍車がかかった。
 試合後はスタジオでアレッサンドロ・コスタクルタ、ズボニミール・ボバンの2人が解説者として出演していた。コスタクルタは、同時刻で行われたもう1つのカード、カメルーン対オランダ戦でのファン・ボメルの中盤でのプレッシングがカメルーンの攻撃を寸断させていたと評価。さらに、デンマーク戦での日本も同じように中盤から素早いプレスを仕掛けていたと解説した。ボバンは「本田だけでなく、松井(大輔)や大久保(嘉人)らタレント性を持ち合わせている選手が多くいる」と日本人選手が見せたプレーの質の高さにも注目していた。

 さて、残念ながら試合翌日の新聞はまだ購入していないのだが、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のウェブサイトをのぞいてみると、プレッシングを多用して試合を優位に運んでいたことに触れ、さらに決勝トーナメント1回戦の対戦相手であるパラグアイに「日本を甘く見ない方がいいだろう」と、その試合が接戦になることを予想している。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント