同じ席でも価格差9倍! MLBのチケット戦略
球団自ら“プラチナ・チケット”化
ホーム開幕戦で4万2940人の観客を集めたジャイアンツの本拠地AT&Tパーク。今季から試合ごとにチケット料金が変わる新システムを全席で導入した 【Getty Images】
このカードは5月にもメッツの本拠地シティ・フィールドで開催され、3試合で12万人を超える観客を動員。こうした人気カードのチケットが入手困難となり、ブローカーやオークションなどを通じて高値で取引されるのは、米国も日本も変わらない。だが、中には球団自らこういったゲームのチケットを“プラチナ・チケット”化しているケースもある。
たとえばジャイアンツが、全米規模での人気を誇るレッドソックスを6月25日(現地時間)から本拠地AT&Tパークに迎えて行う3連戦。ジャイアンツの地元では6年ぶりの開催となるこのカードの初日、金曜日のナイトゲームは最も高額な席の「プレミアム・フィールド・クラブ」で225ドル(約2万円)、立見席を除いて最も安いレフト側の外野席でも43ドル(約3900円)もする。
断わっておくが、これはブローカーやオークションでの価格ではない。球団が設定している正規料金である。しかも、3連戦の中でもその値段は日々変わる。「プレミアム・フィールド・クラブ」の場合、26日の夕方に始まる第2戦では224ドル、27日にデーゲームで行われる第3戦では223ドル50セント。レフト側外野席も26日は42ドル、27日は44ドルといった具合だ。
一方で8月30、31日のロッキーズ戦などでは「プレミアム・フィールド・クラブ」も100ドルちょうどと、グッとお値ごろ感が出る。レフト側外野席に至っては、4月12日からのパイレーツ3連戦ではわずか5ドルと、レッドソックス戦の9分の1近い価格設定になっていた。
日本でも誕生した「変動価格制」
日本でも、東京ヤクルトが巨人戦・阪神戦とそのほかのカードで一部指定席の料金を変えており、福岡ソフトバンクは外野席のみ、平日と土・日曜で異なる料金設定をしている。2009年からは、東北楽天がメジャーばりに対戦相手や曜日などによって価格設定を変える「フレックス・プライス」を導入。最も高額な設定の「プラチナ」から最も安価な設定の「バリュー」まで5つのカテゴリーに分かれており、「プラチナ」のゲームでは7000円する「ゴールデンシート」(大人)も、「バリュー」では3800円と半額近い。
極端な格差は受け入れられるか
ベースボールも興行である以上、対戦チームの人気や曜日などによって試合の価値が異なるという考えも、ある程度は理解できる。ブローカーやオークションで付けられるチケットの値段が、それを物語っているともいえる。それでもジャイアンツ戦のレフト外野席のように、正規の料金で9倍近くも格差があるというのは、やはり抵抗がある。
今季は開幕から好調のジャイアンツは、4月9日のホーム開幕戦で4万2940人のファンを集めるなど、ここまでホーム36試合でナショナルリーグ5位の128万7420人を動員している(6月19日現在)。極端なチケット価格差を、ファンは受け入れているのだろうか。その答えは、25日からのレッドソックス3連戦のスタンドが明らかにしてくれるだろう。
<了>
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