キーワードは「ストップ・ザ・フィリーズ」=MLBナショナルリーグ見どころ

出村義和

フィリーズは開幕戦で新加入のハラデー(写真)が勝利を収め、幸先の良いスタートを切った 【Getty Images Sport】

「ストップ・ザ・フィリーズ」――。ナショナルリーグの優勝争いのキーワードはこれに尽きるだろう。リーグ2連覇の中心メンバーにほぼ変動はなく、助っ人的役割を果たしたクリフ・リーを放出したが、メジャーで最も完成度の高い投手といわれるロイ・ハラデーと、クセ者三塁手プラシド・ポランコを加えて一段とチーム力をアップ、おととしに続くワールドシリーズ優勝の呼び声も高い。そこでフィリーズ打倒の可能性を秘めるチームを地区横断的にピックアップ、合わせて優勝争いに影響を及ぼしそうな有望新人も紹介しよう――。

カージナルスが対抗の筆頭

 対抗の一番手は何といっても中地区のカージナルスだろう。強打マット・ホリデイと7年1億2000万ドル(約113億円)で残留契約をまとめ、2年連続MVPのアルバート・プホルスの援護砲を確保。コルビー・ラスマスら若手の成長も期待できる打線は破壊力十分。
 抜群の安定感をみせるクリス・カーペンターとアダム・ウェインライトが両輪となる先発陣は3番手以下に不安は残るものの、ブルペンを含めた投手陣全体のレベルは高い。守備力もあり、総合的にみてフィリーズに劣る点といえば、パンチ力ぐらい。両チームの対戦はナ・リーグの看板カードとして大いに注目されるに違いない。

 フィリーズと同じ東地区では投手王国が復活しつつあるブレーブスが面白い。投手陣には8年連続2けた勝利を挙げているデレク・ロウ、次代のエースを争う伸び盛りのジェイアー・ジャージェンスとトミー・ハンソン、エース復活の兆しが見えたティム・ハドソン、そして川上憲伸とバラエティに富んだ先発陣がそろっている。ブルペンはセットアップマンに斎藤隆、クローザーにはビリー・ワグナーという申し分のない実績を持つスペシャリストが加入して強固なものになった。
 また、打撃陣では新人王の有力候補とみられる07年ドラフト1位のジェイソン・ヘイワードが開幕戦で初打席初ホーマーを放つなど、早くも大物ぶりを発揮、打線に大きな刺激を与えている。
 今年のブレーブスには14年連続地区優勝の偉業を持ち、シーズン後に勇退する名将ボビー・コックス監督に花道を飾らせたいという強いモチベーションもあり、混戦になれば結束力が決め手になることも考えられる。

大型ルーキーに注目のレッズ、ナショナルズ

ナショナルズはドラフト全米1位のストラスバーグに注目が集まる 【Getty Images Sport】

 アメリカ・メディアの間で評価が高いのはロッキーズだ。ホルヘ・デラロサとウバルド・ヒメネスという若い左右のエースを中心にした層の厚い投手陣に加え、すっかり大砲に成長したトロイ・トゥロウィツキーが四番に座る打線はスピードとパワーを兼ね備える。昨年途中から就任して最優秀監督に選出されたジム・トレーシー監督のもと、開幕ダッシュに成功すれば、若さと勢いで打倒フィリーズを果たせるかもしれない。

 大型ルーキーのデビューで大きな変化を期待されるのはレッズだ。北京五輪やワールド・ベースボール・クラシックで日本にも名前がとどろいたキューバの亡命選手、アロルディス・チャップマンはマイナーでのスタートになったが、持ち前の100マイル(約161キロ)を超える剛速球でメジャーデビューを果たし、ローテーションに入るようなことになれば、レッズが優勝争いに食い込んでくることは確実だ。今年のレッズは近年になく戦力が整備されている。ここにドラマ性のある新人が加わってくれば、チームは間違いなく活性化される。

 そのことは2年連続最下位のナショナルズにもいえる。戦力的にみて上位進出は難しいが、昨年ドラフト全米1位のスティーブン・ストラスバーグがメジャー昇格を果たしたときから、チーム内のムードは一変するだろう。チャップマンと同様に100マイル以上を投げる豪腕が黄金期にあるフィリーズの重量打線を牛耳るという展開になれば、ナショナルズだけでなくリーグ全体も“ストップ・ザ・フィリーズ”で盛り上がるに違いない。
 このほかにもカブスの強打タイラー・コルビンやマーリンズのガビー・サンチェスら逸材がひしめいている。こういった大型ルーキーがどのように優勝争いに絡んでくるのか。フィリーズを軸にした面白いシーズンになることは確かだ。

<了>
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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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