元新日本プロレス営業部長が語る「タイガーマスク衝撃のデビューから引退まで」=『Gスピリッツ』発
【(C)原悦生/Gスピリッツ】
タイガーマスクがファイトをしたのは、それから83年8月までのわずか2年4カ月に過ぎない。今もなお根強い人気を誇るタイガーマスクはいかにして生まれ、最後はリングを去ることになったのか――。新日本プロレスの営業本部長として、デビューから引退までを身近で見続けていた大塚直樹氏に話を聞いた。
「猪木さんは前から佐山を好きだった」
【(C)Gスピリッツ】
「新間本部長から伺ったのは、それこそ3月下旬か4月上旬ぐらいで。あの時はテレビでアナウンスしたのはいいけど、“マスクやコスチュームはどうするの?”ということになって、僕はそれまでタイガーマスクについてはノータッチだったんですけど、新間本部長から“大塚、何とかしろ。マスクとマントを作れ”って指示を受けて、ドタバタ動きましたよ(苦笑)。確かデビュー戦の当日の朝、渉外の人間が成田空港に佐山を迎えに行って、そのまま新宿の京王プラザホテルに連れて行ったはずです。夕方になってから、僕がコスチューム一式を持って彼の部屋に迎えに行ったんですよ。京王プラザから蔵前国技館に到着するまでの間に、新間本部長からの指示をいろいろと説明したと記憶してます」
――それは佐山さんにとってもビックリでしょうね(笑)
「梶原先生の『格闘技大戦争』に出場(77年11月14日=日本武道館、vsマーク・コステロ)したのも、猪木さんが“佐山にやらせてみようか”と言って始まった話ですからね。猪木さんは前から佐山を買ってたというか、まあ、好きだったんだと思いますよ。若手の頃も、よく控室で“また甘い物、食ったのか?”なんて佐山をからかってましたもん。猪木さんって、好きな人間には何気にちょっかい出しますからね(笑)」
「佐山はタイガーマスクになることを飲み込めてなかった」
【(C)Gスピリッツ】
「何しろ佐山本人はなぜイギリスから急に呼び戻されたのか、よくわかってなかったんです。佐山は“とりあえず、蔵前に顔を出せ”としか言われていなかったみたいですね。今、本人は違うことを言うかもしれないけど、その時はそう聞きましたから。それで車の中で“今夜、漫画のタイガーマスクに変身するんですよ。これを着けて……”と例のマスクとマントを見せたら、“何ですか、これは!?”って(笑)。僕が“いや、間に合わなかったんだよ”と言ったら、佐山は“そうですか……”と。蔵前に着いて正面玄関の上の部屋に入ってもらったんですけど、僕の車からその部屋に連れていくまで、ファンに見られちゃいけないんで誰かメキシカンのマスクを被せたような記憶があるんですよ。その部屋の中で佐山に着替えてもらって。佐山から“これでホントに何するんですか?”って言われましたから、おそらく蔵前に到着して実際に着替えるまでは、自分がタイガーマスクになるということをいまひとつ飲み込めてなかったんじゃないですかね。僕は“指示を受けているのは、タイガーマスクになれっていうことだけで、ファイトスタイルは特に言われていないし、自分の思う通りにやればいいと思いますよ”とだけ伝えました」
――正体不明のマスクマンということで、試合前にリングに上がってロープなどの感触を確かめたりできなかったわけですね
「そうですね。柔軟とかは部屋でやってましたけど、試合はぶっつけ本番でした。僕の記憶では、誰もその部屋に来なかったですね。普通なら“お帰りなさい”とか誰かしら選手が来るじゃないですか。だから、佐山がその部屋で待機していたことを選手は誰も知らなかったんじゃないですかね。僕は途中、抜けたりしましたけど、出番の直前まで一緒にいました。それからみんながいる控室、相撲の支度部屋に入ったんですけど、あの時は間際まで隠していた感じでしたね」
※この文章は『Gスピリッツvol.15』(3月31日発売)に掲載されているインタビューの一部を再編集したものです。本誌では、デビュー戦の様子から佐山サトルの素顔、ブーム渦中の新日本プロレスの実情、クーデター事件の顛末や引退の真相などについても語っています。
プロレス専門誌「Gスピリッツ」vol.15
【(C)Gスピリッツ】
■プロレス専門誌『Gスピリッツ』vol.15
【特集】初代タイガーマスク『猛虎伝説』の最深部を探る
■証言
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