青木真也×増田俊也 特別対談=『ゴング格闘技』発
4.17米国ストライクフォースで金網デビュー戦にして王座戦に臨む青木真也と、「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」著者の増田俊也氏が初対談! ともに柔道をバックボーンに仰天秘話が飛び出した! 【ゴング格闘技】
■青木「木村先生って、ハチャメチャですよね(笑)」
「バイブルは伝説の柔道家・木村政彦」。
DREAMライト級GP決勝大会前の煽りビデオで、こう紹介された青木真也は、木村の動画を見ながら「“殺し”に関してはこれを見なきゃ、男は。柔道は“競技”ではなく“格闘技”なんですよ」と言った。
青木の師匠・中井祐樹の先輩として、高専柔道の流れを汲む寝技中心の七帝柔道を北大で経験した作家・増田俊也は、現在、本誌で「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を連載している。
大晦日の青木バッシング時には、「タップしないときは折るしかない。七帝では主審が関節で見込み一本を取ると後でもめる」といち早くブログで擁護論を展開した。
「“世間対個人”という構図ができたときに無力な個人を守るのが作家のスタンス」という増田は、木村政彦の物語でも、その名誉の回復と格闘技としての柔道を歴史の中から紐解いている。
柔道とMMA──。異なる競技の中に息づく木村政彦の遺伝子。それは格闘技とは何かを考える格好の材料となる。
今から59年前に海を渡り、エリオ・グレイシーと対戦した木村。今春、ストライクフォースに参戦し、米国金網初上陸となる青木。そのルーツを探る特別対談をDEEP道場で行なった!
増田 試合会場で会ったことはありますが、こうして面と向って話すのは初めてですね。まず、青木選手は木村政彦先生について、どんな印象を持っていますか?
青木 ハチャメチャな人ですよね(笑)。やってることとか。
増田 木村先生の悪童ぶり、やんちゃぶりについては実は書けないことが多いんです(笑)。あまりに常人のスケールを突き抜けていて。僕自身は木村先生のそういうところが大好きなんですけど(笑)。
青木 僕からすると「木村政彦」はあまりにかけ離れ過ぎていて、もう何というかネタの部分もありますね(笑)。レスリングの「八田一朗」とかのように。
増田 僕はあそこまで突き抜けないと超一流にはなれないと思うんですよ。
青木 でも、無駄なこともいっぱいしてると思うんですよ。異常に練習したりとか。それもどこまでの強度で練習してたのかわからないですし、高専柔道もそういう部分はあるじゃないですか。
増田 たしかに高専柔道は練習量の多さで有名ですけども、あまりにも寝技乱取りの量が増えると、流してやってる時間もそのなかに入ってくる可能性もありますね。
青木 何かで読んだんですけど、汗水を雑巾で吸った! とか。
増田 柔道の場合、東京の強豪大学でも乱取り量が増えるとそれだけで疲れちゃって満足しちゃってるっていう部分もあると思うんです。だからあまりに練習時間だけが無駄に増えると、練習の強度が落ちて逆に問題がある。今の柔道はブラジリアン柔術やMMAの研究量を学ばなければならないと思っています。これは日本のスポーツ界のある種、大きな問題点だと思うんです。集団行動で練習することの。練習強度というのは青木選手のようなスーパートップファイターならではの考え方ですよね。
増田「青木選手もかなりの木村マニアですね」
1951年10月23日、ブラジル・リオデジャネイロのマラカナンスタジアムで、エリオ・グレイシーを腕がらみに極める木村政彦。副大統領が観戦し、棺桶まで用意された会場で、いったい木村は何と戦っていたのか? 「このミス」大賞優秀賞受賞作家・増田俊也氏が『ゴング格闘技』誌で、伝説の試合の59年目の真実に迫る! 【ゴング格闘技】
増田 証明しようがないことではありますね。ただ、木村先生の場合は一人で出稽古に回っていたので、青木選手と同じように「練習強度」という概念は持っていたと思いますよ。自分の大学だけでは流す稽古が増えるので意図的に一人で大勢の敵に囲まれる出稽古を重視したと自著で書いてます。たくさんの人に話を聞きましたが、木村先生は量から入って質も高めていって、やはり練習強度もかなり強かったと思いますね。研究も非常に重視した方ですし、青木選手に近い考え方の人だったような気がします。トップを獲るにはやはり同じ結論に帰着するんだと思うんですよ。青木選手は木村先生の動画を見たことがあるんですよね。
青木 はい。あの大外刈りですよね。「木村君、大外刈りだけは勘弁してくれたまえ」って対戦相手に言われるくらいの。そんなの恥ずかしくてなかなか言えないし、自伝でも書けないと思うんですけど(笑)、そこがすごい。加藤(幸夫)vsエリオ戦(の動画)も見ましたけど、リングの上で柔道衣を着ていることに驚きますね。でも、いろんな意味でロマンはあります。僕の場合単純にそういう、活字格闘技も好きだから。木村先生が道衣を5本全部の指で握ったっていう話も印象に残っていて、今の柔道家は全部では握らないんですけど、木村先生は「5本の方が強いから」って5本握ったと。どんだけ強いんだろうっていう(笑)。
増田 ああ、特に天理大の人なんかは強く握るな、指先を引っかけてるだけでいいんだって言いますからね。手首が返らなくなるからと。
青木 木村政彦……おかしいですからね(笑)。僕も練習とかで自分がキツい時に「木村先生なら」って時々、おかしくなってみます。「木村先生なら大丈夫だ!」みたいな。自伝で、金の代わりに米俵を持っていって「私が木村政彦だ。これで酒を飲ませてくれ」って酒場に飲みに行った話しとかもいい!(笑)。
増田 詳しいじゃないですか(笑)。
青木 メチャクチャ知ってますよ。あと味噌汁がクソ汁だったとか。
増田 はははっは。青木選手、かなりの木村マニアだ(笑)。岩釣兼旺先生が在籍した頃の拓大柔道部が犬鍋を食ってた話は知ってますか。
青木 岩釣先生だと、ほかにも下駄でベンツの上を歩いて行ったとかそういう話いっぱいありますよね(笑)。拓大系の系譜があって、やっぱりみんなパンチ効いてるんですよ。メンタリティがすごく人間ばなれしてるというか。
増田 青木選手の柔道時代もそういう名残りはあったんですか?
青木 みんな言うんですけど、やったほうは覚えてないんですよね。僕なんて、現役やってていまだに練習でいじめたことなんて無いと思ってるのに「青木はひどかった」と言われたり(笑)。
増田 青木選手の後輩に聞いたんですが、青木選手との乱取りでは毎回6回も7回も連続で絞め落とされたと(笑)……以降、『ゴング格闘技』5月号につづく。(松山 郷=構成/和田 弘=写真)
(プロフィール)
ますだ・としなり
1965年生まれ。北海道大学中退。北大柔道部で高専柔道の流れを汲む寝技中心の七帝柔道を経験。中井祐樹は柔道部の3期下にあたる。2006年、『シャトゥーン―ヒグマの森』(宝島社、増田俊成名義)で第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞。『月刊秘伝』で北大柔道部での日々を綴った「七帝柔道記」を連載。本誌連載「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」が書評紙誌で話題となっている。
『ゴング格闘技』5月号は絶賛発売中!
『ゴング格闘技』5月号は絶賛発売中! 表紙は59年前に海を渡り、エリオ・グレイシーに勝利し、MMAの歴史の礎となった柔道家・木村政彦 【ゴング格闘技】
http://www.eastpress.co.jp/
☆巻頭スペシャル
魔裟斗、引退後 独占ロングインタビュー
「今だから話せること」
コヒのことが羨ましかった──。
☆格闘映像新時代「3Dを見た!」
『Dynamite!!〜勇気のチカラ2009〜』
DVDの3D版、独占鑑賞レポート!
■総力特集◎永久保存版
海を渡ったサムライたち。
☆特別拡大版「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」
第二十七回 木村政彦 対 エリオ・グレイシー!
☆59年目のエリオ・グレイシー×木村政彦を
58歳のホリオン・グレイシーにあらためて、訊く。
☆特別対談
青木真也×増田俊也
『キムラ』を語る!
☆テクニック
「アオキが極めたキムラロック」
☆4.17 米国ストライクフォースで、
ギルバート・メレンデスとタイトルマッチ!
青木真也の“覚悟”。
「僕が負けたら日本のMMAが終わる。
他の選手と同列に並べられたくない」
☆ヴァンダレイ・シウバ戦に向け、
米国でひとり刃を磨く“平成のコンデ・コマ”
秋山成勲
「木村政彦の大外刈りは、親父の大外刈りでした」
☆テレビ東京系列 全国ネットで放送!
3.31 UFC FIGHT NIGHT 対談
海を渡り続ける者――宇野薫と岡見勇信。
☆のるかそるか !?
五味隆典vsケンフロ、待ったなし!
☆UFC二戦二敗で手に入れた未来
小見川道大
「くそったれ魂の原点」
☆キムラロック、腕がらみを考察する
中井祐樹の提言。
腕がらみは関節技だけにあらず!
「腕がらみは最高の抑え込みです」
☆僕らの腕がらみ論
UWF系・中村大介
グラップリング・徹肌ィ郎
柔道・小室宏二
サンボ・田中康弘
☆『1976年のアントニオ猪木』著者・柳澤健、怒涛の3本立て!
グレイシーを初めて破った日本人
「小野安一という男」
☆“講道館史観”を超えて――「光の柔道、影の柔術」
☆ミュンヘン五輪銅メダリスト・石井千秋が語る
「ブラジルにおける柔道と柔術の深すぎる関係」
☆NHKスペシャル「JUDOを学べ」「日本柔道を救った男」
名物ディレクターが追う!
「海を渡った柔道家たち」
☆40年前のリョート・マチダ
松濤館空手とルタリーブリを学び
バーリトゥードを戦った男
ジョアォン・ヒカルド
☆松原隆一郎「教えて、教授!」第36回
「柔道の国際ルール改正で
歴史ある技がいくつも消えてしまう……
講堂館や全柔連は議論せよ!」
☆果し合いを見せた“荒鷲二世”、リングを去る。
坂口征夫「オロゴン戦で“坂口の呪縛”が解けました」
☆「私と格闘技」第10回
ムリーロ・ブスタマンチ
「もし子供時代に戻ってもう一度人生を歩むチャンスを得たとしても、
私は同じ選択をするだろう」
■特集
青木をめぐるライバルたち。
☆パウンドのある柔術、ナンバーワン
ギルバート・メレンデスの野望。
「日本でリマッチ?
アオキに2度勝つのも最高の気分だろうね」
☆誰よりもギルバート・メレンデスを知る男が技術解説!
石田光洋のメレンデスvs青木論、そして観戦ガイド
☆五味&青木が全米進出──
川尻達也の胸の内
「焦ってもしょうがない。今のうちに……」
☆青木のセコンドとして渡米!
新生SRC誕生に感じたもの、自らの復帰予定、
そして青木真也の北米参戦について語る。
北岡 悟
「青木? メレンデスとは……」
☆4・10 UFC 112 で“絶対王者”BJ・ペンと対戦!
UFCライト級戦線の月見草 !?
フランキー・エドガー、見せるか草魂!
「TUFファイターが優遇されている?
彼らは商品価値が高いんだよ」
☆スパッツ&サポーター着用でUFC連勝中!
“UFCの青木真也 !?”
ジョージ・ソティロパロス
「MMAと大和魂」
☆MMAテクニック徹底解明!
ジョージ・ソティロパロス×ジョー・スティーブンソン
「動きが多過ぎて、ミスを見過ごすMMAグラップリング」
監修&実演:ヒデ三好&渡辺直由
■特集「K−1開幕!」
☆佐藤嘉洋
「僕が強い相手としかやりたくない理由」
☆小比類巻太信、知られざる格闘哲学とは?
「格闘技は軸と呼吸」
☆正道会館「先輩後輩」が斬る。
3.27 K−1開幕! 立ち技委員会・特別篇
武蔵×大宮司進
「K−1は“憧れの舞台”であってほしい」
ほかコンテンツも“これが噂の”企画満載です !!
http://www.eastpress.co.jp/
発行/イースト・プレス
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