WATCHしたい球団に!〜岡田オリックスの船出〜

岡田新監督の下で大きく変ぼうを遂げるチーム

大胆なチーム改革に着手したオリックスの岡田新監督 【オリックス野球クラブ株式会社】

 56勝86敗2分。惨敗だった。これほどまでの潜在能力とパフォーマンスの間の乖離(かいり)を誰が予想したであろうか? 故障者続出という不測の事態があったにせよ、今、思い出しても呪わしい数字であり結果であった。そんな十字架を背負いながらのスタートを余儀なくされたオリックス・バファローズだが、1人の指揮官の力で、今、チームが大きな変ぼうを遂げようとしている。

「俺は去年の数字は全く知らない。俺には関係ないことよ。今とこれからが大切なんや。去年の10月からこのチームを見ているけど、ホンマ、力のある選手が多く、しかも年齢も若い。正直、『いいチームを預かることになったなぁ』という気持ちが強いね」と岡田彰布新監督は言い切る。確かに、昨季は個々の能力の総和とチーム力があまりにもリンクしなかった。理由は一つではないだろう。主力の多くを見舞った故障や、チャンスに打てず、ピンチに守れぬという悪循環。さらには、チームにいまひとつフィットしなかったストラテジー(戦略)など、今さら勝てなかった要因の“魔女狩り”をしても意味がないと、新しい指揮官は言う。

投手陣配置転換で勝利の方程式を

「要するに、勝つためには弱点をどう克服するか。去年の弱みは明らかに、終盤の戦い方にあったわけで……。7回以降に逆転された試合が多すぎた。リリーフ陣の整備と強化しかないやろ」
 岡田監督はその言葉通り、去年、先発で数字を残せなかった小松聖、平野佳寿といったスターターのリリーフへの配置転換構想を打ち出した。かつて、阪神で、7回以降の終盤を3人の投手で勝ち切る“勝利の方程式=JFK”を作り上げた指揮官としては、勝つための当然の策なのだろう。「去年、長いイニングで無理だっただけで、小松も平野も実績があるやろ。1回なら抑えられるはずや」と弱点克服というよりも、個々の長所をフルに引き出し、活用しようとする意が見えてくる。
 先発陣では、早々と開幕投手を言い渡された金子千尋を筆頭に、昨季2ケタ勝利をマークした岸田護、さらには山本省吾、近藤一樹が控えている。そして、何よりも心強いのが、巨人から移籍の木佐貫洋。キャンプ、オープン戦と「結果を出すことにこだわりました」と、好調をキープする木佐貫に対する期待は高まるばかりだ。

「俺は本気やから」飛び出した優勝宣言

 攻撃面はというと、5年目のT−岡田の成長が著しい。「あれほど、(打球を)飛ばせる日本人もそういないやろ。相手投手が右であろうが左であろうが使っていくよ」と指揮官も彼の伸びシロに期待する。「このキャンプでは人生で一番、数多くバットを振り込みました」とT−岡田本人も力を込める。また、キャンプ中のトレードで獲得した赤田将吾の加入も、一つでも先の塁を盗るという岡田野球に適ったものだ。
 そして、今季のバファローズにとって大きなトピックスは、田口壮の復帰だろう。かつてブルーウェーブで日本一を経験し、海を渡ったあとも2度のワールドチャンピオンと、輝かしい実績と経験を有するベテランが加わることによって、チームに精神的な支柱がもたらされたことは確か。「僕の経験がチームに活きるのであれば、何でも伝えたい。でも、オリックスという若いチームから、僕がもらうものもあるはず。戻ってきたからには、チーム内での競争にも負けません!」と不惑を過ぎたとは思えないハツラツとした言動でチームを引っ張っている。

 ローズ、フェルナンデスが去った打線に迫力不足という印象はない。むしろ、短打4本で1点しか取れなかった、機動力とは無縁な前時代の大鑑巨砲主義からの脱却こそ、このチームに必要なのかもしれない。もはやホンモノとなった坂口智隆と赤田将吾の1、2番が機動力を駆使し、後藤光尊、カブレラ、ラロッカのクリーンアップで走者を還す。そんな光景が、いとも容易に思い描けるほど、ことしのバファローズは頼もしい。何も、これらが、希望的な楽観論でないことは新しい指揮官が一番よく知っている。
「俺は本気やから……。やると言った以上は絶対、成し遂げるから。もちろん目標は優勝よ」
「Watch!」。このチームスローガンのように、目が離せない、気になる存在になり得そうな、ことしのオリックス・バファローズである。

<text by 大前一樹>
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