節目を迎えた夏見と福田=クロスカントリー女子リレー
現役続行に懸けた思い
福田は、引退覚悟だったトリノで、思いのほかいいパフォーマンスができている自分に気付く。「自分が世界大会でそんなに走れたのは初めてでした。自分ももっとやれると気付かされ、現役を続けようという気持ちがふつふつと沸いてきたんです」。だが、一度は引退を考えた頭の中を切り替える作業は、予想以上に難しかった。それからの期間を福田は苦しみ続ける。練習環境でも自分のペースを作ることがなかなかできなかった。昨季の世界選手権の時点でもそれは解消できなかった。
転機はその直後。「成績が出ないならば」とコーチと話し合い、世界選手権以後のワールドカップ転戦を回避し、日本国内でリフレッシュすることにした。「実家に戻って、夜空を見上げたりして」自分を取り戻す。3月の全日本選手権で本来の滑りが戻り始めると、オフを短めに切り上げて練習を再開した。自然と意欲がよみがえっていた。ディスタンス系(長距離系)の強化を取り入れた地元でのトレーニングも功を奏し、最大酸素摂取量の数値が自己最高を出すまでになっていた。
夢と現実のはざまで
夏見はスプリント2種目での不振をばん回する走りを見せ、「今回初めて自分の力を出せました」と、ホッとしたような表情を見せた。「(バンクーバーを終えて)全般的にパーフェクトな走りができなくて悔しい部分が多かった。でも最後のチーム戦で、自分の滑りまでいかなくても、トップ選手に食らいつく走りができたので、最後にチームに貢献できて良かったです」
来季の世界選手権など次の目標はあるかもしれないが、夏見と福田の2人がバンクーバーで一つの大きな節目を迎えたことは間違いない。必ずしも満足できない結果だったにしても、この4年間に歩んできた足跡の、最後の一歩をしっかりと踏みしめたのだという手応えは見いだせたであろう走りだった。