「先駆者の孤独」土居進トレーナーが見たカリスマ・魔裟斗の実像=『ゴング格闘技』発
勝者コール後、土居進トレーナーと抱き合う魔裟斗。ヌアトラニー、飯田裕トレーナー……“チーム魔裟斗”がカリスマを創り上げた 【(C)ゴング格闘技/舟橋賢】
「体力で上回って勝つ」なんて考えてたら世界チャンピオンにはなれない
土居トレーナーはこの他に毎週金曜日、走り込み中心の「スタミナトレーニング」も主宰している。マンツーマンのパーソナルトレーニングは金銭的な負担が大きく、若手選手は手が出ない。そのため、最小限の費用で正しいトレーニング方法を教えるべく合同練習を考えたのだと土居トレーナーは言う。
「理想はマンツーマンでやることですけど、合同で週1回やるだけでもしっかりやる子はメチャメチャ体が変わりますよ」
色々な選手が集れば、同階級の、対戦する可能性のある選手が顔を合わすこともある。「あの選手が来るんですか?」と嫌な顔をする選手もいるが、土居トレーナーは全く意に介さない。
「『体力で上回って勝つ』なんて考えてたら世界チャンピオンにはなれないですよ。体力はあって当たり前で、勝負は技術とか精神力。だから文句を言う子には『自分一人勝ってもしょうがないでしょ? 全体のレベルが上がっていかないと格闘技界自体がなくなるよ』と言ってます」
土居トレーナーは様々なジャンルのスポーツ選手の指導や体力測定に関わっている。その経験から感じるのが、格闘技界の「フィジカルに対する意識の低さ」だという。
「怒られちゃうかもしれないですけど、キックボクサーは体力レベルも、フィジカルに対する意識も低いです」
魔裟斗の戦いぶりを褒められると土居トレーナーは複雑な気持ちになるという。
「魔裟斗選手はスタミナがあって、決勝戦でも動けて凄いね、と評価されるのは嬉しいですけど『プロならそれぐらい当たり前だ』と思わないと強くなれない、というのが僕の中にあります。その点でキックボクサーは甘いかな。MAXの外国人選手は骨格から違いますから、これでフィジカルを鍛えてきたらどうやって日本人は勝つんですか? 考え方が変わって、フィジカルの必要性がもっと浸透しないと日本人のチャンピオンは生まれないと思いますよ」
キック界に意識改革を起こすべく始めた合同練習。メニューはまだ基礎の段階だ。
「合同筋トレでやるのは格闘家になるための基礎を作るトレーニングで、魔裟斗さんがやってるトレーニングとは中身が全く違います。魔裟斗さんは一定レベルまで来ているので『これから何を目指すのか』という目的に合わせた、世界チャンピオンのためのメニューを組んでいますから」
しかし、魔裟斗といえども最初からハイレベルなメニューをこなせたわけではなかったのである。
「3年掛かってようやくですよ」
魔裟斗の試合を初めて見た時、背負うものの大きさに驚いた
土居進トレーナーの指導を受ける長島☆自演乙☆雄一郎や藤鬥嘩裟ら。大晦日については、「魔裟斗さんは“アスリート”の体です。見るとびっくりしますよ」 【(C)ゴング格闘技/村上一光】
骨折の影響で生じた左右の足の筋力差を解消し、戦える状態に持って行った。そして迎えた06年のMAX決勝大会、土居トレーナーは強い衝撃を受ける。
「トーナメントの厳しさが想像以上だったことと、魔裟斗さんが背負うものの大きさに初めて気づいたんです」
土居トレーナーはボクシングのプロライセンスを持ち、ボクシング会場には度々足を運んで東洋太平洋王者鳥海純のトレーニング指導を行なってきた。しかし、K−1は全く知らず、試合を生で見るのも初めてなら、ワンデイトーナメントの過酷さを目の当たりにするのも初めてだった。
その時、慣れ親しんだボクシング会場とはまるで違う雰囲気に驚き、K−1において魔裟斗がどれだけ大きな存在であるかを実感したという。
「一人の選手の勝ち負けがこんなに大勢の人を動かすのか、と驚きました。ボクシングのチャンピオンも見てますし、魔裟斗さんがチャンピオンだと聞いても同じ感じに思ってたら、テレビも入ってますし、反響も大きくて『こんなに違うんだ!』と。小比類巻選手に勝った時の会場全体の喜び方と、サワーに負けた時のみんなの落胆ぶりを見て『これは覚悟を決めてやらないと、責任重大だな』って思ったんです」
実際にトーナメントを見られたことは大きな収穫だった。
「魔裟斗さんの能力が上がってるのは確かだったんですけど、他の選手との比較が出来なかったんです。でも実際に見て『頑張れば勝てるな』と思いましたし、トーナメントは想像以上のキツさでしたけど『トーナメントで勝つには筋力よりスタミナ』という方針も立てられたので、すぐ次のメニューを考え始めたんです」
ところが、肝心の魔裟斗は準決勝敗北のショックから「辞める」と言い出した。
(文=茂田浩司、写真=村上一光)
※この後も、初めて土居トレーナーが明かす魔裟斗の挑戦の真実は、発売中の『ゴング格闘技』にて、ご覧ください!
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『ゴング格闘技』2月号(12月22日、火曜日発売)
『ゴング格闘技』2月号は12月22日(火)発売! 引退試合、デビュー戦、対抗戦と並ぶ中、いったい誰が大晦日の主役に躍り出るか!? 【(C)ゴング格闘技/林和也、舟橋賢】
『ゴング格闘技』2月号の主な内容
・総力特集「大晦日を読む」
Dynamite!! PREVIEW
魔裟斗引退試合&石井慧MMAデビュー
どこまでやれんのか!? の
DREAM×戦極対抗戦も徹底ガイドします!
☆独占インタビュー
石井和義館長、真相激白60分!
本格復帰と格闘技界大同団結、そして、魔裟斗を語る。
☆先駆者の孤独
土居進トレーナーが見た「カリスマ・魔裟斗」の実像。
☆大晦日、ココが見所! 其の一
立ち技委員会が読む「魔裟斗vsサワー」
「MAXとは異なる“5R”の意味とは?」
(解説:鈴木秀明、大宮司進、山口元気)
☆柔道王の憂鬱──。
吉田秀彦「國保社長がやるから付いていった」
小見川道大「高谷はやりたかった相手。“くそったれ劇場完結篇”です」
☆吉田を相手に総合格闘技デビュー
石井慧、海外武者修行の成果は?
☆大晦日、ココが見所! 其の二
MMA委員会が読む「石井慧vs吉田秀彦」
「石井は柔道時代と同じく××××で勝つ?
柔道金メダリスト対決は打撃戦を予想!」
(解説:菊田早苗、高阪剛、高瀬大樹、中井祐樹、吉鷹弘)
☆どうなる!? ライト級日本人頂上決戦
本当に、やれんのか!? 川尻達也×青木真也 インタビュー
☆2009年12月12日、午後2時台の青木真也。
☆川尻達也は強く訴えていた──「青木君と試合がしたい」
☆大晦日、ココが見所! 其の三
MMA委員会が読む「青木真也vs川尻達也、vs廣田瑞人」
「“過去最強”の敵を迎えた青木真也。
川尻はMAXルールの“あの技”が有効!?」
☆大晦日、5年ぶりの欠場へ
桜庭和志
「戦極との対抗戦? 三崎選手? 正直、ピンと来ないですね」
☆桜庭、秋山、“猛獣”を語る。
三崎和雄 with 川崎タツキ「どん底から見る夢」
☆遥か先を走っていた後輩、桜井“マッハ”速人と対戦!
郷野聡寛「毎日の積み重ねのなかの、大晦日」。
☆高谷裕之の名参謀、語る。
チーム黒船・山田武士トレーナー
「カード決定が遅すぎる。このままじゃ日本格闘技界は滅びる」
☆戦極フェザー級王者、“神の子”と対戦。
金原正徳
「KID選手が過ごしてきた時間と、僕がやってきたことは全く違う」
☆大晦日、ココが見所! 其の四
MMA委員会が読む「DREAMvs戦極 対抗戦」
「KIDvs戦極王者、“秒殺KO”勝ちはどっちだ?
マッハvs郷野は……」
☆谷川貞治 FEG代表
12・31『Dynamite!!』カード発表が遅れた真相と対抗戦を語る。
「DREAMvsSRC対抗戦には××××が足りない!」
☆緊急直撃インタビュー
國保尊弘 J-ROCK代表
「なぜ私はSRCを去ったか」
・特集 大晦日の居場所。
☆UFC戦績、1敗1分──宇野薫の2009年。
「それでもUFCを選んで、
間違いじゃなかったと思ってます」
☆魔裟斗のいない──佐藤嘉洋
佐藤嘉洋がいる、2010年K−1 MAX
☆日沖発、生き方と住き方。
「今は言葉に出しませんッ」
☆パンクラスismから新王者誕生記念!
北岡 悟×金井一朗
「いま初めて明かされる“キムチマン”の真実 !?」
ほか、今月も盛りだくさんの内容です!
『永久保存版・魔裟斗 1997-2009』
『永久保存版・魔裟斗 1997-2009』も同時発売中! 引退試合に向け“ゴン格”がデビューから追い続けた魔裟斗ストーリーを掲載。新たな記事も追加し、魔裟斗のすべてを特集した 【(C)ゴング格闘技/和智正夫】
☆魔裟斗が選んだ孤高の挑戦。
[ルーツ探訪]
☆魔裟斗が、育まれた場所。1994−2005
1997-2001“魔裟斗”の誕生。
[ニッポン重量級&中量級エース対談]
☆魔裟斗×武蔵 頂点はすぐそこにある。
[ボクシング×キック 革命児対談]
☆魔裟斗×畑山隆則
汗臭いのはもういいよ。僕らはオシャレで、カッコよくて、面白い試合をしよう!
[UFC×K−1“メジャー”対談]
☆魔裟斗×宇野薫
Major Leaguer になろう!
2002 ライバル・ストーリー
[“生ける伝説”からのメッセージ]
☆魔裟斗×藤原敏男 日本に君の敵はいないよ。
[試練を越えて]
☆初めての挫折、初めての涙
「今は、負けて良かったかもしれないって思ってる」
2003 悲願、なる──。
[キックか、K−1か?]
☆魔裟斗×小林聡 犬猿の仲? それとも……。
[レジェンド対談]
☆魔裟斗×桜庭和志 千両役者のたたずまい。
[K−1 WORLD MAX 世界王者の独白]
☆歓喜の裏、その真実――
「負けたら引退、していたと思いますよ」
2004 死闘、再び。
[王座陥落]
☆「これまで以上の練習をするか、戦い方を変えるかのどちらかです」
[大晦日の名勝負]
☆「KID戦のローブロー後にケビンさんから
『親心なんか出すなよ』と言われて気持ちを取り戻せました」
2005-2006 試練を越えて。
[沈黙を破る]
☆「もう辞めようと思っていた」──魔裟斗を動かした一通の手紙。
2007 蘇る銀狼。
[格闘家が帰る場所]
☆思い出す5年前の言葉──「幸せな家庭が作れればいい」
[進化する拳]
☆「面白い試合をしますよ。格闘技界を盛り上げないと」
2008 王座奪還。
[ロングインタビュー]
☆「本物の戦いを見せていかないと生き残れないんですよ」
[死闘の果てに]
☆5年ぶり王座奪還の舞台裏 魔裟斗のチャイ・スー“強い心”
[そして人生は続く]
☆魔裟斗×井上雄彦(『スラムダンク』『バガボンド』『リアル』)
「実戦を生きるということ」
2009 誰が為に鐘は鳴る。
[ラストMAXドキュメント]
☆魔裟斗はどこで川尻達也を見切ったのか?
[FINALインタビュー]
☆最強最後の魔裟斗――
☆K−1MAXを創った男。魔裟斗、名言集
☆魔裟斗、全63試合(+5エキシビション)の軌跡。
[巻末エッセイ]
☆「いつも前のめりに──」
その他、魔裟斗秘蔵写真・エピソードが満載。
『永久保存版・魔裟斗 1997-2009』は、絶賛発売中です!
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