バルセロナの忘れられない1年=FIFAクラブワールドカップ UAE 2009
自らの呪縛と戦うことになるバルセロナ
クラブ世界一となり、選手やスタッフに胴上げされるグアルディオラ監督 【Photo:MEXSPORT/アフロ】
そう、バルセロナは今後、自らの栄光と戦っていかなければならない。クラブW杯で優勝したことで、“ブラウ・グラナ”(青とえんじ。バルセロナの愛称)はこの年、前人未到の6冠を達成した。スペイン国王杯、リーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズリーグ、UEFAスーパーカップ、スペイン・スーパーカップ、そしてクラブW杯。バルセロナは名実共に世界一のクラブとなり、センセーショナルな1年が間もなく終わりを告げる。
南米チャンピオンとのクラブW杯決勝は、歴史に残る死闘となった。89分までバルセロナは1点のビハインドを負っており、この日途中出場したカンテラ(下部組織)出身のペドロが、終了間際に起死回生の同点ゴールを挙げたのだ。そして、延長後半の110分、メッシがダニエウ・アウベスのクロスを胸で押し込み、2−1と勝ち越した。
グアルディオラはこの決勝で、自身が単にスター軍団を率いる若き指揮官というだけでなく、鋭い観察眼を持った偉大なる監督であることを証明してみせた。後半開始とともにピッチへ送り出したペドロが同点弾。83分には、同じくカンテラ出身の若きジェフレンの投入という驚きのさい配を見せた。これが結果として吉と出て、延長に入るとフレッシュなベネズエラ出身のウインガーが、度々エストゥディアンテスのサイドを切り崩した。この日、名将アレハンドロ・サベージャ率いる南米王者が、組織的な守備で試合の主導権を握っていたことを考えれば、グアルディオラの見せた選手交代は、決して簡単なものではなかったと言える。
南米王者のバルサ対策は完ぺきだったが……
この試合を見たエストゥディアンテスは、完ぺきとも言える“バルセロナ対策”を施して決勝に臨んだ。バルセロナの生命線でもある中盤からのパスワークを素早いプレッシングで封じ、相手にスペースを与えなかったのだ。そして、アトランテ戦をお手本にしたかのように、前半37分にはマウロ・ボセッリがバルセロナのすきを突いて先制。ブラウ・グラナには、準決勝よりはるかに重い1点がのしかかった。南米王者の実力は、メキシコのチームとは比べ物にならないからである。ペドロのゴールがなければ、優勝トロフィーが彼らの手から滑り落ちるところだった。
だが、ファン・セバスティアン・ベロンを中心とするエストゥディアンテスは、南米の伝統に忠実というべきか、先制すると守備ラインを下げ、相手にボールを明け渡した。ペドロの投入でメッシを中盤にコンバートしたバルセロナは、ここから徐々にリズムを取り戻す。普段であれば高い決定力を誇るイブラヒモビッチがこの日は不発だったこともあり、なかなかゴールは生まれなかったが、前半から飛ばしたエストゥディアンテスの運動量が落ちるのは必然でもあった。延長戦に入ってからは一方的にヨーロッパ王者が攻め込む展開となり、最後はメッシがゴールネットを揺らした。