長州力が語るUWFインターとの禁断の対抗戦=Gスピリッツ発

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【(C)Gスピリッツ】

 平成の日本マット界を象徴する「東京ドーム大会」は、長州力の手によって築きあげられたと言ってもいい。1990年代に新日本プロレスの現場監督して、過激な仕掛けを連発した。
 95年〜96年に3大会連続でドーム興行のメインテーマとなったのは、UWFインターナショナルとの禁断の対抗戦。これが長州体制最大のヒット作だろう。長州はどんな意識でこの対抗戦に臨んでいたのだろうか?

「厳しい言い方をしたらね、交流戦っていうのをなぜ打ち出すんだって。それは違うだろ。みんなイキイキして交流戦って。じゃあ、その後に何が起きるんだって」

長州「マスコミやファンに伝わらないわけがない」

【(C)原悦生/Gスピリッツ】

――長州さんの中では他団体の絡みは交流戦ではなくて、あくまでも対抗戦であると

「俺はね、試合をやるにあたって交流戦っていうのは頭にない、うん」

――WARとの対抗戦では、新日本の象徴であるアントニオ猪木が天龍さんに敗れるという衝撃的な試合もありましたね

「でも、そこには繋がったものがあるよな。やっぱり面白かったのはUインターだよね。ドームの凄い興行って言ったら、Uぐらいじゃないかな」

――それまでにUインターとは4vs4の巌流島決戦が流れたり、Uインター側から1億円トーナメントへの招待状が送られてきたりと、犬猿の仲だったじゃないですか。そうした経緯を考えると、よく同じリングに上がるところまで話が進んだなと

「だからまあ、マスコミも半信半疑だったろうけど、最終的には俺と高田(延彦)の電話一本で決まったんだから。よく高田が乗ってきたなっていうのはあるよ。でも、あれは高田の方だけがまな板に乗ったんじゃなくて、こっちだってまな板の上に乗ったんだよな。やる側にそういう緊張感があるんだから、それがマスコミやファンに伝わらないわけがないじゃん」

――実際に、試合も殺伐としていましたからね

「ああいうぎこちなさは、ショッパイのとは違うんだよね。当然、客もスイングしないだろうって思っているわけだし。だから、ああいう形で良かったと思うよ」

――Uインターとの全面戦争第1弾となった95年10月9日の東京ドーム大会では、長州さんは安生選手と一騎打ちを行いました。近年、流行語になった"俺をキレさせたら、大したもんだよ"というコメントが出た一戦です

「お互いプロで、リングの中で何をすべきかっていうプライドを持ってやったよね。今振り返ってみたら、他愛もないもんだよ、あの試合は。でも安生も、よくぞあそこの舞台まで上がって来れたと思うよ」

――その後の対インディーというのは、“俺から言わせりゃ、あんなもんはプロレスじゃない”と長州さんがインディーを批判したのが発端でしたね

「あれはね、俺にとっては“メジャーとインディーは、こういう違いなんだよ”っていうのが、ひとつのテーマだったね。ただ、それだけだったんだよ。“なぜお前たちはインディーって言われるのか”っていうね。やっぱり違いはあるんだよ。なぜ、俺がハチの巣を突くようにインディー批判したかっていうとね、その違いないと成り立たないんですよ、俺が作っている感覚は。基本的な部分で、“じゃあ、お前たちと俺たちと、どうやって動かしてプロレスを盛り上げていくのか?”っていう、そこんとこを考えたら……。確かに違いがあるんだから、その違いを突っつくしかないんですよ。これは俺個人の感覚だけどね」

――大日本プロレスの小鹿社長が噛みついて来た時には“最初にターザン後藤なんかに口火を切ってほしかったな。釣る獲物を間違えた”と言ってましたけど、小鹿さんが名乗りを上げてきたのは想定外だったんですか?

「なあ(苦笑)。だけど、そういうお互いの“ふざけるな!”っていう意識から始まったマッチメークだったからね。その“ふざけるな!”というものをリングに上げるまでは、大変な作業だよ。で、そういう意識で彼らは実際に上がってきたわけだから、観てる側には“インディー、負けるなよ!”っていうファンもいっぱいいただろうしね。だから、俺のはひどい作り方だと思うよ」

――例えばWARとの対抗戦の時は“天龍以外はいらない!”と言ったり、Uインターとの全面戦争では“Uを消してやる!”と宣言したり、常に長州さんは上目線、高圧的な姿勢で臨んでいた印象があります

「その団体で頑張っている人間にしてみれば、“ふざけるな!”って思うだろうし、それは今リキプロが言われるのと一緒だからさ。そういうものをリングに持ち込んでいくっていうのが、俺の仕事だったよね」

※この文章は『Gスピリッツ vol.14』(12月16日発売)に掲載されているインタビューの一部を再編集したものです。本誌では、長州の独自のプロレス論&東京ドーム論や現在のプロレスについても語っています。

プロレス専門誌「Gスピリッツ」vol.14

【(C)Gスピリッツ】

12月16日発売/発行・辰巳出版

■総力特集
東京ドームの光と影 Part2
[インタビュー]なぜ90年代の新日本は“爆発”したのか?
長州力

新日本vsUインター全面戦争が大ヒットした理由
金原弘光

水面下で繰り広げられた猪木との戦い
渡辺秀幸(元・新日本マッチメーク委員会委員長)

日本テレビから見た「社長・三沢光晴」
今泉富夫(プロレス中継・元プロデューサー)

ブッカーが振り返るSWSの栄華と最後
ザ・グレート・カブキ

藤原組で実践された「秒殺の格闘技」
高橋和生

[コラム]幻のUFC東京ドーム大会 北尾vsグレイシー

■ロングインタビュー
石川孝志「俺のスモーピオン人生、悔いなし」

■特別企画
追悼――剛竜馬 波乱の人生を新間寿が振り返る

■回想録
全日本女子プロレス 松永高司会長のかけめぐる青春

■実録・国際プロレス
長谷川保夫リングアナ

■クローズアップ
AWA概史 バーン・ガニアの時代

■歴史探訪―2
戦前の英国プロレス盛衰記「白紙の20年」と「オールイン・レスリング」

■ドクトル・ルチャの中級講座
“メヒコの元祖・噛みつき魔”カベルナリオ・ガリンド

【シリーズ】
『アリーバ・メヒコ』哀愁のスーパーヒーロー伝
帰りたかったウルトラマン
盗作ルチャドール見本市
『世界・ふしぎ再発見』第14回 タイ編
『格闘美術写真館』第14回 超人
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