「雑草集団」JR九州が初優勝=第36回社会人野球日本選手権大会総括
社会人19年目のベテランが史上初の快挙
37歳のベテランながら大会史上初のノーヒットノーランを達成した三菱重工神戸の木林 【島尻譲】
「序盤は寒さのせいで指先の感覚が悪かったようで制球を乱していたが、さすが経験のなせる業だね。毎年、フィーリングでスライダーの曲がりが変わるんだけど、ことしは打者の手元で小さく曲がるのが抜群で、1年を通して安定していた。僕は5回くらいから達成すると思っていましたよ」と、大川広誉監督が絶大な信頼を寄せる社会人19年目のベテラン左腕。
「今日はスライダー頼みだった。まぁ、金属バット時代も経験しているので、甘いところにさえ投げなければ長打はないという自信はあった。野球人生でノーヒットノーランができるとは考えてもいなかった」
中学時代までは外野手で、藤井寺工高時代に左投げだからという理由で始まった投手人生の大きな勲章に最高の笑顔を見せる。また、自身が社会人野球の世界に飛び込んだ時に生まれて来た18歳下の捕手・八木賢吾のサインには、
「まだ打者がスタンスの位置を変えたのとか気付かない時が多いですよね。その辺は八木だけでなく、若い選手たちに自分の経験で教えてあげられたら」と首を振ることも多いが、ベテランならではの味わいも見せてくれた。
なお、この試合で投げ合ったのは木林と同い年(37歳)である社会人15年目の左腕・岡崎淳二だった。岡崎も初回に1点を失ったが、毎回の10奪三振の好投。
「組み合わせが決まった時に自分から岡崎に電話して“お手柔らかに”って(笑)。岡崎との投げ合いだったというのも大きかったかも知れない。感謝ですね」
快挙達成にライバルへ敬意を表するのも忘れなかった。
今大会を盛り上げた8強進出の大和高田クラブ
また、打線は4番・柿元庸平が初戦の日本通運戦で本塁打こそ放ったが、基本的にはつなぎの打線。昨年限りで活動休止となったデュプロから転籍の和田匡永を筆頭に、逢坂真吾、藤田利樹、野々村順、佐川貴啓らが勝負どころで快打を放ったのが印象的だった。
「2年前、初出場した時は出られただけで満足(東京ガスに初戦敗退)みたいなところがあった。でも、今回は準々決勝で負けて悔し涙を流している。企業チームと互角に戦えるということが分かったので、来年はもっと上を目指せるチームになると思う」
エース・池邉明英はチームのさらなる成長に手応えを感じていた。
また、2年前の初出場時も応援団が元気賞(応援団表彰)を受賞したが、今大会でもチームを支援する大和ガスだけにとどまらず、地元のファンや少年野球チームなどを数多く動員。祭りの掛け声でもある“やーやどー”は応援スタンドを熱狂的に盛り上げ、今大会も文句なしで元気賞を獲得した。閉会式では鍛冶舎巧・大会委員長から「大和高田クラブに現状の社会人野球の活路を教えてもらった」と、大絶賛の言葉が掛けられた。
全体的に低調だったドラフト指名組
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