ビエリ、惜しまれずに去った元世界最高FW=突然の引退宣言、そしてその後

ホンマヨシカ

いったいビエリは何がしたい?

イタリア代表のストライカーとして活躍したビエリ。1998年のワールドカップ・フランス大会では5得点を挙げた 【Getty Images】

 ところで、ビエリの引退発表はテレコム(イタリアの旧国営通信)が引き起こした電話盗聴事件に関して裁判中のミラノ裁判所で行われたものだ。
 テレコム電話盗聴事件とは、テレコムが何人かの政治家に対して盗聴していたことで逮捕されたセキュリティー責任者の取り調べの過程で、テレコム社長でインテルのナンバー2でもあるトロンケッティ・プロベーラの依頼で幾人かのインテル選手に対しても電話盗聴をしていたという事件だ。
 ビエリのほかに盗聴の被害者になったインテル選手は、夜の遊び仲間でもあるロナウドや、後に移籍したチェルシーでコカイン使用容疑で長期出場停止処分になったアドリアン・ムトゥらがいる。

 引退後のビエリだが、何をするのだろうか? いや、何がしたいのだろうか? 彼の性格を思うと、監督やどこかのクラブの役員等に就任するとは考えられない。ビエリ自身、昨年5月にペイTVのインタビューで引退後について「監督? 何とも言えない。すべての監督はストレスを感じて疲れているように見える。ジャーナリスト? 自分の同僚の悪口は書けないから僕にはできない」と明らかにしていなかった。
 唯一確かなのは、現在進行中の盗聴事件の裁判や、ビエリが最近はまっているポーカーの大会、それにこれまでのようにゴシップ誌上で、これからも彼の名前が見られること。かつて世界最高峰のストライカーとして名を轟(とどろ)かせたピッチ上に、彼の姿はない。

<了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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