ビエリ、惜しまれずに去った元世界最高FW=突然の引退宣言、そしてその後
「プレーをする意欲がなくなった」
引退を決意したビエリ。現役最後のクラブはアタランタとなった 【Getty Images】
それほど僕にとってビエリの印象が過去のものとなっていたのだ。イタリアのマスコミやファンからもビエリの引退発表を惜しむ声がほとんど上がらなかったたことをみても、僕のビエリに関する印象は多くの人も感じていたようだ。
実際に彼の最近の経歴を調べてみても、インテルでの最後のシーズン(2004−05シーズン)以降は、再三負傷に見舞われるという不運もあったにせよ、ベンチに座っている時間の方が長く、4シーズン(ミラン、モナコ、サンプドリア、アタランタ、フィオレンティーナ)のリーグ戦でトータル57試合出場し、14ゴールという寂しい結果しか残していなかった。全盛時に見られた、強引に力でねじ伏せるような、まるで獣を感じさせるようなプレーとゴールが見られなくなって久しくなっていた。
同い年でもある親友のフィリッポ・インザーギ(愛称ピッポ)が、常にサッカー少年のようなフレッシュさで、ミランのアタッカーとしてチャンピオンズリーグなどで活躍していることを思うと、その凋落(ちょうらく)ぶりはなんとも甚だしい。
突然の引退撤回?
これには2007年に30歳でサッカー選手を引退しているフランチェスコ・ココもビエリとともに契約するという信ぴょう性を疑うような話も付いていたのだが、ビエリのインテル時代の遊び仲間でもあったコリンチャンスに所属するロナウドや、同じくインテル時代の同僚で現在フラメンゴのアタッカーとして活躍するアドリアーノのいるブラジルのクラブへの移籍だから、十分にあり得る話だと思った人も多いだろう。
しかし、この移籍話はすぐにビエリ自身によって否定され、本人の引退意思が本物であることがあらためて強調された。昨シーズンまで所属していたアタランタとの契約を解消した後、いくつかの移籍話が浮かび上がっては消えていった。
今年の7月、イングランド・プレミアリーグのブラックバーンへの移籍話が上がったのをはじめ、10月初旬にはミラノ郊外の街ブスト・アルシツィオ(人口8万人あまり)のクラブ、プロ・パトリア(セリエC所属)への移籍話がうわさされたが、同クラブの会長自ら単なるデマ話と移籍を否定した。
このことで分かるように、常にテレビのショーガール等との浮名がゴシップ雑誌をにぎわし、サッカー選手として既に盛りを過ぎたビエリを獲得しようと本気で動くクラブは現れなかった。これらの出来事はビエリに引退を決意させる大きな要因となったことは間違いないだろう。中にはビエリのようにピークを過ぎたサッカー選手でも、情熱を失わずに下部リーグでプレーを続行する選手もいるが、ビエリには既にそこまでしてプレーするという情熱が冷え切っているようだ。