五味隆典「負けん気だけでここまで来た」=『ゴング格闘技』発
ジョー・ウォーレンのVTJ欠場が決まり、メインへの期待が高まる中、練習に励む五味隆典。現KOTCライト級王者と望む試合内容とは…… 【(C)ゴング格闘技/林和也】
──もう1カ月も前の話になってしまいますが、お誕生日おめでとうございます。
「ありがとうございます。僕も31歳ですね。もう無駄なことをする時間はないなと思います。今までは楽しくやってきたんですけれど、もうそろそろそういうのもどうかなって。自分が前に進むためには、いろいろなものを犠牲にしてでも強くならなければと思っていた十代の頃のように、もう一度気持ちを引き締める時かもしれません。昔に比べれば遊ぶ余裕も出来たり、格闘技で言えばある程度のことは達成しました。でも、少しでも今より力を上げたり、次の目標へ向けて対応できるようにしておくには、今まで繰り返してきたようなことは辞めておこうと。自分のプラスになることだけをしようと思っているんです。いい仲間、楽しい仲間と一緒にいて、ネガティブな人には近付かない。人生をいい方向へ進んで行きたいですね。20代の頃は引っ繰り返っていようが何をしようがいいんですよ。もちろん、40代の人生の先輩に言わせればまた違う意見があるんでしょうけれど、30代はくだらない失敗を繰り返さないようにしようと思っていますね。試合数だって減ってくるだろうし。元々、そんなに多くはないけれど。それは格闘技だけに限ったことではないですけれどね」
──より一層、身が引き締まったということですね。
「そうですね。去年30歳になった時はまだ、甘いところがあったんじゃないですかね。実感がなかったから。今まで通りに楽しくやろうと思っていましたけれど、今はもう進みだしました。これは何でしょう……30歳と31歳、1歳しか違わないのに全く違う気持ちになったんです。自分の方向性を見極めて行く時が来たのかもしれない」
──その方向性とは、格闘家としてだけでなく人生全てを含めたものなんですか?
「選手としての成功も大事ですが、それ以外のことを考えることも多くなりました。でも、“もっと頑張ってくれ”“もっと試合を見せてくれ”と言ってくれるファンの声には応えなければいけませんから、複雑です。選手としての活動や試合をやることは自分の中では当たり前のことですから、自分では何とも思わないけれど、ファンは違う目線を持っていますからね。“日本でやってくれ”という声もあれば、“海外でやってくれ”という意見もある。僕自身は身体を動かせれば充分なんですよ。何でもいいんです。スポーツをすることによってストレスを発散することが出来ればそれでいい」
──記者会見の時に話題となったプロサーファー転向宣言ですね。ファンからしてみれば、五味選手が格闘技をやめてしまうと思ったのではないでしょうか。
「今、追い込みで毎日練習をしていますけれど、海で波を見ているのもいいんですが、やっぱり激しいスパーリングを見ているのは面白いですね。いい波が来たようなもので、ワクワクします。若い子同士のいい練習は見ていて本当に面白い。残念なことにラスカルジムではなく、出稽古先の話なんですが(笑)。いい刺激になりますよね。ジムの話をすれば、11月から“頑張らない部”を作ろうと思っています」
──頑張らない部? 初心者クラスのことですね。
「とにかく集まって、ストレッチをやったり、組み合ったり抑え込んだり……怪我がないように、選手ならここから頑張らなければいけないってところで頑張らず、楽しく長続き出来るようなクラスにしようと思っています。少し老若男女、いろいろな方が来られるようにすることも含めて、週に何時間かやっていこうと」
五味「塩試合はお客さんも期待していないし、僕もやりたくない」
五味が「凄く重要な練習」と言うマススパーを繰り返し行なう。相手にはトニー・ハービーを想定してサイドキックなどを蹴らせていた 【(C)ゴング格闘技/林和也】
「今はまだ、一生懸命に前へ出てくれればそれでいいです。気持ちの優しい子が多いですからね」
──五味選手の教えで“相手に腹を見せるな”という言葉がありますね。それはどういう意味なのでしょう?
「要は相手に抑え込まれるなってことですよ。腹を見せて戦えないでしょう」
──では、柔術のガードポジションは……。
「それは違いますよ。あれは相手に足を見せているでしょう。それ、絶対に言うと思いました(笑)。横になって抑え込まれている状態と、ガードポジションは違うでしょう。まあ、ジムの話はまた今度。今は自分の試合のことで頭がいっぱいです」
──では、夏には恒例の菅平合宿にも行かれたんですね。今年はどうでした?
「今までは割と試合直前が多かったんですが、今年は試合までだいぶ時間もありましたし、軽く練習をしてきました。涼しいところで練習をしよう、くらいの感覚です」
──大学レスリング部の合宿ですから、顔ぶれもだいぶ変わったのではないですか?
「そうですね。最初に行った時から二周りしています。でも、変わらずに楽しく。レスラーはみんな兄弟ですから。行けば喜んでくれるし、リラックスした環境で練習が出来ますからね」
──今年も走り込んで、スタミナはバッチリなんじゃないですか?
「いや、その頃の練習成果はもうないですよ(笑)。ただ、現役バリバリの学生レスラーたちとやらなければ鈍るし、やれば楽しいですし」
──毎年参加されているのは、自分の再確認的な要素があるんですか?
「再確認というよりも、習性に近いんじゃないですか。毎年行っておかないと気が済まない、というような。記者の人たちだって、今年も大晦日はさいたまか有明に行くでしょう(笑)。それと一緒です」
声を挙げてサンドバッグを蹴る五味。試合2週間前の追い込む練習を、ゴング格闘技だけに公開してくれた 【(C)ゴング格闘技/林和也】
「この時代にバリジャパをやるのは、凄くエネルギーのいることだと思います。今はイベントがいっぱいあって、昔のように修斗のリングだけを目指して日本へやって来るという時代とは違いますからね。日本の総合格闘技のビッグイベントと言えばバリジャパだったんじゃないですか?」
──そうですね。PRIDEもまだ誕生していなかったですし。
「そう考えると歴史のある、日本の総合の原点になるイベントですよね」
──坂本さんたちが頑張った甲斐あって、いい相手(現KOTCライト級王者トニー・ハービー)を用意してくれました。
「そうですね。今の状況から考えると、いい相手だと思います。最近の言葉で言うと“塩試合”でしたっけ(笑)。そんなものはお客さんも期待していないし、僕もやりたくないですからね。だから動きのある選手がよかった」
(聞き手=熊久保英幸(GBR)、写真=林 和也=写真)
※この後も、バリジャパ直前の五味が心境を吐露するロングインタビューは、発売中の『ゴング格闘技』にて、ご覧ください!
『ゴング格闘技』12月号は、10月23日(金)発売。表紙は、DREAMライト級新王者・青木真也。特集は各界の著名人が語る「大晦日を前に、そろそろ格闘技のミカタ、変えてみませんか?」 【(C)ゴング格闘技】
http://www.eastpress.co.jp/
表紙は、DREAMライト級新王者・青木真也。特集は各界の著名人が語る「大晦日を前に、そろそろ格闘技のミカタ、変えてみませんか?」
☆巻頭スペシャル[沈黙を破る]
バルセロナにて──、北岡悟。
☆三崎和雄が語る、
グレイシーと護身論。
■特集
大晦日を前に
そろそろ格闘技のミカタ、
変えてみませんか?
★MMA(総合格闘技)をもっと愉しむための五箇条。
◎案内人◎青木真也
☆MMA維新──革命前夜。
DREAMライト級新王者=青木真也
「僕らのような新しい世代の選手が
新しい価値観を作ろうとしている」
☆格闘技未経験からのMMA進化論。
川尻達也×大沢ケンジ
徹底討論! MMAの行方
☆VTJのミカタ。
転がり続けてきた10年の集大成。
第3試合からメインイベントへ!
五味隆典
「負けん気だけでここまで来た」
☆「なぜ一本なのか?」を
初めてクソ真面目に60分間語る。
桜庭和志の勝負論。
「“負けたくない”が“一本を取ってやる”に
パッと切り替わる。その中間は僕には無いんです」
☆11.7 戦極 第十一陣で小見川道大と対戦!
打・倒・極の回転、そして──心・技・体のリンク
日沖発的、総合格闘技論。
「小見川戦は“ただのワンマッチ”です」
☆トップアマからのMMA挑戦論。
小見川道大(戦極フェザー級GP準優勝)
×
宮田和幸(DREAMフェザー級)
「土浦日大で育まれたクソッタレ魂」
☆喧嘩番長のファイター成長論。
高谷裕之
「再戦しないと始まらない。
それしか気持ちの収めようがない」
☆オランダで直撃! ゴールデングローリー
10周年記念大会直後のアリスター・オーフレイム
「明日、明後日と練習して、3日後には大阪へ向かうよ」
☆PRIDE→UFC
世界最高峰の移動は何をもたらしたか?
技術変遷でMMAを再考してみる
★トップ柔道家、MMAを生きる。
2.6 UFC109か、2.21 UFC110で
ミドル級に初挑戦する
ヴァンダレイ・シウバと対戦!
秋山成勲
「柔道は一度、捨てました」
☆大晦日、吉田秀彦戦に向けた特訓とは?
石井慧は今──、筋肉を解(ほど)いています!?
☆アテネ五輪柔道銀メダリスト
総合デビュー戦を語る。
泉 浩
「無謀と思われても仕方ない。
みんなが想像するような
戦いをしたくなかったんです」
★代表のミカタ。
☆日本発MMAのミカタ。
【DS対談】“頭文字D”が見せるそれぞれのケージ
佐伯代表が大晦日のカードに爆弾提案!
佐伯繁 DEEP代表
×
笹原圭一 DREAMイベントプロデューサー
「日本人はもっとリングに“誇り”を持つべきだ」
☆大晦日、代表のミカタ。
谷川貞治 FEG代表
青木真也、桜庭和志のカードはセンスに自信あり
「僕にしかできないサプライズも今年はあります!」
☆ジョシカクのミカタ。
ジョシカクよ、何処へ行く?
ヴァルキリー・スタッフ&ジョシカクのご意見番
長尾メモ8
「“女子だって普通の総合になるじゃん”
──それが古くて新しい発見です」
☆格闘技、メデイアのミカタ。
松原隆一郎が格闘技界の問題を斬る
教えて、教授! 第31回・特別篇
「DREAMとテレビ局は米国的な株主資本主義
よりも日本企業のように長期的な経営を!」
★K−1をもっと愉しむための五箇条。
◎案内人◎山本優弥、立ち技委員会
☆10.26 K−1 WORLD MAX −FINAL−
山本優弥with尾下正伸トレーナー
“精密機械(ペトロシアン)”を討て!
☆反則王子? 暴言大王?
KIDを倒した男攻略法とは
渡辺一久の“リアル”。
☆狂拳、走る!!
11.23 Krushライト級GP、いざファイナルへ
竹内裕二の「秘密トレーニング」に迫る!
☆ゴンカク立ち技委員会のK−1のミカタ。
優弥vsペトロシアンで「脱・膠着試合」!
K−1の中の“真の闘い”とは?
今こそムエタイの“闘いの掟”を学べ!
★キック&ムエタイをもっと愉しむための五箇条。
◎案内人◎藤原あらし
☆最初で最後の“切り裂き魔”引退試合、感想戦
藤原あらし×ワンロップ・ウィラサクレック
「三度の死闘を超えた強敵(とも)」
☆新旧キック女王が語る、ジョシとムエタイ
“伝説のキックの女王”
熊谷直子
×
“16歳の世界王者”
神村江里加
☆格闘技雑誌初!
日本人ムエタイギャンブラー・佐々木功輔が明かす
ムエタイ最大の難問・採点方法の謎に迫る!
☆6年ぶりの再起戦で気迫の勝利
90年代のスーパースターいまだ健在なり。
立嶋篤史「抗−あらがう−」
★グラップリングと柔術をもっと愉しむための五箇条。
◎案内人◎高島学
☆アブダビコンバツト世界大会、バルセロナ現地取材!
ADCC 2009 BARCELONA REVIEW
☆確かに、世界とやりあった──
組み技世界最高峰、アブダビを
八隅孝平と中村K太郎が振り返る!
☆−65.9kg級優勝ハファエル・メンデス インタビュー
「20歳、柔術王子の次の目標はムンジアル制覇」
☆−76.9kg級優勝 パブロ・ポポビッチ インタビュー
「柔術+レスリングでも、グラップリング一筋」
☆ADCC−88kg級&無差別級 2冠王者、日本上陸間近!?
ブラウリオ・エスティマ インタビュー&テクニック
「僕のMMAデビュー戦は
日本の大晦日かもしれないよ」
ガウヴァオン、シャンジを極めた“横三角”とは?
★武のミカタ。
☆帰ってきた、コムロック!
小室宏二×増田俊也
「僕にとって道衣の袖は、
バットに匹敵する武器です」
☆歴代の強豪たちが語る新武道「空道」のミカタ。
史上最多の58カ国参加!
総合武道「空道」の世界大会迫る──
11.14〜15 ニッポン大ピンチに燃えよ!
山田利一郎/五十嵐祐司/岩木秀之/山崎進/長田賢一
★師弟対談
前WECバンタム級王者×郷野、トンプソンに連勝モヒカンファイター
ミゲール・トーレス×ダン・ホーンバックル
「試合前にリングで煙を焚く意味は……」
ほか、今月もゴン格は盛りだくさんな内容でお届けします!
http://www.eastpress.co.jp/
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