松坂が手にした収穫の多い黒星=新バッテリーでの2つの変化
ヤンキースとの伝統の一戦
ヤンキース戦で7回を6安打1失点と好投したレッドソックスの松坂 【Getty Images】
レッドソックスの先発メンバーがベストではなかったこともあるだろう。ヤンキースの先発投手はエース左腕のC・C・サバシア。だが、テリー・フランコーナ監督は、休養などを理由に、右の大砲ジェイソン・ベイを先発から外すなど、3人の控え選手を先発させた。対するヤンキースは、ホルヘ・ポサダが先発から外れただけ。といっても、先発マスクをかぶったホセ・モリーナは松坂大輔に対して11打数5安打、打率4割5分5厘と相性がよく、ベストメンバーを組んだと言えるが、松坂は「僕が考えていたのは、チームが勝つことだけ」と、普段と変わらない気持ちで先発マウンドに上がった。
右打者へのチェンジアップ
レッドソックスの先発マスクはシーズン途中にインディアンスから移籍してきたビクター・マルティネス。松坂とバッテリーを組むのはこれが初めてだったが、この新バッテリーによって、松坂の新たな配球が生み出された。
5回、松坂は無死満塁のピンチを迎えたが、4番アレックス・ロドリゲスをキャッチャーゴロに打ち取ると、続く松井秀喜はキャッチャーファウルフライ、ニック・スウィッシャーもサードへのファウルフライに切って取り、無失点で切り抜けた。
「(ロドリゲスを)打ち取ったボールはチェンジアップ。あの場面、満塁になったあとは、A・ロッド(ロドリゲス)にしても、松井さんにしても、そこまで苦手としているわけではないので、十分、抑えられると思って投げていました。メンタル面では、ランナーがいる時もいない時も、特に変わりはなかったですね」
ロドリゲスも松井も、打ったのは、いや、打たされたのは初球のチェンジアップ。松井は「甘いところから外に流れていくチェンジアップ。手が出てしまった」と振り返ったが、驚かされたのは、右打者に対するチェンジアップだ。これまで、松坂のチェンジアップといえば、左打者に限ったものであったが、この日は違った。捕手が変わったことをきっかけに、ずっと封印していたものが解かれたのだ。
「試合前のブルペン、それにブルペンに入る前も、ボールの使い方など簡単な打ち合わせをしましたけど、チェンジアップに関しては、(マルティネスが)使えると判断したんじゃないですかね」
松坂の口調はサバサバとしたものだったが、マルティネスの“押し”がなければ、試合で投げることもなかったことだろう。とにかく松坂はこの試合で、これまで使ったことのなかった引き出しを使ってみた。そしてそれが使えるという好感触を得たようだ。松坂はこう続けた。
「右バッターに、チェンジアップをよく使った、使えたことがそれ(新たな引き出し)にあたるかもしれないですね」
シュートを多く投げる配球
「全体的に、球の走りも変化球のキレも(これまでと)違って、奇麗なストレートはほとんどなかったですね」
この日、松坂とマルティネスのバッテリーによって生み出されたものは2つ。シュートを軸にした投球と、右打者へのチェンジアップ。この日のマックスは93マイル(約150キロ)だったが、全体的にスピードが90マイルと抑えめだったのは、シュートを軸にした結果と影響だろう。ヤンキース打線に対し7回6安打1失点。黒星は喫したが、収穫の多いマウンドだったに違いない。
「チームは負けてしまいましたけど、(ピッチングは)悪くはなかったと思うので、この先のためにつながるピッチングだったと言いたいですね」
レギュラーシーズンでの登板はあと1回。そのあと、プレーオフのマウンドが控えている。
<了>
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