力強いストレートに見る松坂の完全復活
屈辱のブーイングから約3カ月
約3カ月ぶりのマウンドで好投し、スタンディング・オベーションに応える松坂 【写真は共同】
力強いストレートを軸にした投球
9月15日、フェンウェイ・パーク。相手は、プレーオフの地区シリーズで対戦する可能性が高いエンゼルス。松坂にとって過去の対戦成績が決していい相手ではなかったが、それよりも、松坂自身がどんなボールを、松坂らしい力のあるストレートを投げられるか、というところに注目が集まった先発マウンドだった。
初回、松坂は先頭打者ショーン・フィギンスに対してストレートを続けた。93マイル(約150キロ)、93マイル、94マイル(約151キロ)……。結果的に、2ストライクと追い込んでから四球で出塁を許したが、5月、6月の松坂大輔とは違った。ジェイソン・バリテック捕手は、いつものように淡々と感想を述べた。
「何が良かったかというと、とても力強かったことだ。中でも、ストレートをどのようにして投げたいコースに投げ分けるか、それができた事が最も重要なポイントだった」
2回以降も、ストレートを軸にしたピッチングは続いた。回を追うごとに、投球フォームが変わっていった6月の松坂大輔ではなかった。
「今日に限ってはストレートだと思いますね。多少コースが甘くても、ファウルになったり、空振りが取れたりしていましたから。今日はストレートが良かったから、ほかの球種がそんなに良くなくても、うまくゲームを組み立てる事ができたのだと思う」
4回までエンゼルス打線を無安打に抑えた松坂だったが、両軍無得点で迎えた5回、先頭打者ケンドリー・モラレスに初安打を許すと、その後、1死二、三塁のピンチを迎えた。内野は、米国では通常通りの“定位置”で、1点はやってもいいという守備隊形。ここで松坂は気迫あふれるピッチングで攻めていった。
「状況的に、1点は仕方がない場面だったんですけど、相手ピッチャーも素晴らしいピッチングをしていたので、できれば1点もやりたくない、そう思って投げました」
ジェフ・マシスを、全球ストレートで3球三振に切って取ると、続くショーン・フィギンスに対しても、全球ストレート。最後は低めに伸びていったボールを空振りさせ、「理想的な結果」をもたらした。
「ピッチャーは誰でもそうだと思いますけど、ストレートが良ければ、ストレートが軸になって、他のボールも生きてくると思うので、常にそういう状態になると楽ですね」
気持ちは次へ「100%に仕上げていきたい」
「まだ、自分の中で100%の状態になっていないので、これから試合で投げていく中で、もう少し、隙間を埋めていくというか、100%に近い状態に仕上げていきたいですね」
ところで、アスリートにとって、敵地でのブーイングは選手冥利(みょうり)に尽きるものというが、逆に、ホームでのブーイングほどつらいものはない。それは選手の家族にとっては、なおさらのことだろう。15日のエンゼルス戦、松坂の家族は自宅のテレビで見守ったという。松坂は、妻・倫世さんの反応について話してくれた。
「妻は、(自宅で)観ていて、(スタンディング・オベーションを受けたところは)うれしかったと言っていました。常にそうであれば、家族も安心することができますけど、こういう世界ですから……」
松坂大輔の次の登板は、20日のオリオールズ戦と発表されている。今後、中4日のローテーションで回っていくとすれば、25日、ヤンキー・スタジアムのマウンドに立つことになるだろう。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ