負傷から復帰の岩村は変わらぬプレー=しかしチームは一転して…
レッドソックスのエースとは好相性
レッドソックス戦でも軽快なプレーを見せたレイズ岩村 【Getty Images】
「7番・セカンド」
9月12日(現地時間)、敵地ボストン。レッドソックスの先発は、通算打率3割以上をマークしている相性のいいジョシュ・ベケット。岩村はそのベケットから左翼線へ技ありの安打を放つなど気を吐いたが、レイズは9−1、6回降雨コールドで敗れた。
ベケットの岩村に対する攻め方に、特徴らしきものがあった。サインを出していたのはジェイソン・バリテックではあるが、ベケットは思い描いているサインが出るまではうなずかないタイプ。つまり、配球の主導権は完全にベケットが握っている。岩村は一塁ゴロに倒れた第1打席について、次のように振り返った。
「(カウント)1−1からカーブ。2−1になってもカーブが来た。向こうの意地が見えた」
安打を放った第2打席も初球はインサイドのストレートでストライクを取ったあと、チェンジアップを2球続けたが、岩村は4球目のストレートをインサイドアウト・スイングでさらりと逆方向へ運んだ。
2007年以降の3シーズンにわたるベケットとの通算対戦成績は34打数11安打、打率3割2分4厘。中でも昨年5月、グリーンモンスター越えの本塁打で周囲に強烈なインパクトを与えたのは記憶に新しいところだ。だが、岩村は「(ベケットに対する)成績がいいのはたまたま。何もない」と、相性の良さについて、実にクールに受け答えると、こう続けた。
「だって、90マイル(約145キロ)のチェンジアップを投げるようなピッチャーですよ。1試合1試合の積み重ねがそういう数字になっている。彼を見下ろしながら打席に立てるっていうのはない。気を抜いて打席に入っていたら、簡単に2ストライクに追い込まれますからね」
自身の万全ぶり示すも…
まずは5回の守備。6−4−3のダブルプレーを完成させたのだが、二塁封殺の際、一塁走者ジョシュ・レディックの果敢なスライディングを平然とかわし、素早いターンで一塁へ送球した場面。復帰後、初めての併殺プレーではなかったが、それは、これまでによく見られた、岩村明憲の動きそのものだった。
もうひとつは最終回の攻撃。ジョナサン・パペルボンから放ったショートへの内野安打は、完全に足で稼いだもの。2カ月半前にひざの手術を受けたとは思えない動きに、ジョー・マドン監督は目を細めた。
「私には、走塁など、アキの動きはどれも(負傷前と)同じに見える」
皮肉な事に、岩村が復帰してからの半月で、レイズのチーム状況はガラっと変わってしまった。半月前は2年連続のプレーオフ進出を射程圏内にとらえ、貯金も二けたをキープしていたが、9月13日、レッドソックスに3連敗を喫し、泥沼の11連敗で貯金は「1」に。しかもこの日、地区優勝の可能性が完全に消滅した。岩村は、苦しい現在の状況について、こう話した。
「今は流れが悪い。全てが中途半端な状態になっている。(雨天順延、スケジュールの変更など)全ての流れが、自分たちのチームには今はまだ向いていないと思う。でも、ホントに耐える時であることは分かっている」
主砲カルロス・ペーニャが離脱(死球による指の骨折で今季絶望)して1週間あまり。その影響が大きいのは言うまでもないだろう。もしかしたら8月末、スコット・カズミアーをエンゼルスに放出した何らかの影響もあるのかもしれない。だが、悲願のプレーオフ進出に向け、チームが一丸となっていた1年前と比べると、試合終盤の粘り、踏ん張りが見られないなど、何かが欠けているようだ。
「去年は去年。去年はワールドシリーズが終わった時点でリセットされている」
岩村が言うように、選手の入れ替わりは常にあるわけで、同じ戦力で戦っているわけではない。岩村自身も来シーズン、レイズでプレーしない可能性だってある。そう、岩村にとって今季は契約最終年。2010年は球団がオプション(行使した場合、来季年俸は485万ドルになる)を持っているが、果たしてレイズは今オフ、岩村に対してどちらのカードを切るのだろうか。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ