ローマ、スパレッティ監督辞任の謎=トッティ、センシ会長との対立か?

ホンマヨシカ

昨シーズンからあったセンシ会長との対立

センシ(右)会長との関係もスパレッティ辞任の要因ではないか 【Getty Images】

 スパレッティの辞任後に、急きょ、元ユベントス監督のクラウディオ・ラニエリを新監督に迎えたローマ会長のロセッラ・センシは、今回の辞任劇について「スパレッティが船を置き去りにするとは考えてもいなかった」とスパレッティを非難した。

 この発言を聞かされたスパレッティは「センシの発言には落胆した。わたしはあの船で何度も漂流した。あのような体験をした後、こんなことを言われては気分を害する。なぜならわたしにとっても6月に辞任していた方が、ほかのクラブの監督に就任できていた可能性がある。しかしわたしはこれまで良好な関係を構築してきたローマで、新たなシーズンを迎えたいと望んだのだ。新シーズンを再出発するためにはクラブの力添えが必要だった。しかし、わたしにはそのような力添えがなされたとは思えず、最終的にこのような行動を取った」

 考えてみれば、昨シーズン中、スパレッティとクラブ首脳陣との関係に亀裂が生じ始め、昨シーズン限りでローマを去る可能性が取りざたされた時期があった。最終的には、両者の話し合いが行われ、次シーズンもスパレッティが監督に留任することが決まったという事実がある。これを見ても分かるように、元々ローマ会長であるロセッラ・センシとの関係は薄氷を踏むような関係だったと言える。

スパレッティとローマ、勝ち組はどちらか

 浪人となったスパレッティには、ロシアのゼニト・サンクトペテルブルクからオファーが来ていると報じられているが、本人はまったく知らないと語る。当面はテレビ解説者として働くとのことだが、近年のセリエAで最もスペクタルなサッカーを実践して見せたスパレッティに、多くのクラブが注目していることは間違いない。

 スパレッティの辞任のニュースを知った先輩監督であるアッリーゴ・サッキは「ルチアーノがすぐに監督として仕事ができることを祈っているよ。彼の実践するサッカーはイタリアではまれにしか見られない。このニュースを知った時、彼に電話をかけなかったが、携帯電話にメッセージを送信したら彼から返事がきた。辞任の原因については知りたいとは思わない。しかし、ある人間がこのような決心をするということは、強い自尊心と職業意識を持っているということであり、議論の余地がない」とスパレッティにエールを送った。

 カペッロ時代とは打って変わり、経済的に苦しくなったローマを、ゼロトップなど画期的なやり方でリーグ戦の優勝争い、さらにはチャンピオンズリーグにも導いたスパレッティ。これほど有能な監督を解説者にしておくのはあまりにももったいない。
 ちょうど来年にはワールドカップがあり、リッピが大会後に代表監督を勇退する可能性は十分にある。もしスパレッティがその時点までどこの監督にも就任していなければ、新しいアズーリ(イタリア代表の愛称)の指揮官候補に名前が挙がるのは必至。たとえ代表監督にならなくても、来シーズンの監督の移動劇の中心にいるのは間違いない。
 そうなったとき、ローマは自分たちが失ったものの大きさに気づくようなことにならなければいいのだが……。

<了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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