ローマ、スパレッティ監督辞任の謎=トッティ、センシ会長との対立か?

ホンマヨシカ

ローマのスパレッティ監督がたった2節で辞任

開幕からたった2試合で辞任したスパレッティ監督。辞任に至った背景には何があったのか 【Getty Images】

「もうたくさんだ。これ以上続けられない」という言葉を残して、ローマ監督のルチアーノ・スパレッティはホームでのユベントス戦の2日後に突然辞任を表明した。
 開幕戦のアウエーでのジェノア戦(2−3)と第2節のホームでのユベントス戦(1−3)で敗れるという最悪のスタートだったとはいえ、スパレッティがわずか第2節を終えた時点で自ら監督のポストを放棄するというニュースは、サッカー関係者だけではなく、多くのサッカーファンをも驚かせた。

 2連敗を喫した2試合の試合内容も、ディフェンスラインのもろさをさらけ出してはいたが、決して悪くはなかったし、スポーツ紙による2試合における監督に対する評価も低いものではなかった。それでは、スパレッティが2011年まで残っていた契約(金額にして約9億6480万円)を放棄してまで、自ら辞任を決意するに到った要因とは何なのだろうか。

 スパレッティ以外の人間にとって唐突と思える辞任も、彼自身にとっては自然の流れだったのかもしれない。今シーズンの開幕前、いやそれ以前から徐々に芽生えたクラブに対する不満と失望があり、その上に開幕2連敗という最悪の結果が重なり、辞任を決意するに到ったのだと思われる。

 スパレッティが抱くクラブに対する失望、不満とは、計画性が感じられない選手補強が挙げられる。数年前から苦しい経営を強いられているローマに大型補強が期待できないことは、スパレッティ自身がよく理解していた。指揮官が望んでいたのは、せめてシーズンオフの合宿中に新戦力をテストできるような時間的な余裕を持った選手補強だった。
 しかし、金銭的に余裕のないローマは移籍マーケットが終了する間際まで待っての選手補強、いってみれば他クラブが余剰分の選手をバーゲンセールで放出するのをギリギリまで待つという、スパレッティが言うところの計画性のない選手補強だった。

 ローマは8月23日に行われたジェノアとの開幕戦間際にインテルからDFのブルディッソを獲得した。昨シーズンのセンターバックのレギュラーであるメクセスが出場停止で、フアンが負傷で開幕戦に出場できなかったからだ。
 スパレッティはこの“ラストミニッツ”による補強に対して「チームと1度も練習をしたことがない選手を試合で起用しなければならない。こんなことはこれまでのわたしの監督経験でも初めてのことだ。まともなプログラムがなければ、今シーズンの目標を定めることもできない。ただ単に前を見ながら漂うことになる」と怒りを露わにした。

トッティとの微妙な関係が辞任の一因か

 もう1点、辞任の要因とうわさされているのが、トッティとの微妙な関係だ。
 ファンやチームメートだけでなく、クラブ首脳陣に対しても影響力を持つトッティは、ローマの帝王のような存在だ。スパレッティはユベントス戦後のインタビューで「ほかのチームに比べてもローマにはガッツが感じられない。アマウリやイアキンタがローマ陣内で体を張ったプレーをしていたのを見たか? あのようなプレーをしないと今夜のような試合には勝てない。デ・ロッシ? 彼の持っている闘争心をまだほかの選手に伝えられていない。5年前から口を酸っぱくして言っているのだが、ヒールキックや見栄えのするテクニックやゴールや新聞のタイトルになるようなことしか考えていない選手がいる」とデ・ロッシを称賛しながら、(トッティの名前こそ出さなかったが)暗にトッティのことを非難するようなコメントを残した。

 スパレッティは、トッティについて「並外れた才能を持っているが、しかしまだ上達しなければならないことがある。もっと闘争心が必要だ」とも語っていた。トッティが君臨するローマで、トッティと良好な関係が結べないのなら、監督としての仕事だけではなく、ファンとの関係にも悪影響を及ぼすことは想像するにたやすいだろう。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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