新潟、「地方の星」からJの強豪へ=躍進を支える変化と不変
降格寸前からACL圏内へ、新潟に何が起こったのか?
4−3−3へのシステム変更がうまくはまり、現在2位と好調な新潟 【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】
これまでは「地方の星」として、観客動員数の話題でのみ全国メディアに取り上げられることの多かった新潟が、今季は首位争いに絡み、その戦いぶりが華々しく全国ネットのテレビやスポーツ紙で報じられるようになった。J1リーグも後半戦に入り、第19節を終えた時点で堂々の2位。来年のACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場圏内である。現在、リーグに旋風を巻き起こしているその姿からは、昨シーズン、最終節でようやく残留を決めた弱者の姿は感じられない。それどころか、苦手のアウエーでも勝ち点を重ね続ける姿には、むしろ強豪の風格さえ漂う。今シーズン、いったい新潟に何が起きたのだろうか。
昨シーズンの不振(13位)の原因は、誰の目にも明らかであった。
とにかく点が取れない。シーズン総得点32はリーグ最下位。1試合平均で1点を切る得点力で勝てというのは、どだい無理というものである。浦和に移籍したエジミウソンに代わる新エースとして期待されたアレッサンドロは、サポーターズCDで自らのチャントを歌うなど、ピッチ外ではノリノリで、その実力に見合わない数々の名言とともに非常に愛されたキャラクターだった。しかしピッチ上では、ボールが収まらず、運べず、奪えずの三重苦で、とても期待に応えていたとは言い難い。オフシーズンにフロントが、ボールの収まる大島秀夫とともに、ボールを運べるペドロ・ジュニオールの獲得を決めたのは、チームの弱点を補うという、まさに補強の王道であったといえよう。
こうして、優秀なアタッカーがそろったこともあり、鈴木淳監督はシステムの変更を決断する。06年の就任時以来、頑(かたく)なに守ってきた4−4−2のフォーメーションを潔く捨て、4−3−3にシフトチェンジして今シーズンをスタートさせたのだ。文章にするとわずか数行だが、何かにつけて頑固な鈴木監督が(後述するような)選手の起用法に始まり、フォーメーションまで変えたのは、まさにペレストロイカ並みの変革であった。
躍進を陰で支えた本間のフットボールセンス
その意味で、ここまでのMVPとも言えるのが、10年目を迎える本間勲である。
3トップ移行とともに、ボランチの数を2枚から1枚に減らしたのも今季の新潟の大きな特徴だが、同時に、シーズン当初は不安視されたポジションでもあった。一般に「アンカー」と呼ばれるこのポジションは、フィジカルが強く、守備能力の高い選手が置かれることが多い。だが、新潟でこのポジションを任されたのが、そうしたイメージとは真逆とも言える本間だった。身長172センチ。高い身体能力も守備能力も持ち合わせてはいない。しかし本間には、それらを補って余りある、ゲームを読む優れたフットボールセンスがあった。全国的な知名度こそ低いが、そのセンスについては前監督の反町康治から「これで身長が180センチあれば、本間は間違いなく代表選手だよ」と太鼓判を押されたほどである。
絶妙のポジショニングとパスワークで、バランスを取りながら攻守をつなぐ本間。その動きに連動する、背後のセンターバック陣も強力だ。特に今季、完全復活を果たした永田充の充実ぶりには目を見張るものがある。ディフェンスリーダーの千代反田充とともに形成するゴール前のトライアングルは、あらゆる攻撃をはね返し、現在、失点19とリーグ2位の堅陣を築いている。その永田は、今季の守備陣の好調ぶりについて、こう語る。
「チヨさん(千代反田)が、ボールホルダーにしっかり当たってくれるので、自分は自由に動けて本当にやりやすい。勲さん(本間)も最終ラインに吸収されることなく、僕らより1列前で巧みなポジション取りをして、攻撃の芽をつみ取ってくれる。これが大きいですね」