“幻の統一コミッション”はなぜ失敗したのか? 中村祥之氏が激白

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“幻の統一コミッション”GPWAはなぜ失敗したのか!? 【kamipro】

 三沢光晴さんの死をきっかけに、元プロレスラーの馳浩氏が音頭をとるかたちで、全日本、新日本、ノアが中心になってプロレス統一コミッションの設立に向け動き出した。あれ? プロレス統一コミッションといえば数年前も同じような話題が出ていたような気もするが……。あ、GPWAだ! というわけで幻に終わった(?)GPWA構想を初代事務局長に直撃!
──今日はGWPA……あれ、GPWAでしたっけ!?

中村 ちょっとちょっと、わかってないじゃないですか!(笑)。

──すいません。GPWAでしたね(笑)。今回、三沢さんの件があって、プロレス統一コミッションなどの話が出ているんですけど、そういえば、そういう機構って、ちょっと前にもあったような気がして。

中村 あったようなじゃなくて、ありますよ。

──そのGPWA事情に一番詳しい中村さんにお話を聞かせてもらえれば、と。

中村 いやいや、でも一番詳しくはないけど、一応、初代事務局長ですから(苦笑)。

──いまは違うんですか?

中村 いや、いまでもそうだと……、いや、わかんないな。追放されてるかもしれない(笑)。

──ダハハハハハ! そもそもGPWAはどういう経緯で発足されたんでしょうか?

中村 GPWAが発足した当初は、個々のメリットではなくて、加盟した各団体というか、全体のメリットを考えていたわけですよ。たとえば、GPWAにスポンサーをつけたい、と。僕は生前、三沢(光晴)社長に会ってGPWAのときに最初にお願いしたのは、GPWAというものを使って、サッカーみたいに連盟にスポンサーをつける活動をさせていただきたい、と。その上で、GPWAで加盟しているところからノアというものが外れたら……、もうね、大変じゃないですか。

──大変でしょうね。

中村 だから、その件で三沢社長にお願いした上でGPWAというものを作ったと。それ以外にも、いろんな提案は出ましたけど、ただまあ、実際に連盟を持ったとしても、結果の出ない世界というか。

──これまで前例がなかったわけですからね。

中村 それこそ、パチンコ好きならば誰もが知ってるようなチェーン店にも営業に行ったことは事実ですよ。

──パチンコ業界とマット界は密接な関係がありますけど、営業に行くだけではなくて、いいところまでいったと?

中村 一応、そこのトップの人間には会えた。興味は示していただいたんだけど、ちょっと、ご時世的に、それぐらいの時期からドンドン広告宣伝費っていうのが削られていったじゃないですか。だから、杉田(佳隆)っていうGPWA事務員みたいなのがいたんだけど、それが大会に100万円とかのスポンサーをつけたりはしてたんですよ。でも、それは大会レベルの話であって、僕らの目的とする連盟にスポンサーをつけるまではできなかった。そのあいだに、まあ自分のところの団体がガッタンガッタンになってきたと(苦笑)。

06年11月にはGPWAによる第1回興行が開催されたが…… 【kamipro】

──大揺れだったわけですね(笑)。

中村 そうそう。そうなると、どうしても、自分の団体に力が入っちゃうんだよねぇ……。

──まあ、そうなりますよね。

中村 自分のところがあってのGPWAであって。GPWAをやりたいんだけど、母屋がガタつくと前に進まないじゃない。で、だんだんと尻すぼみになってきて。結論としては、自分のところがガタガタになって僕は出向させられた、と(笑)。短くかいつまんで話すとだけどね。

──そもそもGPWAには、プロレス界の発展のため、興行戦争をさけたりという目的もありましたよね

中村 そうだね。いまでもたぶん、主要団体というか、そこから派生するいろんな協力団体は日程調整とかされてるんじゃないかな? その当時もライブドアのスケジュールカレンダーというのを使って管理してたんですよ。

──リアリティありますね(笑)。

中村 それをみんなが見れる環境にしてたの。で、いまは統一機構を作ってることで新日本、全日本、ノアっていう三団体が動いてるみたいだけど、その三団体でスケジュール管理をされているかはわかんないけど、のちのちは同じ環境でフェアに見れるようなものを共用したら役立つんじゃないかなと。みんながログインできて確認ができるっていう。

──GPWAではライセンス制も視野に入れていたわけですよね。

中村 もちろん。ライセンス制のことも当時から出てましたしね。ただ、これはノアの仲田龍取締役から出た言葉だけど、「現在デビューしてる者においては、全員にライセンスを発行しなきゃいけないでしょう」と。

──それは、たとえばインリン様であっても?

中村 そうそう。「それを規制することはできないじゃないですか」と。僕は仲田さんの言葉はもっともな意見だなと思ったけど、同調できない方々もいらっしゃるわけですよ。

──いらっしゃるでしょうね(笑)。仲田さんなんて、イメージ的には、もっと規制したほうがいいというようなガッチガチの考え方なのかと思ってましたけど。

中村 仲田さんは見かけとか、噂とかと違って、じつにフェアな感覚の持ち主ですから。

──仲田さんにも「プロレスラーはこうあるべき」というポリシーはあるんだけども、物事の道理として、みんな認めなきゃダメでしょっていう話ですよね。

中村 そうそうそう。だって、僕なんかハッキリ言って、『ハッスル』では闘ってたりしてたじゃないですか?(笑)。

──そうか、中村さんもライセンスが発行されるかもしれなかった、と(笑)。

中村 いやいやいや、べつに俺はね、自分でライセンスがほしいとかはないけど(笑)。ないけど、自分での葛藤はありましたよ。『ハッスル』で試合に出てる人間がはたして、それを唱えていいのだろうかっていう(笑)。

中村初代事務局長が激白 【kamipro】

──でも、10年前のプロレス界ならともかく、2000年を超えていろいろなことがあって、まだ異を唱える方々っていらっしゃるんですね。

中村 そりゃあ、いますよ。それに、仲田さんとか我々は業界どっぷりな人間だし、白黒つけることは自分たちからはできない立場だから。でも、外部の人たちの中では、そこはプロとしての線引きをキチンとするべきじゃないかという意見もある。まあ、そのあいだにGPWAの話し合いというのは私が参加してなかったのか、集会がなくなっていったのかはべつにして、だんだんと話題に出なくなって現在に至る……、みたいな(笑)。

──事務局長不在の集会も開かれたりしたんですか。

中村 いや、それはわからないけどね。まあでも、今回の新しい協会設立の話に関しても、仲田さんがいらっしゃれば、そのベースとなるGPWAというものをベース化しちゃって、その上の次の段階に進むんであればいいことだと思いますよ。仲田さんはずっと新日本、全日本も入れて将来的には協会にしなきゃいけないって唱えてたから。そういった意味では一歩前進したかたちが今回の新機構の設立であって、GPWAっていうのは土台というか、提案書であった、みたいな。

──GPWAは提案書でしたか(笑)。GPWAもそれぞれの団体があってというかたちでしたけど、統一機構ができたとしても、やはり専任で動く人間がいないと厳しいんじゃないかとも思うんですよ。

中村 それはね、GPWAのときも同じで、たとえばGPWAに唯一雇われてた人がいるんですよ。

──先ほど言っていた杉田さんという方ですか?

中村 そうそう。杉田さんはもともとアントントレーディングにいて、そのあとは新日本プロモーションに勤めていたんだけど、そこも辞めてGPWA専任でやってたの。ただ、彼は彼でプロレス界のことを思って一生懸命動いていたのは事実なんだけど、結果を出せなかった。あ、思い出した。じつはGPWAのほかにGPWMっていうのあったの。

──GPWM?

中村 グローバル・プロレスリング・マネージメントっていう法人を作ったんですよ。

──へぇ〜、それは初耳です。

中村 杉田さんはGPWMの社員だったの。そこは小さな会社ですけど、ノアさんと僕を含めた4人で出資をして作ったんです。いまでもあるのかわかんないけど(笑)。

※このあとも、初代事務局長の中村氏が、GPWAにまつわる、あんな話やこんなエピソードを大公開。一時期は悪い噂が立ってノイローゼに悩まされたという中村氏が、プロレス業界入りして20年経って気づいたこととは? 気になる続きは『kamipro』No.137をチェック!!

【09年6月30日/都内・ファーストオンステージにて収録】
(聞き手/ジャン斉藤 撮影/阿修羅チョロ 試合写真/平工幸雄)

【kamipro】

■『kamipro』No.137
7月23日発売 特別定価940円(本体845円+税)
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