先発の田澤、登板直前で雨天中断=MLBフューチャーズ・ゲーム

カルロス山崎

先発投手は「オレじゃんって」

フューチャーズ・ゲームに合わせて調整してきた田澤だが、雨に降られ登板はならなかった 【Getty Images】

 試合開始時間が近づくにつれ、セントルイスの空は薄いグレーから、濃いグレーに変わっていった。正午を回ると、それは今にも大泣き寸前の表情になっていたが、まもなくして田澤純一は、ブルペンで投球練習を始めた。捕手を務めたヤンキースの有望株、ヘイズース・モンテロは田澤についてこう話してくれた。

「タザワは、ブルペンではとても力強いピッチングをしていたし、この日のマウンドに向けて、準備万端だったように思う。シーズン中は彼のボールを打席から見てきたけど、僕は三振することもあれば、ヒットを打つ事だってある。でも、彼のベストピッチは打つことができない。いいピッチャーだ」

 レッドソックス傘下2Aポートランドの田澤が、栄えある世界選抜の先発投手に指名されたことを知ったのは当日(現地時間12日)の朝だった。

「球場に来て、ホワイトボードに(先発選手の)名前が書いてあったので、見たら(先発投手は)オレじゃんって」

 ハマっ子らしい表現で、感動の瞬間を振り返ってくれた田澤だったが、フューチャーズ・ゲームが行われるブッシュ・スタジアムのマウンドには、一歩も踏み入れる事はできなかった。

 雨。

 試合が始まったころは霧雨だったが、次第に小雨となり、徐々に激しさを増していった。1回表、世界選抜は2点を先制。その裏、田澤はいつもように、ダッグアウトを出て、ゆっくりと歩きながらマウンドに向かったが、ファウルラインをまたぐ直前、駆け寄ってきた塁審に左肩を軽くたたかれ、ベンチに引き返した。雨天中断。内野にはあっという間に巨大なシートが被せられ、ゲートウェイアーチが視界から消えてしまうくらいの豪雨、雷雨に見舞われた。

レッドソックス側が許可せず

「雨が降って(クラブハウスに)戻ったら、投手コーチからは“そのまま行くから”って言われていたんですけど、待っているうちに、ボストンの方から話があって“投げられない”って」

 有望株の、特に投手の育成には慎重すぎるほど慎重なレッドソックスは、一度ブルペンで肩をつくってしまった田澤の登板を許可しなかった。結果的に、中断は4時間9分にもおよんだが、NGの判断はもっと早い段階にあったようで、「投げる気満々」だった田澤は、報道陣の前では、「しょうがない」という一言で片付けた。だが、本音は“何のためにセントルイスまで来たのか”ということだろう。というのも、前回の登板(現地時間8日のビンガムトン戦)は5回、49球で降板するなど、フューチャーズ・ゲームでの登板を考慮した“調整”が続いていたのだから。

「2Aでも、雨の日で中断した場合、先発投手が降板したりするので分かってはいたのですけど、それが、この大事なときに来てしまったので残念。いきたかったといえばいきたかった」

 世界選抜の先発投手として、2イニングを任された田澤だったが、結局は1球も投げることなく、経験できたのはメジャーリーグのボールパークという、環境面で楽しみにしていた事だった。

「すごくいい球場。広いですし、まあ、マウンドに上がる事はできなかったのですけど、いい経験ができたかな」

 試合は世界選抜が7対5で逆転勝ち。試合後に配布された公式記録によると、田澤は先発はしたことにはなっているが、1球も投げずに交代したことになっている。0.0回、無安打無失点……。試合後のロッカーで田澤が口にした一言がなかなか粋だった。

「メジャーのマウンドは遠いってことですかね。内野(の芝生)にも入れませんでした」
 あす、ポートランドに戻るというが、15日の2Aオールスターでの登板があるのかどうかも含め、今後の予定はまだ分からないそうだ。

<了>
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著者プロフィール

大阪府高槻市出身。これまでにNACK5、FM802、ZIP-FM、J-WAVE、α-station、文化放送、MBSラジオなどで番組制作を担当。現在は米東海岸を拠点に、スポーツ・ラジオ・リポーター、ライターとして、レッドソックス、ヤンキースをはじめとするMLBや、NFL、NHLなどの取材活動を行っている

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