田澤純一、「光栄でワクワクしている」=有望株集まる球宴フューチャーズ・ゲーム出場へ

カルロス山崎

レッドソックス育成プログラムに沿って成長

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 6月25日現在、14試合に先発し、7勝4敗、防御率2.92、WHIP1.16という成績を残している田澤だが、開幕から3カ月近くたったこともあり、本人いわく「切り替えがうまくなってきた」という感触があるという。つまり、以前は切り替えに苦労した面も多かった、ということになるのだが、では、どの辺りに苦労してきたのだろうか。

 田澤に限ったことではないかもしれないが、試合に出る以上、いい数字を残したいというのは誰にでもあること。田澤も当然、先発するからには、勝ち星にはこだわっていた。だが、球数が85球あたりに差しかかると、どんな状況であれダグアウトから歩いてきた監督にボールを手渡さなくてはならないし、大量リードの降板後に逆転され、勝星が消えたこともあった。

「内容が良くて、勝ちが付けばいいかなとは思いますし、以前は、勝った場面でマウンドを降りたぞ、って思うこともありましたけど、最近はあまり気にはしなくなりました」

 気にしなくなったのは、育成プログラムの成果といっていいだろう。田澤の場合、中4日での先発登板はもちろん、日本では封印していたワインドアップでの投球、日本では投げていなかったカーブの習得、固いマウンドへの対応など技術的な課題もあるが、この育成プログラムは、どちらかというとメンタル面の成長、対応が重要視されているように思う。田澤はこう続ける。

「打たれた時は、(監督やコーチから)こんなに打たれることもないだろって、ホームランを打たれた後も、ホームランもただのヒット1本なんだぞ、次はまたインコースにズバッと真っすぐで攻めるぐらいの気持ちで投げてくれ、って言われますね。雨で試合が長くなった時も、これも勉強なんだぞって。基本的にここは育成する場所で、勝ち負けは関係ないって、監督がみんなの前で言っているんです」

気合の入ったピッチングも披露

 田澤が意識する数字も変わってきたようだ。勝星も防御率も気にならなくなってきた。

「ファーストストライクとか、1イニングに対する球数の多さとか。ファーストストライクを取れないと球数がかさむし、長いイニングを投げることも出来ないですから」

 それでも、田澤は投手としての闘争心を失ったわけではない。20日のアクロン戦、ここぞという場面では、“おりゃっ!”などと雄たけびを上げながら、渾身(こんしん)のストレートを投げていた。

「前回、やられた相手(アクロン=6月12日からの3連戦で1勝2敗。打線は3試合で2得点)で、今までの中で一番イメージの悪い負け方(4回1/3、9安打5失点で黒星)だったので、気合いが入っていたというか。今回に関してはリベンジだって、そう思っているピッチャーのひとりだったので、気合いが入っていたのかな」

 育成プログラムに沿うだけでは、物足りなさを感じることもあるのだろう。このように、田澤は気持ちをうまく切り替えながら、投手としての本能も磨いているようだ。そして、およそ2週間後の7月12日、ブッシュ・スタジアムのマウンドに立って、新たな刺激を受けることになるだろう。

<了>

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著者プロフィール

大阪府高槻市出身。これまでにNACK5、FM802、ZIP-FM、J-WAVE、α-station、文化放送、MBSラジオなどで番組制作を担当。現在は米東海岸を拠点に、スポーツ・ラジオ・リポーター、ライターとして、レッドソックス、ヤンキースをはじめとするMLBや、NFL、NHLなどの取材活動を行っている

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