最下位・横浜FCはどこへ向かうのか=J2低迷の原因
目標とするチーム作りには時間がかかる
ベテランの三浦知良(右)を追い越す若手の急成長も必須だ 【写真は共同】
都並監督時代に徹底したことはゾーンディフェンスであった。中でもボランチが相手に食いついてディフェンスラインの前にスペースを空けることはご法度。「J2ではそれで通用するかもしれないけど、J1ではそこを空けるとやられてしまう」と都並監督も語る。J1では相手に攻められる機会が増えるが、そこで焦らずに守ることでリズムをつかむ狙いがあった。
昨季、ダントツの強さを誇ったサンフレッチェ広島との3度の対戦では、試合ごとに力の差は縮まっていき、最後は互角以上の内容でドローに持ち込んだ。時間はかかりながらも進むべき道が正しいことを証明してみせたのだ。
また、樋口監督は昨季大宮の監督を務めたときに「自分たちで主体性を持ったサッカーではないとJ1に定着できない」と感じたという。だからこそ、どの試合でも自分たちで主導権を握り、ゴールを目指す攻撃サッカーを標榜(ひょうぼう)している。
「理想はガンバ大阪のようなサッカー」と樋口監督は語る。圧倒的なボール支配率で勝利した今季第9節の水戸ホーリーホック戦が最も目指すべき道を示した試合であった。
必要なのは明確なビジョン
時間をかけながら若い選手たちを成長させることでチームを熟成していくしか方法はないが、毎年監督を交代しているようでは進歩はない。チーム作りを我慢できないのならば、あらかじめ掲げる目標を変えた方がいい。「予算はリーグでも上位ではない」(小野寺裕司社長)というクラブ事情の中で必要なのは明確なビジョン以外に考えられない。
横浜FCは6月3日に行われた第19節のアビスパ福岡戦で敗れ、19試合連続ホーム未勝利というJ2記録を更新。試合後にサポーターから激しいブーイングが巻き起きた。彼らが怒っているのは負けたからだけではない。チームが目指す道が見えないから怒りが増幅しているのだ。
横浜FCはどこに向かおうとしているのか。それを示すことが今最も求められていることである。現在の状況は、4年間クラブとしてのビジョンを示せずにいたことの表れだ。迷走を続け、こびりついた垢はやすやすと落とせはしない。
<了>