愛媛FC、躍進の秘密
体現する「E−Spirit」
となると不思議なもので、選手たちの発言も自然と前向きになってきている。昨シーズンは途中でサイドハーフからボランチにコンバートされ、その難しさを口にしていた赤井秀一が、「ボランチは展開とかを考えながらやるので難しいが、難しいだけにやりがいがある。ボランチが楽しくなったら成長できるし、課題をクリアしたい」と、今季は強い意欲を語る。
攻守にわたる天性のスピードを持ちながら、メンタルコントロールに問題を抱えていた内村も、「昨年はコーチングがなかった部分もあったが、今年は奪ったときに相手が整っていない場合は、スピードに乗って仕掛けていこうとみんな言ってくれている」と、今季3ゴール、1アシストの好調が周囲とのコミュニケーションの改善によるものであることを明かす。
ちなみに、今シーズン愛媛が掲げたスローガンは「E-Spirit-EHIME〜ひとつになって闘う〜」というもの。その意味において、「昨シーズン終盤に感じたことを来シーズンのスローガンにしている」望月監督の狙いは、ここまで見事に的中していると言ってもいいだろう。
今季の分岐点となり得るC大阪との首位決戦へ
そうなると、3月29日にホームのニンジニアスタジアムで14時にキックオフされる第5節・C大阪との首位決戦が、愛媛にとって「チームがどれだけの完成度か分かる」(FW内村)戦いとなるのは必定だ。ディフェンス面では、望月監督が「真ん中でみんな跳ね返してくれる」と信頼を置く新加入のアライールを中心に安定の度を高めているだけに、攻撃面で「前を向いて仕掛け、相手3バックの裏にあるスペースをうまく使えるか」(FW田中)がポイントになるだろう。
思い返せば、このニンジニアスタジアムでのセレッソ戦は、愛媛にとって昨年4月29日に1−4と惨敗を喫し、チーム初の最下位に転落した因縁のゲームでもある。敗北のその瞬間、キャプテンとして屈辱の笛を聞き、試合後に涙を流したDF金守はC大阪戦に向けてこう決意を語る。
「C大阪戦を乗り越えるか乗り越えないかで、1年が決まるような気がする。監督からもミーティングで『1年通じてのポイントになる』という話もあったし、みんなで雰囲気を作っていきたい。自分たちの強みは走ることと、1つになって戦うこと。1つになれればC大阪にも戦えると思う」
<了>