新天地ベンフィカで輝きを取り戻したアイマール
アイマールを支えるパコ・アジェスタラン
パコ・アジェスタランは言う。
「日々のトレーニングは、選手にとって最も重要なもの。選手が、どんなに自分が秀でていると思っていても、万全の状態でなければあらゆるゲームでプレーすることは不可能だ。特にけがしている選手に、トレーニングがどれくらい重要であるか理解させるのがわたしの仕事である。時々、選手の中にはオーバーワークだの単調なトレーニングだのと文句を言う者もいるけれど、幸いアイマールはとても“頭の良い”選手。自分のやるべきことが何かをよく理解して、わたしのメニューをこなしてくれている」
アイマールも今シーズン序盤、思うように試合に出られない中でポジティブに語っている。
「サッカーはフィジカルコンタクトの多いスポーツだということをよく理解していないと、プロではやっていけない。たぶん、メッシやリケルメのようなテクニックのある選手の方が、ほかのタイプの選手よりファウルを受ける回数が多いので、けがをしやすい傾向にあるんだと思うよ。これは僕も含めてね。でも、度重なる故障とちゃんと向き合って、けがの本質を理解して、“焦らず無理せず”を心掛けているよ。幸い、ベンフィカにはパコがいるからね。彼のメニューを信じてこなしていれば、間違いなく完ぺきな状態で復活できると思う」
アルゼンチン代表にもう一度戻りたい
2010年ワールドカップ(W杯)南米予選のベネズエラ戦(3月28日)、ボリビア戦(4月1日)に向けたアルゼンチン代表招集選手26名がディエゴ・マラドーナ監督から発表された。もちろん、そこにパブロ・アイマールの名前はない。ベンフィカの同僚で、北京オリンピック決勝のナイジェリア戦で決勝ゴールを決めたアンヘル・ディ・マリアや、ライバルチームのFCポルトからはルチョ・ゴンザレスとリサンドロ・ロペスがメンバー入りしている。
しかし、過去2度のW杯(02年、06年)に出場しているアイマールに焦りはない。
「アルゼンチン人にとって代表は“最高にして最大”のもの。特に代表選手としてW杯に出場することは、この上ない名誉なんだ。そのW杯にメンバーとして選ばれただけでなく、2度も出場することができたんだからね。運が良かったと思っているよ。でも、アルゼンチン代表にもう一度戻りたい。特にマラドーナが率いる代表にはね。マラドーナが僕にかけてくれたあの言葉は忘れることができないから」
そのマラドーナは、アイマールにこの言葉を送っている。
「アイマールは、世界一のプレーヤーであるわたしが認めた唯一の後継者であり、わたしがチケット代を払ってまでそのプレーを見たい唯一の選手だ」
かつての輝きを取り戻しつつあるパブロ・アイマールの“アルゼンチン代表復帰”という夢は、今、始まったばかりである。
<了>
1978年3月1日、リスボン生まれ。新リスボン大学在学中より、ポルトガルの一般紙『ジョルナル・デ・ノティシア』紙に2年勤務。その後、ポルトガル最大のスポーツ紙『ア・ボーラ』(ちなみに、ウェブサイトはポルトガル国内で最もアクセス数が多い)の記者に転身。2001年より国内最大の人気クラブであるベンフィカの番記者として活躍している。ポルトガル語、英語、スペイン語、フランス語、イタリア語と5カ国語に堪能で、語学力を生かしてペレ、ディ・ステファノ、プラティニなどのサッカー界の重鎮の独占インタビューにも成功している。
■翻訳:鰐部哲也
1972年10月30日生まれ、三重県出身。2004年から約4年間、ポルトガルのリスボンに在住し、ポルトガルサッカーを日本に発信。昨年8月に日本帰国後は、故郷の四日市市で対ブラジル人用のポルトガル語の通訳をしている。