2009年、総合格闘技の流行が変化?
北岡悟vs.五味隆典の一戦の感想を何人かの選手に求めたところ、ほとんどの選手から同じような答えが返ってきた。キーワードは「北岡選手の気持ち勝ち(パワーと技術を伴った上でのこと、という但し書きがつくが)」。予想通りの答えとはいえ、選手側からの声だけによりリアリティを伴って心に響いてきた。
ここでいう自信とは、当たり前だがグラップリングに対する絶対的な自信である。北岡vs.五味の場合でいうと、普通ならバックを取られた選手(北岡)が正対したとき、まずはインサイドガードでポジションをキープすることを考えるだろう。だが北岡の場合は迷うことなく足関節に移行。そこには失敗すればポジションを取られる、フルパワーで絞ればスタミナを消費する、パウンドを食らうといった躊躇(ちゅうちょ)といったものがまったく見られない。
ここ数年、総合格闘技界ではタックルを切って、ひたすら殴るというスタイルが主流だった。さまざまなプロモーションでキックボクシングのような試合が続出し、グラウンド状態でも極めよりパウンドを重視する選手が多かったように思う。そんななか北岡、青木真也、今成正和らのような極端に寝技・関節技に傾倒した選手が台頭。以前、格闘技関係者が「寝技に対応できる選手が増えた、またレベルが上がり寝技では差がつきにくくなったので、必然的にスタンドだけの試合が増えた」とコメントしていたが、どうやら総合は新時代に突入しつつあるようである。
かつてグレイシーの出現で柔術が注目され、それが一段落するとストライカーの時代に突入した。そして今は異常に極めの強い集団がトップをつかむ時代になっている。この流れからいくと、次はやはり打撃の時代になるのだろうか。いや、修斗では投げによる失神KO勝ちが数回記録されているし、もしかしたら次は投げ技がプチブレイクする可能性も――。いずれにせよ、今年は青木、北岡らはもちろんのこと、彼らと対戦する選手のディフェンス面にも注目したいと思っている。
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