“メジャーリーガー”に欠かせない、ヒマワリの種
ダッグアウトの必須アイテム
メジャー1年目の福留は向日葵の種もお手のもの。「まず格好から」と冗談混じりに語る 【写真は共同】
「まず格好から入っています」と本人はロッカーで冗談混じりに語るが、確かに、その仕草はメジャーリーガーの姿そのものであった。
日本ではまだなじみが薄いが、手馴れた様子で福留選手が食べていたヒマワリの種は、ベースボールの国では、ガムやスポーツドリンクと並んでダッグアウトの必須アイテムである。
カロリーが多く、ビタミンEやミネラルが豊富で、かつ糖分やコレステロールがない。なるほど、ヒマワリの種はアスリートにとっては理想的な補助食品といえる。
だが、カブスのクラブハウススタッフで、いつもヒマワリの種を業者から取り寄せているゲーリー・スタークスさんによると「健康のためと思ってヒマワリの種を食べているメジャーリーガーはほとんどいないよ」と一笑する。
「(選手たちは)ヒマワリの種が健康にいいとか、好きというより、試合で退屈しないようになんとなく食べているんだよ。なかには種を食べないで、ダッグアウトからフィールドに立っているベースコーチに当てることができるかを競争している人もいるくらいさ」
さらに、「一昔前まで、メジャーリーグでは噛みタバコをほお張ってプレーする選手が多かったんだ。でも、リーグが15年ほど前に健康や子供への影響を考えてマイナーリーグでその使用を禁じるようになってから、代わりにヒマワリの種を口にいっぱい詰めてプレーする選手が爆発的に増えたよ」と言う。
“吐き出す姿”もベースボールの一部
カブスのスプリングトレーニングを取材に訪れていた、『ウォールストリート・ジャーナル』の元スポーツコラムニストで野球関連の著書も多いフレデリック・クライン氏(70歳)に興味深い話を聞くことが出来た。クライン氏はベースボールは“儀式”(ritual)と“ジェスチャー”(gesture)と“気取り屋”(posture)のスポーツであると前置きして、次のように語った。
「選手がヒマワリの種を食べて、吐き出している姿もベースボールの一部なんだ。お気に入りの選手がヒマワリの種を吐き出す姿をテレビで見た子どもたちは、自分たちもそうするようになる。野球は“国民の娯楽”といわれるが、ヒマワリの種は“国民のスナック(お菓子)”みたいなものなんだよ」
祖父と一緒にカブスのスプリングトレーニングにやって来たというマイク・ジュニア君(5歳)も、3歳のときからヒマワリの種を食べ始めたという。ヒマワリの殻をまだ不器用に吐き出しながら、選手のフリーバッティングを見入っている孫の姿を見て、祖父のマイク・シニアさんは言う。
「よく間違って実を吐きだしているよ(笑)。こいつはメジャーリーガーがやっていることは何でもマネしたがるんだ」
どうやら、ベースボールは「格好から入る」ことも重要な要素のようだ。
<了>
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