レアル・マドリー、クラシコでの敗戦の要因と今後
クライシス、満身創痍だったレアル・マドリー
レアル・マドリーは守備的な戦術で試合終了間際までバルセロナを無得点に抑えた 【Getty Images】
ただ、戦前のチーム状況を見れば両チームの差は一目瞭然(りょうぜん)。9日に行われた欧州チャンピオンズリーグ(CL)のシャフタル・ドネツク戦に2−3で敗れたことで、リーガ第2節のラシン戦(1−1)以来維持してきた公式戦無敗記録が20試合でストップしたバルセロナだが、シャフタル戦では主力を温存する大胆なローテーションが採用されたため、クラシコに向けてはむしろプラス材料。
一方、レアル・マドリーはCLのゼニト・サンクトペテルブルク戦の前日にベルント・シュスター監督を解任し、ラモス監督の就任を発表した。7日のセビージャ戦後に「(今のバルセロナ相手に)カンプノウで勝つのは不可能」と発言したことがこの電撃解任の決定打になったと見られているが、クラシコ4日前の監督交代で再びクラブの迷走ぶりを露呈してしまい、レアル・マドリー寄りのメディアからも「クライシス(危機)」、「茶番劇」との批判が上がった。
それに加えて、減らないけが人とロッベン、マルセロの出場停止。特にけが人リストには、今季絶望のファン・ニステルローイ、ディアラ、デ・ラ・レッドのほか、ペペ、エインセ、ミゲル・トーレスが名前を連ね、出場停止の2名を含め合計8選手が欠場。まさに満身創痍(そうい)の中でレアル・マドリーはクラシコを迎えることになった。
レアル・マドリーの守備的戦術
対するバルセロナは予想通りの布陣で、中盤にはバレンシア戦でいい動きを見せたグジョンセンが入り、前線には万全のコンディションのメッシ、エトー、アンリがそろい踏みした。
開始から中盤で激しいボールの奪い合いが続いたが、試合の展開を決めたのはレアル・マドリーの守備的な戦術だった。バルセロナの攻撃力と前線のスピードを警戒したレアル・マドリーは、かなり深い位置にディフェンスラインをセットすると、中盤のブロックもそれに連動して自陣のペナルティーエリア近くまで下げた。普段、ガゴと前後の関係を保つグティも、この日は横並びのポジション取りで守備的な仕事に専念。2トップのイグアイン、ラウルも精力的なチェイシングで自陣に戻り、前半開始からレアル・マドリーは11人全員が自陣に引いて守るサッカーを実践した。
ただ、予想以上にレアル・マドリーの守備戦術は機能し、バルセロナを苦しめる試合展開が続く。レアル・マドリーは、バルセロナに主導権を握られたが、ペナルティーエリア付近で“壁”を築いて決定機を作らせず、カシージャスのPKストップを含めて82分まで無失点に抑えた。ラモス監督が試合後、「明らかな決定機はわれわれにあった」と語った通り、前半のドレンテ、後半のパランカの得点チャンスは、共にGKバルデスと1対1になるという決定的なものだった。シュート数19対6、ボール支配率66%対34%というスタッツから見ても、内容はバルセロナに軍配が上がったといえるが、終盤までは勝ち点獲得の可能性を感じさせる流れだった。
失礼を承知で言わせてもらえば、今回のクラシコは「レアル・マドリーが健闘した」と言えるだろう。その要因を分析すれば、大きく心理的なものと戦術的なものに分けられる。
まず心理面を見ると、両チームに小さいようで大きい要素が隠されている。戦前からバルセロナの地元では「5−0、6−0で大勝する」、「1−0や2―0といったきん差の勝利では失望だ」といった声が上がっていたが、同じくあった危惧(きぐ)の通り、こうした楽勝ムードは選手へのプレッシャーとなっていた。
試合前日の会見でジョゼップ・グアルディオラ監督は、「レアル・マドリーは(昨季の)チャンピオンチームだ。チャンピオン相手に5−0、6−0で勝つことなどできない」と、周囲の楽観ムードにくぎを刺したが、試合開始直後のバルセロナには、早い時間帯での得点(と、その先の大量得点)を狙う焦りと力みが見えた。反対にレアル・マドリーは、開き直ってプライドやスタイルをかなぐり捨てることができた。「とにかく守る」という一点に集中したプレーができるようになり、守備から試合のリズムを作ることができた。
一般的にサッカーにおいて、戦術や試合のリズムは守備から作る方が簡単で、こうした守備的な戦い方はレアル・マドリーほどのビッグクラブの哲学にはないはずだが、この試合に限って言えばラモス監督や選手にほかのオプションはなかった。