女子体操の熱戦を見逃すな!=体操NHK杯

日本体操協会:遠藤幸一

今秋の世界選手権代表選考会を兼ねたNHK杯が開幕。注目の新星・鶴見(写真)、山岸らが、熱い戦いを繰り広げる 【山下昭雄】

 体操のNHK杯兼世界選手権代表決定競技会(以下NHK杯)が9、10日の二日間、千葉ポートアリーナで行われる。9月に行われる世界選手権(ドイツ)の結果で、来年8月の北京五輪代表枠が決定するため、五輪を見据える上で重要な大会となる。

 今回のNHK杯は、すでに世界選手権の代表に内定している冨田洋之(セントラルスポーツ)の今シーズン初戦。しかし女子の熱い闘いも見逃せない。

新星 鶴見&山岸が日本をけん引

昨秋の世界選手権で個人総合優勝したイタリアのフェラーリ 【藤井俊明】

 世界選手権は、多くの他競技と同じように北京五輪の予選を兼ねている。五輪団体種目の出場権は、世界選手権の上位12カ国に与えられるが、日本女子はシドニー五輪予選13位、アテネ五輪予選14位と、過去2大会の五輪出場権をきん差で逃している。
 昨年の世界選手権で12位だった日本は、同大会10位以下のフランス、英国、北朝鮮、カナダ、オランダ、ドイツと団体出場権を争うことになりそうだ。特にマークしなければならないのは、13位だった北朝鮮。北朝鮮のA得点(演技の難しさを示す得点)におけるチーム合計95.7(一人1種目平均5.98)は世界4位の成績。90.0(一人1種目平均5.63)だった日本にとって脅威の数字である。実際、昨年12月のアジア大会で日本は北朝鮮に敗れており、強化本部は今年の最重要課題を「A得点の向上」とした。

 4月に開催された世界選手権代表選考会2次予選で、日本女子はその課題をどこまで解決したのか。単純に2次予選で上位6位までに入った選手を代表と仮定してみると、A得点はチームとして95.2(一人1種目平均5.95)になっていた。それをけん引しているのが、昨年の全日本タイトルを分け合った上村美揮と鶴見虹子(ともに朝日生命体操クラブ)。両者は、昨年の全日本と比べて1点ほどA得点合計を上げていた。特に、鶴見は今年、世界選手権に出場できる年齢に達する新星だが、A得点合計は日本人最高の24点(1種目平均6.00)。この得点は、昨秋の世界選手権で個人総合優勝したイタリアのバネッサ・フェラーリの25点(1種目平均6.25)には及ばないものの、世界トップクラスと言ってよい。

完成度に優れた山岸 【山下昭雄】

 また上村、鶴見と同点で世界選手権代表選考会2次予選トップに立った山岸舞(戸田市スポーツセンター)も、今年、世界選手権に出場できる年齢に達する新星である。現時点で山岸のA得点合計は鶴見より下の22.9(1種目平均5.73)ではあるが、B得点(演技のできばえを示す得点)が優れている。日本女子体操界に現れた鶴見と山岸という新星二人が、体操の永遠のテーマである難易度か完成度かという争いを見せてくれるであろう。

 そのほか、椋本啓子(大阪体育大学)、美濃部ゆう(朝日生命体操クラブ)、小沢茂々子(戸田市スポーツセンター)など、これまでの顔ぶれとは違う選手の台頭もあり、代表争いは混沌(こんとん)としている。

 世界選手権女子代表7人の選考方法は、まず個人総合5位までを代表に決定。残りの二人は、同12位までに入った選手の種目別ポイント(※)合計により決める方法を初めて採用。日本女子にとって正念場を迎える今回、どのような最強メンバーが選ばれるのか大いに注目される。
※種目別3位までに与えられる。

 いずれにしても、多くの人の視線が選手の競技力を向上させる。今回のNHK杯は、施設の都合で競技時間を男女完全に分けて実施することになった。これにより女子は女子としてじっくり観戦することが可能となった。いつも女子を応援している人はいつも以上に、そして男子を応援している人はこの機会に女子にも惜しみない声援を送ってほしい。最終的にそれは男女隔てなく、日本の体操を北京へ、そして未来へ後押ししてくれるはずだ。

<了>
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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