さらなる「フェルプス伝説」の始まり
世界水泳第12日 競泳男子200mバタフライでマイケル・フェルプス(米国)が1分52秒09の世界新で2大会ぶり3度目の優勝 【(C)Getty Images/AFLO】
「彼(ソープ)とレースをしたかったから、少し残念に思っている。でも、まだ最大のライバル(ピーター・ファンデンホーヘンバント/オランダ)がいるからね。それはエキサイティングなことだよ」
二つ目の金メダルを狙った28日夜の決勝では、2004年アテネ五輪以来の二人の対決が実現した。3年前の夏、フェルプスはソープ、ファンデンホーヘンバントに次いで銅メダルとなり、目標の7冠を達成することはできなかった。その後オランダの英雄はヘルニアに苦しみ、国際大会から遠ざかる。この日、フェルプスはラスト50mでファンデンホーヘンバントを引き離し、世界で初めて43秒台に足を踏み入れた。
フェルプスは200mバタフライと200、400m個人メドレーの世界記録に加え、新たに競泳の花形種目である200m自由形で世界最速の男となった。ソープを生んだ地で、歴史に新たな1ページを刻んだ。
本人さえも驚く1分52秒09
世界記録を樹立した翌日の28日は、午前中は200m個人メドレーの予選を戦い、夜の200mバタフライ決勝を迎えた。
そして、2夜連続となる世界新が生まれた。
4コースのフェルプスはスタートからものすごいスピードでピッチを刻み、世界記録のペースを示すラインのはるか前を進んでいた。隣の3コースを泳ぐ柴田隆一(チームアリーナ)が「75m過ぎで(フェルプスが自分の)かなり前に出ているのが分かった」と語れば、銀メダルを獲得した5コースの呉鵬(中国)も「フェルプスは速過ぎた。彼の姿は僕には見えなかった」と驚きを隠さなかった。タッチの瞬間、電光掲示板には1分52秒09の文字。プールサイドで世界新を祝う炎が吹き上がるとともに、会場は大歓声に包まれた。
当の本人も、ここまでの記録は予想していなかったと言う。「自分に驚いている。(1分)52秒台で行きたいとは思っていたけど、まさか52秒09とは」。今大会、3つ目の金メダルを獲得したフェルプスは、その後には200m個人メドレーの準決勝に臨み、危うげなく首位で決勝に進んだ。
米国が誇る恐るべき21歳は、自らのイメージさえも凌駕(りょうが)するスピードで進化を遂げている。腕に痛みを抱えるが、気持ちは充実しているという。バウマン・コーチもそのメンタルの強さを称賛する。
「水の中に入ったら、常にベストタイムを出そうとしている」
母国の次に好きだと語るオーストラリアの地で、さらなる「フェルプス伝説」が築かれていくのは間違いないだろう。
<了>
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