ヒンギスに完敗した中村、次の手は=全豪オープン
回戦に進出するもヒンギスには完敗を喫した中村。さらなる躍進のために進むべき道は…… 【Getty Images/AFLO】
一種のバーンアウト(燃え尽き)から2003年にツアーを離れ、3年間のブランクの後に戻ったのが昨年のこの大会前夜(06年1月モンディアル・オーストラリア女子ハードコート選手権)だった。マリア・シャラポワ(ロシア)を筆頭にしたパワー全盛時代に、安定した成績を残すのは難しいだろうと誰もが感じていた。にもかかわらず、昨年1年でランキングを7位まで上げ、この大会は第6シード。中村藍子(ニッケ)との試合は、全盛期を思わせる完ぺきな内容だった。
多彩なショットさばきが今の時代には新鮮で、一つとして同じボールがない配球で中村を揺さぶり、両手打ちが嫌がる懐の高い位置に打ち込んでは体勢を崩した。格の違いは明らかであり、負けた中村もさばさばしていた。
「格の違い」で終わらないために
関西テニス協会の川廷栄一会長は、中村が大阪出身ということもあり、ミルザを破った試合が今年の日本勢の最大の収穫だと強調した。その通りだろう。ミルザは、強烈なストロークを武器にアジア系では珍しいほど攻撃的なテニスを展開する。中村はそのミルザの一本調子をうまくコントロールして駒を進めた。
ミルザには勝った中村が、ミルザが勝ったことのあるヒンギスに手も足も出なかった――こうした比較は詮の無いことだが、気になることがある。
すでに経験という特別な武器を身につけている杉山愛(ワコール)はさておき、森上亜希子(ミキハウス)、中村といった日本選手には一つの傾向がある。サーブ、ストローク、ネットプレーの平均点の高さで地位を維持している。技術に欠陥はないが、これといって光るものに欠ける。ミルザのテニスは荒いが、攻めのストロークと戦う姿勢には相手をどぎまぎさせるほど強烈なものがあり、それが金星をもたらす。
これは、中村や森上といった選手だけの問題ではないだろう。指導者はそういう教え方をしているだろうし、日本にはそういう教え方しかなじまない伝統、風土があるのではないか。となれば、それは良い悪いの問題ではなくなる。だったらどうするか……。何を目指すか。そう考え直さないと、中村の敗戦は単に格の違いで片付けられてしまう。
[試合結果]
○マルチナ・ヒンギス(スイス)
6−2、6−1
●中村藍子
<了>
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