大会2連覇を達成したトヨタ自動車=第35回社会人野球選手権リポート

島尻譲

東海地区のレベルの高さが実証された大会

大会2連覇が決まり、大きなガッツポーズを見せるトヨタ自動車・大谷 【島尻譲】

 都市対抗、全日本クラブ選手権覇者の推薦出場に加えて、昨年からは指定の9大会(東京スポニチ大会・四国大会・静岡大会・岡山大会・長野大会・京都大会・九州大会・東北大会・北海道大会)の優勝チームにも出場権が与えられるようになり、全国9地区の厳しい予選を勝ち抜いたチームを含めた総勢32チームで年間王座を争う社会人野球日本選手権大会。
 35回目を迎えたことしは11月13日から23日まで京セラドーム大阪で行われた。昨年に続き、ことしもドラフト会議後の大会開催ということで指名された選手の活躍が話題になったのをはじめ、米大リーグ挑戦を表明した田澤純一(新日本石油ENEOS)の出場が大きな注目を集めた。

 激戦が続く中、ベスト4に残ったのは、日本生命(近畿地区代表)、トヨタ自動車(長野大会優勝)、JR東海(岡山大会優勝)、新日本石油ENEOS(東京スポニチ大会・都市対抗優勝)。
 日本生命は成長著しい5年目・竹中慎之介の粘投や新人外野手・大島洋平の攻守に渡る活躍を軸にして勝ち上がって来た。しかし、前年の覇者・トヨタ自動車が相手となった準決勝では先発・下野輝章が立ち上がりを攻略された上、機動力を絡められて主導権を奪われてしまう。攻撃でも安打は出るものの劣勢ゆえに強攻策しか取ることができずに結局、無得点に終わり、0対7と完敗した。
 もうひとつの準決勝であるJR東海対新日本石油ENEOSは接戦となった。JR東海は2対2で迎えた7回表一死から得点圏に走者を置く。ここで新日本石油ENEOSは1回戦(三菱重工神戸戦)と3回戦(日立製作所戦)で完封勝利を挙げていた田澤を投入したが、この田澤が日野原宏和にフォークボールをレフト前にはじき返されて勝ち越しを許す。これが決勝打となり、2対3と敗れた新日本石油ENEOSの社会人三大大会制覇はかなわなかった。
 これによって決勝戦は、夏の都市対抗出場をともに逃しているトヨタ自動車とJR東海の一戦となった。前年(トヨタ自動車対三菱重工名古屋)に引き続いて東海地区同士で争うことで、あらためて東海地区のレベルの高さと一戦必勝のトーナメント大会での強さが実証されたと言えるだろう。

8回に一気に動いた決勝戦

決勝で逆転3ランを放ったトヨタ自動車のルーキー田中 【島尻譲】

 決勝戦はJR東海が5回裏に主砲・青山眞也の左中間二塁打で2点を先制。先発・川野慎也もサイドハンドから力のある球を投げ込み、7回までトヨタ自動車打線を散発3安打に封じ込める。しかし、8回表に試合が動いた。トヨタ自動車の山中繁監督は「ウチから動かないと局面は変わらない」と、代打で送り出した保良久生と廣瀬栄作がチャンスメーク。そして、この試合、それまでの3打席で2三振に倒れていた4番・指名打者のルーキー田中幸長が「あの場面は狙っていた」とレフトへ逆転3ランを放つ。9回表にも途中出場の川端早人がスクイズを決めて1点を追加。投げては大谷智久が今大会3試合目の完投勝利(完封1)を挙げて、4対2と逆転勝ちした。

 大会2連覇を達成した山中監督は溢れ出て止まらない涙をぬぐいながら、選手たちのおかげと手放しで褒めたたえた。
「この夏は都市対抗に出られなくて、補強選手以外で残った選手にはホンマに厳しい練習をさせた。補強選手でチームを離れた選手もいいものを持って帰って来てくれた。荒波(翔)、荻野(貴司)、田中の新人3選手がチームをけん引してくれたし、出番の少ない選手もウズウズしながら自分の役割をキッチリ果たしてくれた」
 また、第10・11回大会(1983・84年)の住友金属以来となる大会連覇には、「私が学生時代(同大)から強くてあこがれていたチームに肩を並べたとは思っていないですが、連覇という形で歴史に名を残せるのは光栄なこと」とコメントした。

 最後に今大会は試合のスピードアップが徹底されており、特にイニング間の攻守交代が迅速で小気味いい印象を受けた。また、外野手の好返球が多く、1点を巡るスリリングなシーンが球場へ足を運んだファンを喜ばせた。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント