- Gスピリッツ
- 2008年10月20日(月) 18:21

果たして“王道プロレス”とは何なのか? それを紐解く上で欠かすことのできない存在がザ・グレート・カブキだ。全日本プロレスの黎明期から鶴龍時代まで選手として活躍する一方、コーチとして四天王たちを育て上げている。日米マットで一時代を築いたプロレス職人に、ジャイアント馬場から小橋建太まで全日本のトップたちをレスラーの視点から解析してもらった。
ジャンボ鶴田にはオリジナルの技がない

ジャンボはジャンプ力があったし、タイミングもいい方だった。飲み込みも早いよ。ただ“ジャンボ鶴田が最強のレスラー”とかってよく言われるけど、俺はそうは思わない。技術的には巧かったけど、ラフ的なものは全然、出来上がってなかったから。
ジャンボは試合中、グァーッと行くところがなかったでしょ。メリハリなく淡々と試合をこなすっていう感じだった。いらんことも多かったよね。意味のない「オーッ!」ってやってさ(苦笑)。本当はレスラーって、必ず相手を見てなきゃダメじゃん。でも、ジャンボはそっぽ向いて「オーッ!」ってやって、ガイジンに殴られたりさ(苦笑)。そういう無駄が多かったよ。まあ、馬場さんに「何かアピールしろ!」って言われてたのかもしれないけど。
結局、ファンクスのところに半年しかいないでジャンボは上に行っちゃったでしょ。それじゃあ、そんなにプロレスを覚えられないよね。せいぜい技の掛け方ぐらいで。その当時、ジャンボは英語が喋れるわけじゃないんだから、アメリカ行ってすぐに理解できるはずもないでしょ? 「この技はこうやって……」と教わっても、そこに応用を入れる余裕もなかったと思うよ。だから、ジャンボはプロレスを消化してなかったね。
決まりきったことをやるのはいいわけよ。でも、自分のアイディアはないわけ。試合で機転が利く方じゃなかったし、臨機応変さがないから面白くないのよ。要は自分で物事を考えるんじゃないの。人が考えてくれて、それに付いて行く感じ。だから、彼にはオリジナルの技がないもん。ジャンピング・ニーだって、あれはガイジンのデカイ奴がやる技だから。それを真似てただけだからね。『ジャンボ鶴田の技』ってひとつもないのよ。
また、そういう教え方をされたんだろうね、馬場さんに。すぐにナンバー2に据えられちゃったことが逆にマイナスだったかも。下にいれば、いろいろ考えることもできるし、失敗もできるけど、あの位置じゃ失敗できないから。だから、手堅く教わったことをやるだけなの。
スタミナが無尽蔵? それはないよ。俺は感じなかった。身体能力はあったけど、試合でアドリブが利かないから、結局は龍原砲(天龍源一郎&阿修羅・原)とやっても飲み込まれちゃったじゃない。
※この文章は『Gスピリッツvol.9』(10月22日発売)に掲載されている記事を再編集したものです。本誌ではザ・グレート・カブキが全日本スタイルの変遷、他の選手の分析を語っています。
プロレス専門誌『Gスピリッツ』vol.9

10月22日発売 定価1300円(税込)/発行・辰巳出版
◆総力特集
“王道”を深く掘り下げてみたら、かなり面白い話が聞けました。
全日本の歴代トップを斬る!
ザ・グレート・カブキ
NOAH所属の世界ジュニア王者
丸藤正道
馬場も三沢も知らない次代のエース
諏訪魔
『格の時代』と『三沢革命』
秋山準
鶴龍時代のシュート事情
北原光騎
純プロレスの是非を問う
池田大輔
◆特別企画
Uの源流を探る
カール・ゴッチとキャッチ・アズ・キャッチ・キャン(後編)
キャッチ・アズ・キャッチ・キャンの起源
日本柔術との遭遇
伝説の強豪バート・アシラティ評伝
カール・ゴッチの足跡 アメリカ編
ゴッチが出会ったアメリカン・キャッチの偉人たち
ゴッチとテーズ、ロビンソンの複雑な関係
◆クローズアップ
バックボーンはプロレス
柴田勝頼
ツルティモ校長の極悪ヒール道
鶴見五郎
馬場に真剣勝負を挑んだ柔道家
岩釣兼旺
アリーバMEXICO
敗者髪切りマッチの実態
世界・ふしぎ再発見
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