その破天荒なキャラで柔道金メダリストの石井慧が一躍、時の人となっている。テレビをつければ何かしらの形で登場し、賛否両論の発言を連発。ひとたびバッシング対象になると、とことん叩かれる現代社会において、あのキャラクターを貫き続けているのだから石井の強心臓ぶりは相当なものだ。

　それにしても石井のおかげで、いま“総合格闘技”という言葉がテレビや一般紙で大々的に取り上げられるようになった。一般の人からすれば「？？？」だろうが、総合格闘技と呼ばれるものが世間に存在することが知れ渡るだけでも業界にとっては大きな前進だ。スポーツ新聞ではない普通の一般紙で総合格闘技という文字を見るたびに、なんだか感慨深い気持ちになってしまう。

　これだけ地上波で放送される機会が増えたにも関わらず、大半の人にとっては未だに「Ｋ−１と総合の区別がつかない」というのが実情だろう。実際、筆者も格闘技に興味のない人に向かって、いきなり総合格闘技という言葉を使うことはない。それが今後「総合って石井がやっているアレ？」という言葉が返ってくるようになればもうけもの。まずは学業を優先するということだが、総合の認知度を上げるという意味でも、石井の総合転向を心待ちにしたいと思っている（もちろん、いきなり無謀なカードを組むことは避けてほしいと思っているが）。

　さて、その総合界だが、年末に向けて各プロモーションがラストスパートに入っている。メジャーどころでいえば『Ｄｙｎａｍｉｔｅ!!』の大みそか開催が正式決定し、『戦極−第六陣−』も好カードが目白押し。『戦極』に関しては“奇をてらわない”カードを組み続けてきた成果が、ここへ来て表れてきたような感じがする。旗揚げ直後はいろいろと揶揄（やゆ）されることもあったと思うが、個人的にはマニア納得の好カードを辛抱強くラインナップし続ける姿勢に好感を覚える。できればこの流れを維持しつつ、“戦極発”の新たなスター選手の誕生に期待したい。

『Ｄｙｎａｍｉｔｅ!!』は世間を巻き込むような豪華なカードをマッチメイクし、『戦極』はマニア層もきっちりカバーするようなカードを提供する。この流れがハマれば、年末年始の格闘技界は思った以上に盛り上がることになりそうだ。