北岡悟の勝利はテコンドーの勝利!?

松浦俊秀
 日本人が全員勝ち上がるという、神がかり的な結末で幕を閉じた「戦極」ライト級GP。メーンの五味隆典が判定決着となったことで、やや重苦しい空気も流れたようだが、大会全体で見れば大成功の部類に入る興行だったように思う。とくに前述のGP一回戦は、これ以上はないほどの結末だった。無条件で次回興行に向けてのドラマが生まれたのだから、主催者側としても感無量だったはずである。

 技術的に見てもGPは、非常に見ごたえのある試合が多かった。横田一則の体調不良は残念だったが、そんななかでも最低限、勝利を収めるところはさすが。帯谷信弘戦などで見せた動きが戻れば、個人的には優勝候補筆頭の存在だと思っている。
 一方で残りの日本人3選手は、それぞれが持ち味を十二分に発揮した。なかでも北岡悟の極めの強さは特筆もの。パウンドありの競技で足関節はリスキーな部分もあるが、殴らせることなく一瞬で極めたアキレス腱固めは本当に見事だった。
 もちろんアキレスだけではなく、この秒殺を演出した素早いタックルも見逃せない。「タックル自体は得意ではない」と、どこかで語っていたような気もするが、クレイ・フレンチの右足に一瞬で絡みついたスピードは圧巻。本人に確認が取れていないため、これはあくまでも推測だが、ここへきて“テコンドー流”のステップが、試合の中で生きてきたということなのだろう。

注目は北岡のステップ

 前田吉朗がデビュー前から師事して結果を残しているように、北岡もここ最近はテコンドーT.K.D代表・舘和男師範のもとで練習を行っている。「北岡がテコンドー?」と意外に思う人もいるかもしれないが、舘師範によればストライカーだけではなくグラップラーにもテコンドーは有効なのだという。

「北岡選手はマジメですよ。毎週必ず練習に顔を出しますからね。しかも一般会員さんと一緒に、基礎クラスから熱心に受講しているんです。グラップラーの北岡選手がテコンドーを習うことについて不思議に思う人もいるでしょうけど、何も蹴り技だけがテコンドーじゃないんです。相手との距離を一瞬で詰めるステップ。そういった技術も、テコンドーで学ぶことができますからね。相手の打撃が届かない間合いを取りつつ、一瞬で組み付くにはどうしたらいいか。今後は北岡選手のステップにも注目してみてください」(舘師範)

 確かにテコンドーの試合で見られる足さばきは、華麗でスピーディーなものが多い。11月の準決勝&決勝では、遠い間合いから一瞬で距離を詰める北岡のステップにも注目してみたい。
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