インテルとユーベの一騎打ちか 08−09シーズン展望=セリエA

ホンマヨシカ

スクデット争いの行方は

インテルの対抗馬はユベントスか。昨季の得点王デルピエロ、2位のトレゼゲに加えて、今季はアマウリ(写真)も加入。堅実な補強が目立つ 【Photo:アフロ】

 さて今シーズンの展望だが、昨シーズンの上位5チーム(インテル、ローマ、ユベントス、フィオレンティーナ、ミラン)とほかのチームとのギャップがますます広がったように思う。よってスクデット争いもこの5チームが争うことは間違いない。

 とはいえ、これではあまりにも分かりきった予想なので、もう少し絞ってみよう。
 僕の予想では今シーズンのスクデット(セリエA優勝)争いはインテルとユベントスの一騎打ちになると思う。今のところ、インテルの新たな戦力は中盤のムンタリ1人だが、もともと戦力補強しなくともスクデット3連覇(審判買収などの不正疑惑で棚ぼた式で獲得したスクデットを加える4連覇)できる戦力を持っている。新監督のモリーニョは、同じポルトガル人のクアレズマの獲得を希望し、クラブ側も希望をかなえようと動いているが、モリーニョも内心では、このメンバーでも十分にスクデットとCLを戦っていけると確信しているのではないだろうか。

 一方、今シーズンのユベントスは、僕がスクデット候補の筆頭に挙げるチームだ。
 セリエA復帰1年目だった昨シーズンは、おそらく苦労するだろうと予想していたのだが、パワフルな男性的なサッカーでスタートからCL参加資格圏内をキープし続け、3位でカンピオナートを終えた。
 今シーズンは、昨シーズンの戦力をほぼ維持したまま、FWのアマウリ、MFのポウルセン、DFのメルベリやクネジェビッチなど、地味だが確実な選手補強をした。難を言えば、ピルロタイプのゲームメーカーの不在。それでも、ロッシ、そしてジョビンコと同じオフェンシブハーフながら、より司令塔タイプのスウェーデン人MFのエクダル(19歳)、アタッカーのパスクアートなど、将来を有望視される若手選手がひしめいてるのが心強い。

 唯一の不安を探すなら、17日のベルルスコーニ杯でキエッリーニが左ひざをねんざし、カンピオナートの3〜4試合を欠場することになるディフェンラインか。しかしライバルのインテルとミランも、ディフェンス陣に負傷者がいて不安を抱えている。カンピオナートに関しては、特別ハンディになるとは言えないだろう。

ロナウジーニョを獲得したミランの不安材料とは

 CL出場権を逃し、今シーズンのスクデット獲得に懸けるミラン。夏のオフの移籍でロナウジーニョを獲得し、オフの話題を独占した。この移籍のおかげで、新シーズンのシーズンチケットのトータル販売数がインテルを上回るという経済効果をもたらした。しかし、純粋にチームの補強ができているかという点では疑問が残る。

 もともとミランの弱点は、平均年齢の高い上に負傷者が多いディフェンス陣、そしてMF陣の層の薄さだった。中盤に関しては、フラミニの加入とエメルソンの復調(昨シーズンは別人のように低調なプレーを見せていた)で何とか体裁が整った。問題はディフェンス陣。キープレーヤーのネスタは、腰痛で苦しんでいる。
 負傷しやすい選手が多いミランの守備陣だが、中でもマルディーニに代わってチームを牽引(けんいん)しなければならないネスタが、今季いったい何試合に出場できるのか見当がつかない。これはミランにとって深刻な問題である。
 負傷といえば、左ひざのねんざでリタイアしているカカのコンディションも心配だ。今のところ、ボローニャとの開幕戦での欠場は決定的だが、その後、どんなコンディションで復帰できるのかも気がかりだ。

 新戦力の補強は今月末が期限だが、ミランはディフェンスの補強に向けて動いている。現在、ミランが獲得に動いているとうわされるのが、アーセナルのDFでスイス代表でもあるセンデロスだ。もし、ミランがDFの補強に失敗した場合、高さに強いMFアンブロジーニのセンターバックへのコンバートが現実化すると思われる。

(※編集部注:その後、センデロスを1年間の期限付き移籍で獲得したと発表された)

上位5チームとの格差は開くばかりだが……

 今シーズンのスクデットの予想をF1のスタートに例えるなら、インテルとユベントスが1列目、ミランとローマが2列目でのスタートである。ミランについては、前述のとおり。ローマは、トッティの復調とマンシーニやジウリーらに代わるサイドアタッカーを見つけられるかどうかがカギとなるだろう。

 フィオレンティーナは第3列目からのスタートだが、2列目に食い込んでくる可能性も十分に持っている。ミランから移籍したジラルディーノは、早くもチームになじみ、その結果としてリッピが指揮するイタリア代表にも復帰を果たした。フィオレンティーナはジラルディーノを含め、トータルで4000万ユーロ(約64億4000万円)を投資しての選手補強を敢行した結果、控えの層も厚くなった。監督のプランデッリがスクデットを狙っているとは思えないが、ヨーロッパを戦いながら、来シーズンのCL出場権内である4位に食い込むことは十分可能だと考えているだろう。

 これら5チームの後ろに続くと思われるのが、ウディネーゼ、パレルモ、サンプドリア、ラツィオ。ただし、後続のチームが上位5チームに割り込むとは考えられない。本当は何シーズンか前のキエーボのように、セリエAに昇格したチームが上位陣を脅かすという驚きの展開を期待したいのだが、これだけ戦力に差があると、いくら想像力を働かしても悲しいかな、そのようなイメージがまったく浮かんでこない。
 せめてもの期待は、上位5チームが混戦のまま、最終節までスクデット争いを繰り広げてくれることである。

<了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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