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UWF設立前夜――合意に達していた新日本vs.全日本の全面対抗戦
日本マット界の流れを大きく変えた1983年の夏=Gスピリッツ発
「猪木―馬場会談」で合意に達していた新日本vs.全日本の全面対抗戦
「猪木―馬場会談」で合意に達していた新日本vs.全日本の全面対抗戦【(C)原悦生/Gスピリッツ】

 1972年の創立以来、激しく対立してきた新日本プロレスと全日本プロレスが極秘裏に和解。全面対抗戦に向けて、着々と準備を進めていた時期がある。しかし、あの事件をキッカケにすべてが白紙となり、日本マット界は混乱の一途を辿っていった――。

「馬場―猪木会談」と「新日本クーデター」

タイガーマスクの離脱から歯車が狂い始めた
タイガーマスクの離脱から歯車が狂い始めた【(C)原悦生/Gスピリッツ】

 1983年8月に新日本プロレス内部で起こったクーデター事件は、日本マット界の流れを大きく変えた。

 当時、人気絶頂だったタイガーマスク(佐山聡)が電撃引退し、この事件の余波で『UWF』、『ジャパン・プロレス』という2つの新団体が誕生。そして、実は合意に達していた新日本プロレスvs全日本プロレスの全面対抗戦が消滅してしまったのである。

 馬場と猪木が水面下で手を握ったのは82年2月のことだった。その前年、新日本と全日本は選手の引き抜き戦争を展開。新日本がアブドーラ・ザ・ブッチャーを引き抜けば、全日本が報復としてタイガー・ジェット・シンとスタン・ハンセンを抜き返すという仁義なき戦いが繰り広げられたわけだが、最終的にはハンセンを奪われた新日本が馬場に停戦を申し入れた。


 2月7日にホテル・ニューオータニ新館の一室で馬場―猪木会談が実現している。その時の様子を新日本の元営業本部長である新間寿氏は次のように語ってくれた。

「あえて先に2人だけで会ってもらったんだよ。しばらくして部屋に行ったら、2人ともニコニコしてて、刺々しいものも突っ張り合っているものもなかったし、きっと昔の2人はこんな感じだったんだろうなっていう雰囲気でしたよ。停戦のガイドラインもすぐに決まったしね。猪木が馬場さんに“こいつ(新間氏)も言い過ぎるところがありますけど、わかってやってくださいよ”って。そうしたら馬場さんが“俺もな、あんまり言われると頭にくるよ”ってサラッと言うのよ(苦笑)」


 続いて4月21日にホテル・オークラで行われた馬場―新間会談では、何と対抗戦の話が持ち上がり、馬場も基本的に合意したという。馬場を対抗戦に前向きにさせたのは、「BI対決はやらない」が大前提だったからだった。

「馬場―猪木戦は最初から考えていなかったしね。当時は猪木も体調が悪くて馬場さんと闘う気持ちを持ってなかったし、それもあってスムーズに話が進んだのかもしれない」

 こうして対抗戦開催に向けて基本的合意をみた馬場と新間氏は、ここから大仕掛けを開始する。もちろん、ここまでの話はすべて水面下のもので、当時はまったく表面に出ていなかった。馬場と新間氏は友好ムードではなく、あくまでも引き抜き戦争の延長による殺伐とした対抗戦の気運を煽っていく。

 しかし、この“いい流れ”は突如として断ち切られる。83年8月18日(現地時間)、ロサンゼルスで極秘にタイガーマスクの結婚式が行われることになっていたが、その8日前にタイガーが失踪。新日本に契約破棄通告書を送付し、馬場夫妻も出席することになっていた結婚式はキャンセルとなった。そしてこの直後、新日本が再び激震に見舞われる。


 会社の経営方針に不信感を抱いていた選手及びフロントによるクーデターが勃発。その首謀者であり、新日本の営業部長だった大塚直樹氏は当時を振り返る。

「初めはクーデターというニュアンスとは違うものだったんですよ。あの頃の新日本は猪木さんの事業『アントン・ハイセル』の資金繰りなどの問題もあって利益がほとんどなかった。私は会社を辞めて興行会社でも作ろうと思っていたんですが、それを取締役の山本(小鉄)さんに相談したら、“ちょっと待て”と。猪木さんと一緒に新日本を設立した山本さんにしても、当時の待遇や会社の在り方に不満を持っていましたからね。それが、新団体への話になっていくわけです。猪木さんと新間さんに組まれたら、勝ち目はない。そこで、もしそうなった時には新団体を作ろうという方向に話が盛り上がっていったわけです」

 このように、クーデターの当初の構想は、猪木&坂口の追い落としではなく、『アントン・ハイセル』事業に危機感を持った有志たちによる新団体設立だった。

 そして、このクーデター事件は予期せぬ方向に事態が進展していく。



※この文章は『Gスピリッツvol.8』(8月20日発売)に掲載されている記事の一部を再編集したものです。本誌では坂口征二&渕正信の証言、佐山聡のインタビュー、カール・ゴッチ企画など多角的な角度から旧UWFのことを再検証しています。

プロレス専門誌『Gスピリッツ』vol.7

【(C)Gスピリッツ】

8月20日発売 定価1300円(税込)/発行・辰巳出版


◆特集

もうひとつのUWF史−猪木の誤算と馬場の野望−


UWF設立前夜――

水面下で合意に達していた

新日本vs全日本の全面対抗戦


新団体『ワールド・プロレスリング』が頓挫

熾烈を極めた佐山タイガー争奪戦の顛末


新日本の内紛の裏で策士・馬場が暗躍

敵陣を切り崩し、ザ・タイガー獲得へ動く


“俺たちの時代”発言の本当の意味とは?

実現寸前だったジャパン&UWFの大晦日興行


前田日明をビール瓶で殴った男

坂口征二が語る「事件の真相」


渕正信が明かす全日本道場の真実

馬場のシュートテクニックとは?


Uの扉を開けたルチャ戦士――マッハ隼人


◆特別企画

Uの源流を探る

カール・ゴッチとキャッチ・アズ・キャッチ・キャン(前編)


“蛇の穴”ビリー・ライレー・ジムの実像

欧州時代の足跡――ベルギーのカレル・イスタス


◆ロングインタビュー

掣圏真陰流・興義館総監

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◆クローズアップ

韓国プロレス界の興亡

“大帝”レネ・グアハルド

BIのメキシコ遠征秘話


◆DVD『創立15周年記念みちのくプロレス特集』

【収録試合】

▼6人タッグマッチ

スペル・デルフィン、愚乱・浪花、ラムズ

vs

SATO、ケンドー、獅龍

▼新崎人生 真・八十八番札所

ザ・グレート・サスケ

vs

新崎人生

▼6人タッグマッチ

SATO、テリー・ボーイ、獅龍

vs

新崎人生、TAKAみちのく、愚乱・浪花

▼ノーロープ有刺鉄線地雷爆破ダブルヘル時限爆弾デスマッチ

大仁田厚

vs

ザ・グレート・サスケ

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